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異世界転生達の相談室  作者: 磨雄斗
9/33

5.和服美人の相談室(後編2)

「──隣に引っ越してきました!見沢 高ですっ!」

元気いっぱいについんてーるを揺らす女の子。


わらわの、初めての友達。


なのに、裏切った。


自分が、嫌われるのが怖かったから。


でも、柴崎がいたから。

下宮さん、西岩さん、古鳥さんがいたから。


今日は、戦える。


オレンジ色のリボンで、黒髪を束ねた。


鏡の前の自分を思い切りにらみ、笑いかけ、ドアを開けた。

翌日。


「お初にお目にかかります。本日限りお世話になります、下宮理雄です。」

「同じく、西岩真花です。」

「教育実習生の古鳥広斗で~っす☆」

「ヒロさん軽いわ。」

思わずこぼれたツッコミに、クラス全体に笑いの波が生じた。ああ、はずかしいいい!!!!


───っと、一回ストップ!!

気分転換も踏まえ、昨日までの経緯を説明しまーす。


あの後、三島さんの執事、柴崎さんが入学手続きをしてくれて、俺たちコロウマ相談員は、一日体験入学生として、三島さんの通う桜晴(おうせい)中學校に来た。桜が入っている學校っていいね。うん。

ちなみに、俺と真花は生徒、ヒロさんは教育実習生として。一応、俺と真花は高校2年性だけどね。うん。


あ、俺らは三島さんの従兄弟(いとこ)の設定だけど、担任にしか知らされていない。これは、三島さんの要求。


「では、委員長、祝福の言葉をお願いします。」

「はい。」


迷いのない返事。

知らされていないはずなのに。


『委員長』は、優雅に席を立ち、通路を歩き始めた。


し ん



誰かのため息。

クラスが魔法にかかったように、彼女の魅力に吸い寄せられていく。



────── で も。



ビクッ




と肩を震わせるものと、それを心配そうに見つめるもの。


前者は、ツインテールの梅色の袴を着た女の子。

…………多分、見沢 高さん。

()()()()の、標的。


そして、後者は、今回の相談者である、三島 恋加さん。

昨日は流していた黒髪を、袴と同じオレンジ色のリボンで束ねている。


「お初にお目にかかります、御三方(おさんかた)(わたくし)は、このクラスの委員長をつとめております、亜樹本木夏(あきもときなつ)と申しますわ。」

………お嬢様の一人、亜樹本さん。

いつの間に、目の前に来たのだろう、この『委員長』は。

お団子に結わえた髪型に、日本人形とは思えないほどクリクリの目。唇は血のように赤く、袴は紅色。


───三島さん曰く、このクラスの3人の女王様の1人であり、最高権力者。

みんなイジメのことを知っているはずなのに、何故こんなにも魅了されているのだろう……。


「ちょっと下宮くん。惚れてたら殴るからね」

「え、あ、ごめん。ぼーっとしてた。」

小声で真花に謝り、ちょっと笑ってるヒロさんと3人で、お辞儀を返した。


ここからが、相談員の役目が試される時。


そう、心で思った。


────────☆☆☆☆☆☆☆─────────


「では、この答えが分かる人………じゃあ、西岩。」

「えと………I am going to study English.」

「うん。正解。」

おおー、というクラスのどよめき。

空色の袴?を着た俺は、隣の席に座った黄緑の袴とハートのピンの真花と笑顔でグータッチした。


────今は、早いもので4限目の英語。


本来の目的を忘れたのかレベルの発言力の真花。

さっきからお嬢様達と真花しか発言していない。

新たに現れた発言戦士(?)にクラスは大盛り上がり♪♪

俺も発言しない派なので大盛り上がり♪♪


「では、教科書の79ページを開いてください。」

「ねぇねぇ下宮くん。」

小声で真花が話しかけてきた。

「何?」

「前の席のふたり、誰だか分かるよね?」

「まぁ、さっき発言してたしな。

──坂明里 早子(さかあかり はやこ)桜田 合美(さくらだ あいみ)だろ。」

こくり、と頷く真花。

