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異世界転生達の相談室  作者: 磨雄斗
27/33

11.黄昏探偵の相談室(後編2)

君は誰?


私の記憶の中に、1番よく出てくる人。

どうやら、幼なじみらしい。覚えてる中で、1番小さな頃の記憶から登場している。


名前は?


分からない。


その人は、右手首に青い砂時計のブレスレットを付けている。


私は、左手首に白い砂時計のブレスレットを付けている。


いつ買ったの?なんで付けてるの?今でも付けてる?


違う。


もっと大切なことを聞きたい。

そう、例えば……



『記憶を失くした私を、今も覚えてる?』

虹色の葉が、ひらひら舞い、ふわっと消えた。


今日、いつかのショッピングモールに呼び出された。

救世主『リオ』が、オレを助けてくれる手がかりを渡してくれるらしい。本当に救世主だ。感謝してる。


─────紹介が遅れたな。オレの名前は明津玄岳。みょうづはるが、だ。中高生の頃は『げんがく』だの、『げんげん』だの、本名で呼んでくれるやつは中々いなかった。でも………()()()は、ちゃんと呼んでくれたっけ。


ありがとう、も言えなかったな。だからこそ、今から会う人達にはありがとうを言いたい。『リオ』にもこれから何度も言おう……



ヴー、ヴー、ヴー、ヴー


っと、電話だ。リオか?

………いや、違った。


とんっ

「……もしもし」

『よっハルガ。彼女さん見つかった?』

「ばっか彼女じゃねぇただの幼なじみだ!」

『はっはは、ごめんごめん』

「ったく……ところで、そっちはどうなんだ、ソウ」

『なんとか行けてるよ。あ、ウォウフも元気だよ』

「そうか……悪い。本当に、いきなり辞めて」

『辞めたじゃなくて、休んだでしょ?脱退した訳じゃないんだから怖いこと言わないでよ。それより、玄岳なら大丈夫だと思うけど……見つけるまで、絶対戻ってこないでね」

珍しく強めの言葉。

そんな言葉も、オレの心に真っ直ぐ届いた。


「………あぁ、当たり前だ。」

オレも届くように、強く言った。

ソウが静かに笑った。


『あ、そうだ。そうは言っても、作詞作曲にはこれからも協力してほしいんだけど……』

「そんなの当然だ」

『やった、ありがと。じゃあまたかけるね』

「ああ、またな」

通話を切った。


ソウは、同時期に転生した。オレがギターを弾けるのを知った途端、バンドを組まないか、と誘ってきた。最初は断り続けていたが、あんたとなら行ける気がするからやりたい、と言われ、さらっと心を掴まれた。


その後、童界のなんかのオオカミ、ウォウフを誘い、バンドを結成した。苦難もあり、何度もぶつかりあったが、その度に自分の欠点に気づいて直すことが出来た。努力のかいもあり、ファンもどんどん増えていった。2人に出会えたから、こんなことが出来た。大切な友達に出会えて、本当に幸せだ。

