13.予告状の相談室(中編1)
☆☆どうでも情報☆☆
真花「今日の私のピンは紺色!朝の気分がブルーだったからですっ☆」
理雄「ほんとどうでもいい情報だな」
真花「え、これどうでもよくない情報の略じゃないの!?」
理雄「どうでもよい情報の略だろ」
真花「何だとぉ!失礼な!」
理雄「とりあえず本編どぞっ」
真花「そらすなぁ」
新聞社Ru-Blanpaから徒歩数分。俺たちは、広い畑に着いた……いや。俺たち、じゃないか。
実は、歩きながら相談して、かぼちゃ姫の居場所っぽいココと、お相手の王子がいる城とで、行く人を分けることにした。そして相談の結果、ココはヒロさん、蘭井涼武さん、俺が行き、城に行くのは真花、長谷城大喜さんとなった。
さて、かぼちゃ姫の居場所っぽいココ。看板曰く、レンタルかぼちゃ バヴィデ・パンプキンと言うらしい。
……れんたるかぼちゃ?
「ここ……かぼちゃを貸出するところですか?」
「はい!この国では結婚式の後、シンデレラのように、かぼちゃの馬車を使ってこの国を一周するんです。そして、大抵その材料は、このような貸出を行っている農園などでレンタルするんです。つまりここは、馬車のかぼちゃを貸し出している農園です!」
「なるほど〜。だからこの場所が思いついたんですね〜。城と同じ方向ですし〜」
確かに。てか、同じ方向というかすぐ裏。間の森を抜けたらすぐ着きそう。
「……って、誰もいませんね」
「そのようですね。家の方に行ってみますか」
「は〜い」
「リョーにーい!!」
甲高い声。
声を出した方をむくと、赤毛の少女と黒いキャップを被ったおじさんが歩いてきた。
あの子……もしかして、かぼちゃ姫?
「まのちゃん!ご主人も!」
「リョウタくん、来てたのか。悪いな、妹の手伝いに行ってたんだよ」
「いえ、さっき来たばかりです。あ、んこちら、僕がお世話になってる相談員の皆さんです」
「あ、初めまして」
「こんにちは〜」
「ほー、相談員か。若いのにすげぇなぁ」
まじまじと見るおじ様。視線がなかなかの温度。恥ずかし。
「まのちゃん、今大丈夫ですか?」
「あー大丈夫だよ。俺は畑の方行ってるからなんかあったら言ってくれ。じゃーな」
「はい!」
おじさんが行き、赤毛の少女が近づいてきた。
「……自己紹介からした方がいい?リョーにい」
「そうだね」
「りょーかいっ!2人ともはじめまして!私はマノー・ バヴィデ!リョーにいがお世話になっていますっ」
「あ、いえいえ。えーと、俺は下宮理雄です」
「古鳥広斗で〜す。赤毛が可愛らしいですね〜」
「ありがとう!お母さん譲りなんですよー」
嬉しそうに笑うマノーさん。赤毛の三つ編みと、キラキラのオレンジの瞳。ハリネズミの絵が書かれたポンチョを羽織り、緑のサスペンダーを着ている。真花と同じくらい元気な子だな。
「それでリョーにい。どうしたの?」
「うん。えと、突然聞いてごめんね。正直に話して欲しいんだけど……王子様に、会ったことある?」
「……え?ないよ?」
「「「えええ〜!!?」」」
「えーっ、って会えるわけないじゃん。一農民の一人娘が」
「ううっ、失礼ながら、確かにそうだ……」
言われてみればそうだな。え?じゃあかぼちゃ姫って誰なんだ??
「てか、なんでそんなの聞くの?」
「あー、えっとね、実は今、王子様に会ったことがある人を探しているんだ」
「何で?」
「次の記事、王子様のことについて書くんだ。ほら、もう明後日結婚式だし」
この設定はさっき、相談の中で決まった。予告状って言われても、誰も信じないだろうから。です。
てかマノーさんじゃないのか。じゃあかぼちゃ姫は、子の方角の、ただかぼちゃ好きの女性なのかな?
