9.ライスケーキ(父)の相談室(中編)
こんにちは!磨雄斗です!
今年最後の投稿となります!
お楽しみください!
「ビーンくん。」
「はい。」
顕微鏡から目を外し、回転椅子をくるりと回した。
色黒の肌にクリクリの目、金髪ボブでスタイルが良い。名は、コフィー・ドロップ。
「………何ですか。」
「あのさ、昼休み空いてる?」
「……空いてますけど。」
「じゃあ、研究所の裏口のところに来てくれない?」
「……あ、はい。」
ありがと、と言って女子グループの方へ帰った。
………え、何?
ボク、異性との交流なんて研究所内外関係なく無いんだけど。というか、自分から避けているんだけど。
それに、彼女は………………
「おい、昼休みと言わず今すぐ行ってこい!」
「わ、。びっくりした。」
隣の席の、幼なじみのレイジ・シェインが話しかけてきた。決して影が薄いわけじゃない……というか、影濃すぎ。口が達者でチャラ男だし。
「は?チャンス?」
「いいか、リオン!彼女はこの研究所内のクールビューティ女神なんだぞ!自分は心を動かさず、男子を次々落としまくってんだぞ!そんな女神に呼び出されるなんて!くぅ、羨ましい限りだぜぇ!!」(小声)
「女神だろうがなんだろうが嫌だよ。そんなに言うならレイが行ったら?ボク断るの上手じゃないから。」
「は!?何言ってんの、お前!!お前への愛の告白ならお前が行かなきゃだろーが!!」(小声)
「……………え」
こ………く………はく………?
「....絶対行かない。」
「やっぱ気にしてるのか?あのこと。」
「…………。」
「ラウディ・スパークロンはこの研究所から去ったんだから気にすんな。さ、行ってこい。違うかもしれないだろ?」
「………うん」
ラウディ・スパークロン。
この名前が頭に反響したまま、青い長髪を揺らして席を立った。
───────────カイソウ───────────
「私、ビーンくんのことが好きです。」
やはり、告白だった。
太陽が、彼女の金髪をより輝かしいものにしている。
潤んだ瞳も眩しい。さすが女神だなーっと少し背の低い彼女を見つめ、どう断ろうか考えていた。
「ごめん、いきなり。あんまり話したこともないのに。」
「……別に。」
「君は覚えてないかもだけど、あの日に私は君の優しさに救われた。そのとき感謝の言葉を述べただけなのに、君はそれ以上の言葉をくれた。」
言葉を切り、顔を上げた。
─────どくん。
「嬉しかった。私が真っ直ぐでいることを認めてくれて。そしたら、君のことを好きになっていた。
....長くなってごめん。こんな私ですが、付き合ってください。」
ぱっ、とお辞儀をした。
.....『真っ直ぐ』。
そうか、俺の言葉を覚えてくれていたのか。勘違いじゃなかったのか。そうか。そうか........
固くなっていた心が、ゆったりと揺らいだ。
唯一、真っ直ぐに保てなかったのは、俺の心だけだった。
───────────カイソウ───────────
「マグ、お待たせ!」
「………うん。」
今頷いたのは、実際最寄りの駅前で5分待ったことと、彼女の服装が神天使だったからだ。え?神天使って?気にするな。
あれから1ヶ月経ち、ボクとコフィー・ドロップ………まぁ、普通にコフィーと呼んでいる……がお付き合いを始めたのも1ヶ月経った。
偶然今日は休所日だったので、天界のショッピングモールへ行くことになった。
「ふふっ」
「どうした?」
「だってさ、彼氏が課題を1番に終えて、めっちゃ可愛い子が生まれたんだもん!」
「むちぃ?」
ボクの前掛けショルダーバッグから、噂の白い天使が顔を見せた。
両頬に非生界生息物である印の赤い星。つぶらな瞳でバニラアイスが溶けたような見た目だが、モチの妖精だ。名前は、コフィ―と2人で考え『モムチ』にした。
ちなみに、『課題』というのは、非生界生息物を実際に自分で作ることだった。1年生の最終課題だったが、入所4ヶ月で俺だけ終わらせてしまった。まぁ、いつも通りなんだけど。
「今日は君のアクセサリーを買う日だぞ。楽しみだな!」
「むちむちぃ!」
「悪いな、コフィ―。」
「んーん。めっちゃ楽しみ!」
ああ、なんて可愛い笑顔なんだ.....!!
心を弾ませながら、ショッピングモールへと向かった。
.....結んだ青い髪を揺らすボクへの目線に、気付かないまま。
───────────カイソウ───────────
「んー.....」
「どっちもいいよなー」
やって来ました、大盛況のショッピングモール。その内のあるお店。可愛らしい2つの小さな帽子を前に、ボク達は悩んでいた。
ミカンか、リンゴか。ああ、どっちも似合うんですけど!!2つ買いたいけど、あれが買えなくなる...……
「こうなったら、本人に聞いてみよう!!」
「ナイス。モムチ、眠いところ悪いがどっちがいい?」
「むちぃ......むひぃ.....」
うとうとしながら、ボクの手の中から這い出た。
ぴと、
とくっついたのは、オレンジの帽子だった。
「よし、決まりだな!」
レジへ向かい、会計を済ませた。
「リンゴが良かったなぁ」
「仕方ないだろ?モムチが決め」
.........!!!!!!!
振り向くと、違う女性が立っていた。
「久しぶりぃ、だーくん。これは、どういうことなのかなぁ?」
「.....ラウ。」
じんわりと、嫌な空気が立ち込めた。
目の前にいたのは、ボクが最も恐れている人だった。
「ねー、モムチ寝ちゃ……....ら、ラーちゃん!?何でここに!?」
「さぁ?ねぇねぇ、コフィぃ。だーくんといないほうがいいよぉ。」
「ボクの彼女に変なこと言うな。行こ、コフィ―。」
「う、うん。」
やばい、あれを言われたら。しかも、コフィ―がいる前で。
....逃げなきゃ。
コフィ―の手をつかみ、店の外へ走っ
「この子置いてってるよぉ」
「!!!おい、触るな!!」
「じゃぁ、返してあげる。」
ぱっ
とモムチを離した。
反射的に滑り込み、ギリギリキャッチした。
「じゃ、交換条件で言わせてもらうね♡」
「......は?」
「ねぇ、コフィ―。彼ね、......」
「!!!!!!やめろ!!!!!!!!」
くひっ、と不敵に笑った。
「『コフィ―・ドロップは消えるべき存在』とか言って、大分嫌ってたよ。今も、『近くにいれば殺せる』と思って、そばにいるんじゃない?」
「................え、?」
呆然と、ボクを見つめた。
「ち、ちがっ!!!」
「あ、今は違うんだぁ。でも、前はそうだったよねぇ?」
「........じ、冗談でしょ?ね、マグ?」
………ぽた、
と汗が落ちて、
ばっ、
と身を翻して、
たっ、
と駆け出した。
「.......戻れなくなってしまった。」
それに気付いて。怖くて。外に出たくなくて。
───一か月後、ボクへモムチが持ってきたチラシには、「相談室」と書かれていた。
次回!!
皆様、良いお年を!!