でも、彼らと出会うきっかけになったのは、カケガエノナイ、生前の幼なじみだった。────


ざぁっ


風が吹く。

虹色の葉たちが、またひらひら舞っては消えた。

今日はいい天気だ。あの日と同じ。あの時は夕方だったが、夕日が綺麗だった。


──()()()。愛しき日々が終わりを告げた日。


幼なじみは突然、事故にあった。

オレの目の前で。

横断歩道の信号は、確実に青だった。

ぶつかった自動車は電柱にぶつかり、あいつは意識を失くした。幸い命に別状はなかったが、右足を骨折し脳にも影響があった。


──そして、あいつはなってしまった。


逆行性健忘症。

発症以前の記憶を忘れるもの……記憶喪失に。


なんでお前が。オレがあの時先に歩いてたら、こんなことにならなかったのに。オレのせいだ全部全部、オレのせいだ。あいつの両親が、何を言おうとオレのせいなんだ。


絶望したオレと反対に、あいつは喪失前の自分を精一杯追いかけていた。勇敢に物事に立ち向かう、本当の優しさを知っている『自分』を。


『記憶を失くす前の自分に、少しでも近づきたいから。』


そう言って、あいつはリハビリはもちろん、勉強や苦手だった運動も頑張り、いつの間にか、少し違えど、オレの知ってる『あいつ』になっていった。

そのうち、好きなものも見つけた。あるバンドだった。曲を聴いた瞬間、あいつは恋に落ちた。それから数日間はぼーっとしていて、リハビリどころではなかった。


その影響もあってか、オレはあいつが特に好きだったメンバーのギタリストを真似をし、ギターを始めた。別に、あいつが喜んでくれるから続けてたとかそういうのでは無い、断じて。うん。


……と、気づいたらブレスレットを見ていた。


黒い紐に青い砂が入った、砂時計のブレスレット。

『あの日』に買った、最後のおそろい。

あいつは黒い紐に、純白の砂時計だった。


『あの日』にも割れなかった『お守り』として、生涯ずっと付けてくれていた。確か、左手首に。今でも付けているのだろうか。早く会って確認したい。そして、色んなことを話したい。


そう思うごとに、熱くて胸を焦がすような、切なくて悲しい気持ちも高まる。この想いの名は、なんというのだろうか。あいつなら知ってる気がする。


あいつ、っていうだけで高まるから。

あと、決まって暑くなる。


……ん?


そういえば、リオ遅くないか?いつの間にか集合時間を過ぎている。迷ったのか?

別に、心配とかそういのでは無いが電話をかける。


……と、着信音らしき音楽が近くで鳴った。

お!?


急いで立ち上がって辺りを見回したが、いない。偶然か?にしてはタイミング良すぎないか?

耳にスマホを当てたまま木の周りを見ようとした瞬間、人々のざわめきがスマホの中から聞こえてきた。


「あっ、もしもしリオか?お前今どこにい」

『ココです。』

「は?」

「ココです。」


驚いて声が出なかった。理由三つ。


2つ目の声が、リオのものではなかったこと。

その声が、真後ろから聞こえたこと。

その声が………、『あいつ』だったこと。


「……あづ?」


振り向くと

この間と違う、チェックのセーターを着たリオと、

白いワンピースに黒く長い髪と大きな目の『あいつ』……あづがいた。

時が戻ったみたいだった。『あの日』と全く同じ格好をしている。


「お前……なんでここに」

「……さい」

「え?」

「ごめんなさい!私、覚えてないんです!」

「……は?」

「また記憶喪失になったんです!」


……周りの雑音が消える。

つまり、また最初のあづでは無くなっていた。

ということだ。


あづは、潤んだ大きな瞳でオレを見た。

「だから、あなたの名前も覚えてません!自分の名前も……でも、名前だけなんです!全っ部名前だけで、あの日々は忘れていない!記憶を失くしてからの日々も……記憶を失くす前の日々も!」

「分からないんです!なんで私だけ記憶失くすのか!なんでいちいち忘れるのか!しかも名前だけって……呆れてますよ!自分でも嫌になる!なんで……なんで私だけなの……?」

力なく笑った。


「教えて……名前の分からない、私の幼なじみさん」


……オレが聞きたい。

ほんと、なんでお前だけそんなになるんだろう。オレが代わりになれないのか?大切な、カケガエノナイ幼なじみに。……なれる訳ない。でも、あいつの苦しみを、少しでも軽く出来ないだろうか。何か方法は無いのか?あの頃みたいに考える。


すると、とても簡単なことに辿り着く。『あの日』と同じように。


「………オレが、傍にいればいい」


「……え?」


「理由なんてオレも分からない。だから、あづが何度忘れようと、オレは死ぬまで……次に転生するまで、俺がそばにいる。どうやったって忘れらんねえよ、お前の名前なんて。一瞬でさえ忘れられない。あづの家族やオレの家族の名前だって忘れたことはない。さすがに、あづの友人全員は覚えてないが、少しは言える。……あづの記憶は、オレの記憶だから。だから、誰かを思い出せそうだったら言ってくれ。そいつの名前教えるから。オレが……」