「なるほどね。ごめんね、役に立てなくて」
「大丈夫。ありがとう」
「うん。あ、そうだそうだ!今の王子様じゃなくて前の王子様に会った人なら知ってるよ!」
「え?『前の』?」
「うん。王様じゃない、たぶんリョーにいは知ってる人」
「……ちょっと待って」
涼武さんが唸る中、ヒロさんが俺に小声で話しかけてきた。
──どうしたんですか?
──思ったら〜、予告状には「今の」王様とは書かれていなかったよね〜。だからかの〜せいはあるよ〜。
──あ、確かにそうですね!じゃあもしかして……
「あー!思い出した!あの方か!!」
「多分、正解」
「ちなみに〜、会った人は誰なんですか〜?」
「さっき会ったばっかりの、私のおばさんです」
「そ、そのおばさんの家ってどこにあるんですか?」
「案内しますよ!ちょうど城をまたいで向こう側にあります」
……子の、方角だ!
「じゃあ、早速案内お願いしてもいい?」
「りょうかい!あ、相談員の皆さん、あの方、は歩きながら教えるね!」
「ありがとうございます!」
「お願いしま〜す」
そして、マノーさんの叔母様の家に向かっていった。
今度こそ、かぼちゃ姫に会えますように!!
……あ。歩きながら、真花に『あの方』の情報と多分かぼちゃ姫の叔母様の情報伝えないと。
─────────☆☆☆☆☆☆☆────────
ヴヴッ
「ん?……あ、下宮くん」
「連絡来ましたか」
「はい!」
真花と長谷城大喜は、城の裏門近くの森に潜んでいた。城に入れず、何か有力情報を得たら理雄に連絡するよう伝えていたのだ。
「えーと……えぇ!?かぼちゃ姫違うの!!?」
「えっ、本当ですか?」
「らしいです!えーと……その女の子の叔母さん、らしいです。城の反対側で同じくかぼちゃ畑を営んでるらしいです」
「……なるほど。それなら合点がいきますね」
「あれ?王子様も違うの!!?じゃあ誰なのもー……弟?」
「弟……それって、王様のですか?」
「らしいです。え?ご存じなんですか?」
体育座りの真花は身を乗り出した。
「もちろん。現国王の弟は、婚約を破棄して軍人の道へと進んだ、王族の中でもかなり異例の方なんです」
「そうなんですか」
「はい。この話はここらで有名なのですが、なぜ婚約を破棄し、軍人の道へ進んでいったのかはまだ分かっていないんです」
「へぇ。分かったら大ニュースですね!」
「はは、そうですね。そうなったら、ぜひRu-Blanpaで取り上げたいものです……」
突然。
ばっ、と真花に大喜が覆いかぶさった。
突然の事で、真花はえっ、とも言えず、柔らかい地面に倒れこんだ。
「大丈夫ですか?西岩さん」
「大丈夫……ですけど、どうしたんですか?」
真花を抱き起こし、彼女を庇うように手を広げ、前を静かに見た。
真花が見ると、そこには細身のしっかりとした体型の男性がこちらをじろりと見ていた。
────真花と大喜に、金色の柄と先が三角形のように尖った剣を向けながら。
───ひと通り聞き終わった後。
理雄
「そういえば、新聞の方は大丈夫なんですか?」
マノー
「リョーにい達は、その時々に話題になった人のことを新聞に書くの。私たちは伝記新聞って呼んでるんだけど……って、なんで次の記事に書く人と会った人探すのに、そのこと伝えてないの?」
涼武
「ぅえ!?い、いや、それは、その……」
ヒロさん
「ミヤリオくんが忘れてただけだよ〜。この子すぐに忘れちゃうから〜。ね〜」
理雄
「あっ、そ、そうですね!あはは、はは……」
なぜか、少し傷ついた理雄であった。