幸か不幸か、てか100%不幸だな。何故かお嬢様ふたりの後ろ席になってしまった俺たち。


坂明里さんは、三島さんと同じくらいの綺麗な黒髪美少女。しかも天然。

────真花曰く、美少女に天然足したら、最強。


そして、桜田さんは、頼れるお姉さんタイプ。とても見沢さんに水をかけるようには見えない。とても。


「てかさ、三島さん、なかなか動かないね。」

「確かに、なっ。」

行動するタイミングまでは彼女の自由なので、さすがに見守ることしか出来ない。

なーんか、もどかしーなー。


「えーと、じゃあ、この単語の意味が分かる人」

やけに気だるい雰囲気の教師が発した言葉に、やけに気合の入った真花が手を挙げた。

………と思ったら、下げた。あれ?


真花を見たら、こっちを見て、誰かを指していた。


──────あっ!!!


見沢さんと三島さんが、手を挙げている。

いつの間にか、お嬢様達も手を下げ、クラスも緊張が走っていた。


当然、三島さんが発言するはずだ、と皆が信じてる。


………この空気の中、三島さんはどう動く?


と、先生が振り向き、気だるいため息をついた。

「………なんだ。見沢しか手を挙げていないのか。」

じゃあ、どうぞ。

と言った先生。


クラスの目線が、見沢さん……

の、後ろの席の三島さんに注がれる。


厳しい、冷たい、たくさんの目線。


前の席の葡萄(ぶどう)色の袴と、檸檬(れもん)色の袴が揺れる。

少し遠い、紅色の袴も。


────ついに動き出した、三島さん。


嫌な空気が流れる中、4限目終了の鐘が鳴った………


─────────☆☆☆☆☆☆☆────────


「へぇ〜、面白くなってきたね〜ぇ」

呑気に「あはは〜ぁ」と笑うヒロさんは、今まで先輩の先生達にいろいろ教えてもらったとか。

「面白がらないでよ、ヒロさ〜ん。(この)ちゃん頑張ってるんだから〜」

と、三島さんをニックネームで呼ぶ真花。一瞬誰のこと言ってるのかと思った。


────今はお昼の時間。

ヒロさんの手作り弁当を、屋上で食べている。

教室で食べようとしたんだけど、クラスメートからの質問の嵐と三島さんの行動があったから、やめた。


三島さんは、1人でトイレに行ったきり、戻ってこなかった。てか、そばにいたらなんかしそうになるし。

あくまで、勇気を与えるためにいるんだから、俺が行動したら意味が無い。


………てか、人形も飲食するんだなー。どうやらファミレスとかゲームセンターもあるらしいし。

あの和服でプリクラ撮るのかな。なんか、新鮮。


「大丈夫かな。三島さん」

ぽそっ、とつぶやき、おにぎりをかじった。



────瞬間。


突然開く、屋上のドア。

目の前を走り抜ける、人。

その人は、錆びた金網を駆け上がり、向こうへあっという間に降り立った。



あのツインテール、見沢さんだ。

いったい、何をしようと………………………………

まさか。



「…………飛び降りるんじゃ……………」




ふわっ



彼女の体が、下の世界へ、浮いた。





反射的に動く、俺の体。


それをとがめる、ヒロさん。


硬直する、真花。


動き出す、周りの人達。







「こうちゃああああああああああん!!!!」










開けっ放しになっていたドアから飛び出す、何かのメモを掴んだ、三島恋加さん。








『恋加ちゃんへ、

久しぶりにお手紙書いたよ。

また、もしもゲームしたかった。

でも、もう出来ないね。


恋加ちゃんは、いじめらたくなくて、逃げていたんだよね。でも、全然悲しくなかったよ。

最後に、庇ってくれた。

それだけで、私は嬉しいよ。

ありがとう、恋加ちゃん!

大好きな、恋加ちゃん!

執事の柴崎さんが大好きな、恋加ちゃん!笑

めいいっぱい生きてね!

最後の『もしも』を送ります。


もしも、屋上で最後に会えたのなら。

高ちゃんより』



叶えられなかった、『もしも』。

誰もいなくなった、錆びた金網の向こう側。

三島さんの、叫び声。

和服美人の相談室、終了。

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