7.あの悪役の相談室(後編2)
「終わった、終わったぁ……」
自分の部屋に何故かあった、高校のTシャツで汗を拭きながら、体育館の出入口に座りこんだ。
ふぅ、ラストのシーンが1番体力使うんだよなぁ。
何せ、白雪姫くん(秋宮間千さん)が乗った棺桶を、7人の小人全員で運ばなきゃならないんだ。辛い。
「お疲れ、アイ。」
「あ、王子ちゃん。」
「何、そのニックネーム。」
不服そうに、隣に座ったのは、王子様の服を着た秋宮紅琴さん。
「その服、似合ってますね。」
「まぁ、お婆様が作ってくれたからね。昔は洋服屋をやっていたんだ。」
「へぇ、凄いですね!」
ありがと、と嬉しそうに笑った。
「あともう少しで、小人の服も出来上がるから待っててな。」
赤茶色の髪をふわふわさせながら、ニカッと笑った。
「はい!あ、そういや、その赤い頭巾は外さないんですね。」
「あたぼうよっ!これは、私の存在を証明する唯一無二のものだからなっ!」
「は、はぁ……。」
「ところで、ひとつ聞きたいんだけど……」
「……はい?」
キョロキョロと周りを伺い、そっと耳打ちをした。
『……き、キスって、兄妹でもアリなのか?」
………………………………………………………。
「あ、あああああアリだと思いますすすす。」
「そ、そか。よかた。じゃ、じゃな。」
たたたっ、と駆けて行ってしまった。
暑い。なんか暑い。
「こんちは!チームRed hoodのメンバーさん!」
トントン、と肩を叩かれた。
振り向くと、金髪の髪を綺麗に結わえてドレスを着た、本物のお姫様みたいな女性がいた。
……………こんな美人な知り合い、居ないよね。
「あ、私、ティアラって言います!ラプンツェルです!」
「……あ!最初に会った!」
思いだした。そういや、初めてココに来た時に会ったっけ。
「あ、俺は下宮理雄です。ところで、チームレッドなんとかって?」
「マチ先生のチーム名ですよ!あ、そのマチ先生からの伝言なんですけど………」
と、何故かニヤニヤしながら耳打ちをしてきた。
『「先生と生徒のキスって、アリなんですか?」だそうです!』
「………あ、あああああアリだと思ますすすす」
「ですよねぇ!あ、それじゃ!次、体育館使うので、良ければ見ていってください!」
にはっ、と笑い、体育館の中に入っていった。
………俺、恋バナ得意じゃないんだけどなぁ。
それに、マジでアリだと思うし…………………
「よォ、お前に質問があるんだが………」
「アリだと思いますよ。」
「…………は?」
「あ、なんだ。有磨さんかぁ。」
さすがに、恋バナじゃないよな。
「なんだ、その反応は。天下の有磨様に失礼だぞ。」
「名前、完全に馴染んでますね。………って、ああああああああっ」
「な、なななななんだ?」
驚きすぎです。てか、これ有磨さんとは関係ないからいいや。
「こっちの話です。ところで、質問って?」
「あー。あの水晶、大切に扱っているか?」
「へ?…………あ、はい。本棚の一番下に置いてあります。演劇に使うんですか?」
「いや、そういう訳ではないが…………とにかく、明日、持ってきてくれないか?あとの愚民のも合わせて三つ。」
「はーい。あ、俺も質問があるんですけど。」
「なんだ?」
「あの3つ子ちゃんって、有磨さんの兄弟ですか?」
「いや。ただの下級天使共だ。」
「「「そだよ〜お。」」」
あ、噂をすれば。
「カミールくんにブリールくんにラーフィールくん!」
「「「おい〜っす!」」」
よし。名前覚えた。
「お前ら、もう終わったのか?」
「はい!」
「なんとか」
「や、やれましたぁ!」
???何の事だろ。
「そうか。んじゃあ、帰るか。
下の愚民、明日は何時に集合なんだ?」
「8:30です。」
「じゃあ、8:00に迎えに来る。帰るぞ、ほかの愚民共も呼んでこい。先に待ってる。」
と言い残し、有磨さんは行ってしまった。
───言い忘れてたけど、他の異世界に行く時は、必ず有磨さんが送り迎えをしてくれた。普通の自動車で。
一応、アレでも四大天使の1人なんだから、もっとカッコイイの乗りゃあいいのに。
「なんか言ったか。」
「あ、ティアラさんに見れないこと謝っとかないと。そのあとは真花とヒロさんを探そーっと」
スルースルー。
さてさて、明日はいよいよ本番だ。
なんか、全然緊張してないけど、大丈夫かなぁ……。
────♡真花の疑問♡─────
「なんで、下宮くんはいつも相談者に「さん」を付けんの?」
「じゃあ、なんで、真花はいつも相談者をニックネームで呼ぶの?」
「別にいいじゃん!なんか文句あんの!?」
「ねーよ!てか、言わせてもらうけど、俺は単に相談者さんに敬意を表しているだけなんです!なんか言いたいなら、どうぞ!?」
「言ったなぁ!?」
「言いましたけどぉ!?」
「とりあえず〜、次回もお楽しみに〜。」