あづの顔がぼやける。気にせず、オレは言う。


「あづのカケガエノナイ幼なじみだからこそ、これが出来るんだ。だから、オレのそばにいてくれ。次転生するまで、ずっと。」


「……ずっ、と?」

「あぁ。また忘れると困るだろ。大丈夫。オレは『あづ』という存在があれば、それで十分だから」

「い、いやいや。それは言い過ぎだよ」

「言い過ぎな訳あるか。逆にあづがいないと空白の日々になる。オレは空白のつまらない日々より、鮮やかな充実した日々の方を好んでいるからな」

目じりを拭う。


あづの目はぽかんと開いたままだった。

オレはそっと、あいつの目もとも拭った。


はっ、として、顔を赤らめたあづは、困ったように、嬉しそうに、微笑みながら言った。

「………うん。ありがとう。お言葉に、甘えさせていただきます。」


「……あぁ。」

『愛しき日々』が、もう一日付け加えられた。

今日は、とてもいい日だ。

また、あづと生きられる。

あの不思議な気持ちが、また高まった。


「じゃあ………。その代わり、名前教えてよ。私と、君の名前」

「……え、お前の名前はもう教えたじゃないか」

「ごめん、フルネームは教えてもらってない」

「あづで十分じゃないか」

「いや。自分の名前も言えないなんて恥ずかしくて生きていけないよ。もう死んでるけど」

「はぁ?別にいいじゃないか」

「良くない!あ、じゃあ私の今の名前も教えない!」

「い、今の名前!?何だそれは!おいリオ!知っているんだったら教えろ!」

「……うぇ!?お、俺ですか!?」

「だめ!教えないで下宮さん!」

「なんだお前、下宮って言うのか。じゃあ、お前の後で教えろよ。フルネームでな」

「えぇ!?俺部外者ですから2人ので十分じゃないですか!」

「じゃあ、オレも教えない」

「じゃあ、私も教えない!」

「えぇ!?……ど、どうしよう、このままじゃ相談完了にならない………」

「相談?何だそれ?」

「はっ、また心の声が……」

「??ま、それ後で詳しく教えろよな、大読或月(おおよみあづき)。」

「なんで私が………え?」

あづが固まった。


「い、今、何て?」

「だから、おおよみあづき。大きいに読む、或るに月だよ。そして……オレの名前は、みょうづはるが。明るいに河津の津、玄米の玄に岳」

「……大読或月……明津玄岳……ありがとう、玄岳。私の今の名前は、じゅうじいんゆかり。十に時に病院の院で夢の光」

「夢の光……いい名前だな。夢光」

「うん。付けてくれた人もね、すごいいい人なの」

「……そうか」

良かった。あづにも大切な人が出来ていたんだ。


「じゃあ、会いに行きますか!」

「………は!?」

「行こ、玄岳!」

「おま……元からその予定だったのかよ!」

「うんっ!行きましょ下宮さん!玄岳ーペガ車だよペガ車!」

「ペガ車ぁ!?お前そんな高いの乗ってんのか!?」

「やっぱりアレ高いんだ。って、それよりほら、行きますよ玄岳さん!」

「あ、ちょ、引っ張るなあ!てか名前教えろよリオおおお」


こうしてオレは、リオとあづに連行されることになった。

白い砂時計のブレスレットがついた、あづの左手に引っ張られながら。

真花

「いやーもー最高かよーーーー!!」

ヒロさん

「ど〜したの真花ちゃん」

「少女マンガ的な展開でテンション上がってますっ」

「なる〜。次回はどんな人達が来るのかな〜」

「確かに!願っときますっ☆」

「うん〜」

磐瀬常郎所長

「何の話してるのか分からないけど、今回は本当にみんなありがと〜。僕達のお礼品もお楽しみに〜」


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