表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生達の相談室  作者: 磨雄斗
30/33

13.予告状の相談室(前編2)

「どうぞ、中へ」

深緑のスーツに白い手袋、片手にシルクハットを持った紳士系男性に案内され、Ru-Blanpaの奥の方に来た。中は、2階まで吹き抜けになってるから明るい。よかったー。暗かったら心配になるし。


「どうぞ、お入りください」

「あ、はい。失礼します」

スーツと同じ深緑のドアを、紳士系男性が開けてくれた。


………おお。

壁も床も柔らかい赤。大きめの窓、大理石製の赤茶色の机と社長っぽい黒いイス。そして、緑の机を挟んで黒いソファーが向かい合ってる。

なんか、大人っぽい書斎みたいな部屋だなー。


「どうぞ、お座り下さい」

「あ、はい。失礼します」

俺、真花、ヒロさんの順番で座った。ふっかふか。


何となく緊張がとけ、俺はずっと気になっていたことを口にした。

「あの……今回俺たちを呼び出したのは、なんのためなんですか?」

「え?それはもちろん、相談ですよ」

「……あ、そ、そうなんですか!?え、あ、なんだ良かった……」

「忙しくて出向かうことが出来なかっただけで、相談には変わりないです。相談室に行かないと相談できない、ということはないですよね?」

「あ、はい。もちろんです」

「良かった……りょうた、コーヒー入れてきてもらってもいいかい?」

「もちろん」

「え、頂いていいんですか?」

「もちろんですよ!来てくださったんですし、お返しの気持ちです!」

「わ〜、ありがと〜ございます〜」

「では、お先に始めていて下さい!」

金髪メガネの男性が出ていく。


ドアが閉まったと同時に、俺は口を開いた。

「では改めまして───今回の相談を担当させていただきます、下宮理雄です」

「同じく相談員の古鳥広斗で〜す」

「記録係の西岩真花ですっ」

そっか。そういえば、ヒロさん相談員兼コーヒー係だよな。心強い。


「では、お名前と誕生日、改めてお住みの異世界と職業をお教え下さい」

「はい。私は長谷城大喜(はせじょうだいき)と言います。誕生日は9月14日。形界(ぎょうかい)で新聞記者をさせていただいております」

真花がサファイアかー、と言いながら書いた。サファイアは聞いたことあるな。


「では、次にお願いします」

「えっ……ぼ、僕もいいんですか?」

ちょうどコーヒーを持って金髪メガネの男性が現れた。嬉しそうにコーヒーを配ると、ニコニコ顔で言い出した。


「えーと、僕は蘭井涼武(あらいりょうた)です!誕生日は2月1日。同じく、形界で新聞記者をさせていただいております!」

「ルビー……と」

あ、ルビーも聞いたことある。今回どっちも聞いたことある宝石だなー。


「それでは早速、相談内容を拝聴させていただきます」

「はい。相談内容は、予告状が来たことです」

「………予告状、ですか」

「はい。しかも、その予告状の書き方が、僕みたいに書きなれている感じがするんです。さらに、差出人が……」

大喜さん書きなれているんだ。


と、大喜さんがスーツのポケットからカードを出し、俺たちの前に差し出した。俺たちは顔を寄せ合った。1番上に、Remarquezと書かれていた。


「……えー……れまる……くえず?」

「これ、英語ですか?」

「あ、いえ。フランス語です」

「和訳したのあるんで、どうぞ!」

今度は涼武さんがスーツから紙を出し、差し出した。


『予告状

Ru-Blanpaの皆様へ

3日後のへびがうまから離れる刻、あなた達のハートを頂戴いたします。もしそれを防ぎたいのなら、子の方角に住む哀れな王子と、子の方角に住む健気なかぼちゃ姫の運命を戻しなさい。もし戻すのなら、物語をお忘れなく。

アルセーヌ・ルパン』


「「「アルセ〜ヌ・ルパン!!?」」」

差出人すげー!てか、ルパンの人形とかあるんだ。


「たぶん、ないです」

また俺の心の声が出てたのか、大喜さんは少し怒ったような声で言い返した。


「僕はルパンを尊敬しています。彼は決してこんな書きなれた脅迫文みたいな予告状を書きません。し、こんな字が汚い人がルパンな訳ありません」

「な、なるほど」

愛が強いなー。


「とりあえず、本物だったら3日後に大変な目にあうんで、この予告状を解読しようと試みました」

「でも、1日かけても分からない部分があったんです。そこで、涼武があなた方のことを思い出して、二人で行くことになったんです」

「でも、大喜がどうしても抜けられない用事があって、大喜か手紙代わりの予告状を書き、僕が届けに行ったんですけど……その、た、立てかけておいたんですけど……2時間たっても来なくって……」

「え、そうなんですか!?すみません!!」

そんな経ってたのか!


