13.予告状の相談室(前編1)
「理雄っ!」
パチ
……見ると、どんよりとした曇り空の下、お下げ髪の少女が俺をじっと見ていた。
あ、たまに見る夢の世界か。ここ。
「やーーーーーーーっと起きた!もーこんなに会えないの合宿ぶりだよー!」
────あ、はい。
「反応うすっ。あ、ねーねー最近どうだった?」
────どうって……色んな相談者さんが来て、解決していったよ。
「そっかー!あ、私の先輩格言聞いた?演劇の!」
先輩格言?………あ、あれか。秋宮兄妹のときの。
────うん。すごく。おかげで一歩踏み出せたよ。
「良かったー!……あ、もう目がとろんとしてる!はーやーいー!」
確かに眠……あぁ……もう……終わり……か………
────また………会おう………な……
「えっ」
ほおを赤らめた少女。
もう少し見ていたかったけど、残念ながら意識が途絶えた。
「おはようございます」
夢見心地な幸せ気分の俺に対し、この世の終わりのような雰囲気をまとい、珍しく1番遅く起きてきた真花。
「おはよう。どしたん」
「真花ちゃ〜ん、具合でも悪いの〜?」
「悪くない……です……」
声が暗い。そのまま、いつもの真ん中の席のカウンター側に座り、机につっぷした。
「ぶへっ」
「大丈夫か。本当にどうしたんだよ」
「……聞きたい?」
「聞かれたくなかったら聞かない」
「実はね……」
聞かれたいんだ。
「……私としたことが、あづはるさんの誕生日聞いてなかったんだ……」
「……aduharu?」
「何で外国人調なの。あづさんとはるさんの事だよ」
「あ、はい」
あれから真花は前回の相談者、大読或月さんのことをあづさんと呼ぶ。そして、明津玄岳さんのことをはるさんと呼ぶ。多分、それをくっつけてあづはるさん。以上。
「で!あづさんはメール交換してたから聞けたんだけど、玄岳さんと交換するの忘れてたから聞けないの!本人に直接聞きたいんだけどどうしよおおおお」
「そんな心の致命傷になるの?てか、或月さんに玄岳さんの連絡先送ってもらえばいいじゃん。そうすれば交換出来るよ」
「!!何それ知らない!ありがとう!頼んでみる!」
「うい」
「とりあえず朝ごはん食べてからね〜。今日オムレツだよ〜」
「「初オムレツだ!!」」
こうして、今日も元気よく朝が始まっていった。
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お騒がせした朝の一件が解決し、穏やかな午前。
コトッ
………ん?
「何か今、音しませんでした?」
「え?そう?」
「僕見てくるね〜」
「あ。ありがとうございます」
ヒロさんが白猫ベルを鳴らして外の様子を見に行った。すぐ戻ってきた。
「よこくじょ〜、だって〜」
「「よ、予告状!?」」
え、まじやん。入ってたカードの1番上に書いてある。
「何でそんなものが……」
「読んでみるね〜。え〜と〜、
"コロウマ相談室の皆様へ。早速ですが、10分以内にこちらへいらっしゃって下さい。もし、時間切れになったら、あなた達のハ〜トをちょ〜だい致します。───新聞社Ru-Blunpa"
だって〜」
……………は?
「え、どういうこと?」
「つまり……この新聞社行かないと死ぬってこと?」
「え、死ぬん?でももう死んでね?」
「だから消滅させるってことじゃない?はーと、って心臓のことでしょ?」
「えええええ嫌だ消滅したくない!!!」
「私も嫌だあああああ!!」
「ま〜ま〜2人とも落ち着いて〜。後ろに地図書いてあるし、いつも通りの方法で行けそうだから行ってみよ〜」
「「行くんですか!?」」
いや、そりゃあ行ってみたい気持ちはあるけど、何が起こるか分からないし………
「大丈夫〜。何かあったらフライパンで戦えばい〜し〜。みんなの分もあるよ〜」
「うー……フライパンあれば安心かな。うん」
「まじで!?」
「よ〜し、ペガ車に乗ろ〜」
「おー!」
「え、えぇ………」
てかこれ、相談っぽくない気がするんだけど…………
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てなわけで、秘密のペガ車の仕組み──説明は後日──であっという間に新聞社、Ru-Blanpaに着いた。
ちなみにここは、人形の異世界、形界にあった。
しかも、ここは日本人形ではなくドールハウスに住んでるような人形が住んでいる。だから、人も街もメルヘンチック。建物の雰囲気可愛いし、白馬の王子様が住んでそうなお城まである。
そしてこの新聞社は、緑色の屋根と二階建てのレンガ造りの建物。二階の窓と茶色いドアの間に、Ru-Blanpaと書かれた文字。
「ほ、本当に来てしまった……」
「本当にあったね……」
「わ〜かわい〜」
と、それぞれフライパンを持ちながら言う。
「は〜い、みんなジャンケンしよ〜」
「え?何でですか?」
「ノックする人決めるの〜。はい、せ〜の、じゃ〜んけ〜んぽん」
…………負けた。
「はい、レッツゴー!」
「がんばれミヤリオく〜ん」
「えぇ……」
今日すっげぇ振り回されてるなぁ……
コンコン
───ガチャ
「あ、こ、こんにちは」
反射的に挨拶をする。出てきたのは、深緑のスーツを着た金髪メガネの青年だった。
「こんにちは。あの……料理人形の方々ですか?」
「あ、違います。あの、予告状(?)をもらって来ました、コロウマ相談室の者です。」
「………えっ、こ、コロウマ相談室!?え、ちょる、あ、……だいき!!」
慌ただしく、奥の方へ行ってしまった。普通にいい人そうに見えたな………
「何だい?」
奥の方から、もうひとり青年が出てきた。
黒髪、同じ深緑のスーツ。白い手袋をはめた左手には、黒いシルクハット。やけに、紳士っぽい。
「こっ、この方々、コロウマ相談室の人たちだって」
「───あぁ。すみません、突然お呼び出して。どうか、予告状でのご無礼をお許しください。どうしても用があって行けなかったものですから」
「あ、いえいえ。……ここ、Ru-Blanpaであっていますか?」
「ええ、もちろん。本当に、ようこそお越しくださいました。どうぞ中へ」
……入って、みようか。
俺たち3人は目配せをして、でも心配なのでフライパンを抱えて、中へ入っていった。
長らくお待たせして、すみませんでした!
次回もどうぞお楽しみに!