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キリングアート  作者: カルラ
8/22

第二話 マリア5と赤咲の少しだけ楽しい日常風景 その3

そして更に五日後。

この日はスタジオでレコーディングが行われることになっている。

既に何度もやっている事ではあるが、作詞をメンバーが行ったというのは初めてであり、いつもとは少し違った緊張感がある。

パート割は既にメンバーに届いているが、今回は普段とは異なるパート割になっているのでメンバーから不満もあった。


―いよいよか。楽しみだな―


 けれど赤咲は、今回は面白い物が出来そうだ、という予感もあり非常にわくわくしている。


「ちょっと! 何で私のパートがこんなに少ないのよ」


 だが陽菜はメンバーの中でも特に強く、不満を露わにしていた。

 今まではメインボーカルに桜と陽菜のツインボーカル。ハモリを恭子と杏とミリアというのが定番だったので、今回の桜一人にメインボーカルに残り4人のハモリという形なのは陽菜からしたら面白くは無いだろう。

 しかし、それは赤咲も当然予想していたので、対処もしっかりと考えていた。


「悪いな陽菜。でもダンスのフォーメーションでは陽菜がセンターだからそれで今回は納得してくれないか。次の曲は陽菜のパートも多くするからさ」

「そう……まあそれなら今回だけは譲ってあげてもいいけど」

「ああ。そうしてくれると助かる」


 陽菜は目立つ事が大好きなので、こういう落としどころを見つけることで上手く解決する。

 もちろん、次の新曲で陽菜のパートを増やすというのは、赤咲にとっては嘘ではない。

 今回は桜が作詞を行った事と、歌の内容と桜の声質の親和性が極めて高い事から、桜一人のメインボーカルという形を取ってはいるが、陽菜の高い歌唱力と音楽センスは赤咲も高く評価しているのだ。

 赤咲の陽菜に対する評価は、作詞の出来の酷さ程度で失われるものではない。

 しばらくすると、時間になり全員がスタジオへと集まってくる。

 それを確認すると、早速レコーディングとなる。


「じゃあ早速始めるよ。桜、準備はいいか?」

「はい」

 

レコーディングブースの中に入っている桜は、集中した面持ちでマイクの前に立つ。

 音楽がヘッドフォンから流れ出すのを感じ取ると、桜は歌い始める。


「夏のような 恋をしたよ」


歌の出来は前回の時よりもノビノビと歌っているようだった。


―やっぱり思ったとおりだ。桜とこの歌は相性がいい―


桜の歌声に赤咲はとても感動している。聞き惚れているといっても、あながち間違いとはいえないだろう。

それだけ今回の桜の歌は素晴らしかった。

 桜はそのまま最後まで歌い終わるとヘッドフォンを外して、コントロールルームに控えている赤咲に視線を向ける。


「どうですか?」

「あっああ、凄くよかったよ。一発OKだ。前よりもさらによくなってる。最高だよ」

「そう。良かった」


 赤咲のOKサインに緊張の糸が解けたのは、満面の笑顔で桜はブースから出て行く。


「じゃあ次は……陽菜いってくれ」

「ええ。最高をハモリを見せてあげるわ」

「ああ、期待してるぜ」


 赤咲が勢い良く送り出すと、陽菜は意気揚々とブースへと向かう。

 そしてそれと入れ違いに、桜がコントロールルームへと入る。


「はふー! 桜凄く良いデス。ワタシも歌うの楽しみデスよ」

「ミリアちゃんありがとう。ミリアちゃんの歌も期待してるよ」


 ミリアのテンションの高い賞賛に桜も笑顔で返す。


「はふー! 期待サレマシタデス」

「ミリアさん、あまりはしゃいでないで歌詞の確認をした方がいいですよ」


 ミリアがはしゃいでいると、杏が注意を促す。


―はは、こういうときは、杏はお姉さんだな―


赤咲も自然と笑顔がこぼれる。

 しかし、ブースの方で陽菜のスタンバイが出来たのを確認すると、赤咲も表情をすぐに真剣な顔に戻す。


「準備はいいか?」

「当たり前でしょ、音楽お願いね」

「分かった。じゃあ流すよ。……はい」


 音楽が流れると陽菜も歌い始める。

 陽菜は先ほど録音した桜の声に上手く重ねるように歌っていく。陽菜のレベルの高さには、赤咲も何度も助けられているが、今回も期待は裏切らなかった。

 その後も、ミリア、恭子、杏と順番はレコーディングを行っていき、その日は順調にレコーディングを終了する。


「じゃあこれで終了だけど、プロモーションビデオの撮影は来月だから。詳しい日付けは後でマネージャーから連絡が来ると思うけど、絶対に忘れるなよ」


赤咲が諸注意の再確認を行い、その日は解散となる。

 もう時間はかなり遅い時間になっていたのだ。


―すっかり遅くなっちゃったな。今日はもう帰るか―


この時間では、アート創作に勤しもうにも、恐らく題材となる人間の確保は期待薄だった。赤咲もこの日は、久しぶりにまっすぐに家へと帰り、眠りに就くのだった。


更新です。

次回からはまた新たなエピソードです。

新キャラも出る予定です。

お楽しみに

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