「2時間って……じゃあ、最初から私たちを、その、て、天に召させる気は無かったんですね」

「もちろん。すみません、私自身が慌てていて、予告状に書かれていた表現を用いてしまっただけなんです。どうしても急いできて欲しくて」

そういえば、ハートをちょうだい的なことが書かれていたな。あ、だからフライパン持ってきたんじゃん。忘れてた。


「ところで〜、こちらの予告状のどこら辺を解読したんですか〜?」

「えーと……この最初の文は分からなかったんですけど、『子の方角』は分かりました。確か、子の方角は北で、その方角に貴族の城があります。そこには、2日後に結婚する王子が住んでいるんです」

「え、結婚!?じゃあ、このかぼちゃ姫って……」

「それが、違うんですよ。知り合いに、今回結婚パーティーで使われる野菜を調達する農家がいるんですけど、彼によれば、結婚相手の方はかぼちゃアレルギーらしいんです」

「じゃあ、絶対違いますね」

てか、かぼちゃアレルギーなんてあるんだ。


「てか、ここに運命を戻すって書かれているということは、王子は他にも契りを結んだ人がいるということですか?」

「はい。たぶん、今回より先に」

「その人って、貴族の方じゃないですよね」

「あー確かに。貴族だったら今回のことは行われないよな。じゃあこの人は……何かかぼちゃにまつわる一般人ってことですかね?」

「そ〜だね〜」

何となく、今回の相談の鍵になる人達が分かってきたな。


「あっ!はいはいはーい!」

「え、どうしたの真花」

「西岩さん、なにか気づいたんですか?」

「はいっ!えーと、この最後の『物語』なんですけど、シンデレラじゃないでしょうか!」

「シンデレラ?……あ、かぼちゃ」

「そっか!シンデレラと言えば、かぼちゃの馬車!」

「なるほど〜٩(●˙▿˙●)۶…⋆ฺ」

「西岩さん、すごい!!」

うぇいっ、とピースサイン。


と、今度は大喜さんの表情が変わった。

「かぼちゃの馬車、で思い出しました。もしかしたら、かぼちゃ姫の場所が分かったかもしれません」

「え、本当ですか!?」

「………あ、そっか!あそこ、城のすぐ近くだし、ここから見れば北の方角にある!」

涼武さんも思い出したらしい。すげぇ、真花のヒラメキがここまで進んだ。


「だいたい解読できましたし、そのかぼちゃ姫のだと思われるところに行きましょうか」

「はい。あ、すぐなので、歩いていきませんか?」

「そうしましょっか!」

「あ〜でも〜、フライパン置いてきてからでい〜ですか〜?」

「あ、もちろんです!先に外で待ってますね!」

「はい!」

という訳で、すっかり団結して安心感が高まった俺たちはペガ車に向かった。


にしても、かぼちゃにまつわる所ってどういう所なんだろ。かぼちゃ姫、いい人だといいなー。なんか、楽しみだ!


「下宮くん、早く!」

「ドア閉めちゃうよ〜」

「あ、待ってください!」

急いで駆けて行った。


─────────✰✰✰✰✰✰✰────────


少し離れたところにとめたペガ車に向かっていく相談員たちを、2人は見つめていた。

「元気のいい相談員さん達だねぇ。噂もたまにはいいこと言うなぁ」

「そうだね。涼武、ずっと気になってたよね」

「うん!ぜひうちの新聞にも載せたかったんだぁ。あ、終わったら許可もらおっかな」

「いいんじゃないかな」

「やった!」

満面の笑みを、涼武は見せた。


───しかし、ふと、涼武は悲しそうな顔をした。

「……なんか、嘘ついてるみたいだよね」

「そうかい?涼武はもともと彼らに興味があったし、僕はあのレディを助けたいと思っていた。その本心が繋がっただけだ。誰も、何も嘘をついていない」

「そうだけど……なんか、利用しているみたいで罪悪感を感じるんだ」

「……利用、か。悪い言い方だとそうだね。でも、これは間違っていない」

「……いつも、こんなことしてるの?」

彼らが、手を振りながらこちらに向かってくる。


2人は手を振り返した。

「……いや。あまりやった事のないやり方だよ。ただ、興味本位でやってるだけだ。間違っていたのなら……彼らに責められようじゃないか、パートナー」

「……僕もなの?バディ」

「ああ。この相談は、もう始まったのだから」

「確かにそうだね。始まったものは、最後まで続かせないと」

「ああ……そうだね」


───少し冷たい風が、5人の空間を包んでいった。

───ペガ車にて


「あれ?そういえば、なんでフライパン?」

「そういえば、下宮くんは知らないんだっけ」

「あのね〜、僕フライパンないと寝れないの〜」

「え、そうなんですか?すごい」

「ちなみに、私は1人しりとりしないと寝れないの」

「え、そうなの?なんか2人とも特殊ー」

「「オオカミの遠吠えを目覚まし音にしてるやつに言われたくない〜」」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