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異世界転生達の相談室  作者: 磨雄斗
16/33

7.あの悪役の相談室(後編3)

………あれ?ここ、どこだ?

下はふかふかしていて、上には青空が広がっていた。


…………あ、前に見た夢の中の世界だ。という事は…


「あ!理雄起きた!」

……やっぱり。前に出てきたおさげの女の子。

なんか、前回よりも声がはっきり聞こえるような?


「理雄?あ、そういえば、やたらニコニコしてたけど、どうしたの?」

「あ、俺さ、演劇に出るんだ。脇役だけど。」

「ええええっ!?理雄が演劇!?あんなに嫌ってたのに!?」

「そ、そこまで驚く?」

「そりゃあ、驚きまっせ。んじゃ、演劇の先輩から一言!怖いって思うな、何も出来なくなっちまうぜ☆」

「軽く言うなぁ、、、ふぁあ、、、」

「また眠くなったの?まぁ、いいや。今度は仲間がいるし。」

仲間?……そういや、なんで俺は、普通にこの子と話していたんだ?それに、この子は俺の事を知ってるらしいし、おれもこの子を知ってる気がする…………確……か…………名前………は………


「おやすみ、私の大切な人。」


その一言が聞こえたか否か、俺の意識は途絶えた。



「....なぎ....。」

ぱち


...….あれ?こんな暗い所にいたっけ?


と思ったら、奥の方に光がさした。

そこには、黒い頭巾と黒いドレスを身に着けた女性がいた。

その正面には、鏡らしいものがあり、優雅な音楽がながれ始めた。


お妃「.....鏡よ、鏡。この世で最も美しいものは誰かしら?」

鏡『え?それは、ものによってちがうからねぇ、わかんないや。」

お妃「....じゃあ、あなたが一番美しいと思う人でいいわ。」

鏡『ほんとにいいの?ぼくをわったりしない?』

お妃「ええ、割らないわ。ね、早くして頂戴!」

鏡『うーんと、ぼくはね、しらゆきひめ がいちばんうつくしいとおもうなぁ。』

お妃「....なんだとっ!」

音楽がやみ、光が消えた。


.....思い出した。

今は、俺たちの演劇中。

そして、そろそろ俺たち小人の出番だ。


.....いつの間に寝たんだ俺のバカああああああああああああああああああああ!!

やばい、緊張してきた!!セリフ平気か!?うわぁ!


「....お母さん!猟師さんは!?」

と、隣で王子の格好をした(赤い頭巾も着けている)紅琴さんが、お妃役の紅琴さんのお母さん(詳細はのちほど)に話しかけた。

そうだった。もう出番だというのに、猟師さんがいない。

終わったな。だって、誰が代役をするんだ?誰もセリフを覚えてるわけないのに。。。。


「おまたせっ♡」

「ま、真花!?なにその格好!?」

「あ、下宮くんおはよう!詳細はのちほどっ♪行こっ、紅琴ママ!」

と、急いで舞台へ上った。

照明係が、あわてて二人を照らした。


猟師「お呼びでしょうか、陛下。」

お妃「そなたは、我と義娘のどちらが美しいと思うのだ。」

猟師「.....は?」

お妃「どちらなのだ。」

猟師「陛下、(わたくし)には甲乙が付け難いと.....」

お妃「ええい!美しいと思わぬ方をころせ!!!今すぐにだ!!」

猟師「陛下、それは!!.......は、い、かしこまりました。」

お妃が舞台から消え、猟師だけが残った。


猟師「.....私は.....どうしたら、いいのだ……ぁ」

ぽたぽたと、リアルな涙が舞台上にこぼれ落ちた。




……す、すげぇ。てか、カッコよすぎ………


ドクンっ


「下宮くん?」

「な、なななななに!」

「静かに。どしたの?」

「な、なんでもねーよっ!!!てか、早く小人の服に着替えろ!」

「だぁから、静かにぃ。あ、私の演技どうだった?」

「え、そ、そりゃ、えと……で……った……ど……」

「ちょっと聞こえないぃ。」

あーもー!セリフ早く読みたいのにー!!


だんっ、と大きく1歩を踏み出し、真花の耳に口を近づけた。


「───っ、とても良い演技でしたよ、名女優。」


「……あ、あそ、そぅ?よか、よかたー」

そうして、明らかに赤くなった顔で、奥の方へ駆けて行ってしまった。


………な、なんで俺は今こんなことをしてしまったんだ!?

はっ!とにかく、今はセリフを読まないと………!!


「ミヤリオく〜ん、そろそろ僕らの出番だよ〜。」

「え、も、もう!!!???」

「もうだよ〜。」

「どんまい、アイさん。」

「「「どんまい〜。」」」

「ざまぁ見やがれ愚民野郎。」

誰か慰めてくれる人は居ないのか。


ああああ、緊張する!!!


