6.厨二病 inコロウマ相談室
……寝れない。
頭から、あの叫び声が、離れない。
三島さん、見沢さんと幼馴染だったんだな。
知らなかった。
解決できなかった。
俺のせいで……………。
チリンチリン…………チリンチリン………………
「ひぇっくしゅ〜んっ!!」
元気なくしゃみが、1階の相談室に響いた。
俺は、ちょうど、ベージュの階段の目の前にある深緑のドアを開けたところだった。
眠れなかったから、自分で珈琲でも入れてみよっかな、と考えていた。
「───あれ、ミヤリオくん起きたの?まだ夜中の1時だよ〜………うっくしゅん!!」
べちやっ
「ぎゃああああああああっ!!!!!」
チリンチリン…………チリンチリン………………
「ぢーーーーーんっ!!!」
「ヒロさん、風邪引いたのぉ?」
「あれ〜?真花ぢゃんも起ぎぢゃっだの〜?」
「すぅごい鼻声だぁ。ところで、下宮くんはぁ?」
「いや〜、僕が鼻水ぶっかけちゃって〜」
「あぁ、だから洗面所の電気が付いていたのかぁ」
────────☆☆☆☆☆☆☆─────────
ガチャっ
「えーと、風邪薬ーっと。」
その頃の俺は、がさごそと本棚、クローゼット、ベッドしかない部屋で風邪薬を探していた。いや、もしかしたらあるかもしれないから、顔洗ったついでに探しに来た。
…………てか、余計に目が覚めた。
今日のことが………って、もう昨日のことか。
結局、三島さんの泣き顔が頭から離れないまま、日を越してしまった。なんか、悔しい。
心の中がモヤモヤしたまま、絶対なさそうなベッドの下を屈んで覗いた。
びょおおおおおおおっ
「寒っっっっっっ!!!!!」
その勢いで、立ち上がろうとしたが、、、、、、、、
ズシッと体が重くなり、立てなくなった。
まさか、誰かが乗った?
泥棒?不審者?それとも…………変質者?
「─────ふぅ、着地成功だな。たまには役に立つじゃないか、愚民。」
まぁ。なんて失礼な変質者だこと。
心の中でそう呟いたが、この声と口調に聞き覚えがある。
………まさか。
そう思いながら首をあげて、答え合わせをした。
「………あ!やっぱりガブリエル(仮)さんだ!」
「うっせぇ!本物の天下のガブリエル様だ!!」
相変わらず、発言が厨二病っぽいですね。
その言葉を飲み込み、首を戻しながら、四つん這いの姿勢で、一瞬だけ見えた彼の姿を思い出す。
伸ばした銀髪の前髪で、エメラルド色であろう右目を隠し、翼の生えた黒いコートを羽織り、片手には表紙に魔法陣が描かれた本を持っていたっけ。
「おい、何をブツブツ呟いてんだ、愚民。」
「あ、いえ………てか、重いです!早く降りてください!!!」
「失礼な奴だ。そういえば、なぜに窓が悲惨な状態なんだ?」
「………諸事情です。」
チリンチリン…………チリンチリン………………
────1階の相談室にて。
「何だ、この鈴の音。」
「今回担当した相談者がくれたの。可愛いくない?白猫の手型だよ、女子力高いよねー。」
と、出入口のドアに付いている白猫の手型の鈴を見る真花。
「………なかなか風情のある音色だな。」
「あ、ガブざ〜ん。僕ね〜、質問があるんでずげど〜…………ひっぐじゅんっ!」
と、酷い鼻声のヒロさんは、ある質問をした。
─────屋上から、泣きじゃくる三島さんを連れ、教室に戻ると、HRと英語の授業の時の気だるさは何処えやら。担任が、熱血的にクラスメート達を怒っていた。
俺と真花は、やる予定だった部活体験の方に行かされた。その後、唯一担任に褒められた三島さん&迎えに来た柴崎さんと合流。
その近くを通ったお嬢様3人の目は、射抜くようにこちらを見ていた。
………本当は怖かったと思うけど、三島さんは、涙で濡れた頰を拭いながら、俺を見て微笑んでいた。
……………そんな中で、ヒロさんは、柴崎さんと何かを話し、首をかしげたそうだ。
「────死んだ魂って、消えるんでずが?、今回の相談室の執事ざんがおっじゃっでいまじだげど。」
「あぁ。そうだが。言っていなかったか?」
「「消える!!??」」
真花と声を合わせて叫んだ。
うるさそうに目を細めたガブリエル(仮)さんは、話を続けた。
「お前らは、あくまで魂の塊だ。目に見えないものが具現化したものに過ぎない。普通の人間と何の変わりもない生活を送れるが、刺されようが撃たれようが自殺しようが、魂は消える………つまり、消滅する。」
淡々と説明をした。
何も考えずにいた。
1度死んだ俺達が、もう一度死んだらどうなるかなんて。
───恐ろしくて、怖い。
「さぁ、悲しい話はここで終わりだ。お前らの頑張りは、よく耳にする。そこで。お前らに2つの贈り物を授けよう。」
と、手にしていた魔法陣の本のページをパラパラめくった。
『──四大天使の名において、この述を用いることを許可いたす。 ユリール・フリール・ジブリール!』
「「「厨二病キタ〜!」」」
見事に3人の声が重なった。
すると。
ゴトトトッ、と天井から、何かが落ちてきた。
「あああああ!!!!私のスマホだあああ!!!!」
「僕のスマホ〜!!!」
「俺のパートナー!!」
なんとびっくり。
落ちてきたのは、俺たちのスマホだった。
俺は、紺色のケース。真花は、桃色のケース。ヒロさんは、白猫のケースだった。(可愛い)
待ち受け画面も、中身も元通りだった。
……でも、メールの履歴やアプリが全て消えていた。
やっぱり、やり取りされると困るからかな。
「何があると分からないから、俺様たちが預かっていた。感謝しろよ、愚民。」
「マジでありがとう!!ガブリエル!!」
「んなななっ!べ、べべべ別にっ!大したことじゃねねねねぇしっ!」
真花の素直な発言にうろたえるガブリエル(仮)さん。
恋愛マンガかよ。このツンデレコメディ。
「ったく………あ、もうこんな時間か。じゃあな。俺は、午前2時までに戻らなくちゃいけねぇんだ。」
「え〜。ゴーヒーぐらい飲んでっでよ〜。」
「お前の風邪が治ったら飲んでやる。じゃあな。」
と、床に落ちていた魔法の本をかかげ、出てってしまった。
白猫ベルを、揺らしながら。
チリンチリン…………チリンチリン………………
その後、2階の俺の部屋にて。
「………あぁ、本当に戻ってきたんだな。」
ポツリと呟き、俺は、あるサイトを開き、ログイン画面を開いた。
────生前、何故かハマっていた小説投稿。
これまでの体験を、書いてみようかと思い、ベッドの中で、静かにスマホの画面に触れていた。
てか、ログインできるか分からないけど。
しかし、すぐにログイン出来た。
久々の、自分のホーム画面。
いつの間にか、モヤモヤが晴れている。
単純だな。
しかし、いつか死ぬと、消える。消滅する。
それまでに、何人の相談を解決できるのだろう。
今後一切、未解決にならないといいな。
そう思っていたら、いつの間にか、眠りに落ちた。