ナレーター「はてさて、ついに猟師は白雪姫を殺そう としますが、躊躇って森の奥へ逃がしてやりました。心の清い猟師ですねぇ。」

しんみりと、ナレーターである白雪姫くん、こと秋宮間千さんが言った。うう、そろそろだ。


ナレーター「その後、恐ろしい森を抜け、小さな小屋を見つけた白雪姫は、掃除をして、眠ってしまいました。……おや?足音が、聞こえますねぇ………」

そして、ナレーターが舞台から降りた。

こ、怖い……………


『怖いって思うな!何も出来なくなっちまうぜ☆』


………夢の中のあの子の言葉が、心に響いた。


───よし。


俺は、明るくなった舞台へ、走りながら上った………………………って。

あれ?観客席も明るくね?てか、天井が無……………




「ウグァァァアアアアアアアアア!!!!!!」





耳をつんざくような叫び声が、体育館内に轟いた。

上を向くと、まさに福笑いのような、全く笑えない、そんな顔の巨人がいた。


……巨人。


「キャアアアアアアアアアぁぁぁああ!!!!!」

誰かの叫び声。

そして、観客が次々と悲鳴をあげながら外へと飛び出した。

「皆さああああん!!落ち着いて、グラウンドへ避難してくださあああああい!!!」

「そ、外って、巨人は外にいるんですよ!?」

「あの巨人は、中にいるモノしか食べないの!!ほら、あんた達も逃げるわy


フっ


いきなり、暗くなった。

上には、巨大な手が、俺たちの方へ向かっていた。


……あ……足が………動かねぇ………。


「四大天使の名においてこの術を用いることを許可する!!!シオンフィ・レリオ!!!」

まばゆい無数の光の矢が、巨人の手に刺さった。


瞬間。


「ウグァアアアアアアアアアア!!!!!!」


轟く悲鳴……って、効いてない!?


「くそっ、いつものコートがあれば!!」

悔しそうに、歯ぎしりをした。魔法で呼べないんだ。

「あ、もう演技始まったのー?って、何この巨人!」

「ウグァァァアアア?」


変なところにある両目が、真花を捉えた。

そして、手を、真花へ伸ばした。


「危ねええぇぇぇっ!!!!!」

間一髪、俺は舞台から飛びおりて真花を押し倒した。

あと一瞬でも遅かったら、潰れたところだった。


「ウグァァァアアアアアアアアア!!!!!!」

や、やばい、もう一回来る!?



「アオォォォォオオオオオオオオオオオオオン」


狼の遠吠え。

固まる巨人。

真上を飛び、巨人の腕をぐんぐん上る何か。


────あ、狼だ。


そう気づいた時には、彼は巨人の目を思い切り噛み、紅に染まりながら、ゆっくり優雅に落ちていた。


……巨人は、狼が着地すると同時に、消えた。


────────☆☆☆☆☆☆☆─────────


「あぁ………疲れたぁ……。」

コロウマ相談室に戻り、自分の部屋のベッドに突っ伏した。

あれから、まあいろいろあり、結局俺らとその後の劇は中止になり、巨人を倒した間千さんはとても残念そうだった。

でも、紅琴さんに嬉しそうに抱きしめられ、上機嫌だった。返り血浴びていて少し怖かったけど。


コンコン


「ふぁあい。」

「ドア開けっ放しですけど」

入ってきたのは、真花だった。

「あ、今日押し倒して悪ぃ。」

「全然。むしろ、、、、えと、、、、ありがと。」

そういや、今日つけていなかった紅いハートのピンと同じくらいに、頬を赤らめた。


ドックん。


また、胸がなった。

「と、とこ、ろで、何?」

「あーいや、その事に関してなんだけど、、、、、

怖く、なかったの?」

「え?全然。」

「なんで?」

「なんで、かぁ…………」

………何でだろ。なんか、体が勝手に動いた。

それと、あの子の言葉の影響もあって。


………あの子、本当に誰なんだろう。

胸を焦がすような想いを、はせたような気がする。


また、あの子の夢を見たら聞いてみよう。

なんか、楽しみだ。


「下宮くん、なんで笑ってんの?」

「いや?……てか、今回は相談解決なのか?」

「解決っしょ。相談者さんもなんか嬉しそうだったし。私たち結局何もしてないけどねぇ」

「確かに………」


でも、まーいっか。


童話にハッピーエンドはつきものだから。


「今回の相談、解決致しましたな。」

真花が頷くのを見て、おれは外を眺めた。


今日もこの異世界は、すっきりと晴れわたっていた。


あの悪役の相談室

終わり。

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