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キリングアート  作者: カルラ
10/22

第三話 赤咲と食人鬼の始めての邂逅と更なるアートの創造  その2

翌日。

赤咲が通う高校の教室では、いつもどおり生徒達の騒がしい喧騒が響いていた。

 その中で赤咲は窓の外の景色を見つめながら、物思いに耽っている。


―昨日の男。水原狂一朗か。面白い男だったな。……今日は全く新しい試みに挑戦するのもいいかもしれない。そうだな。今日はいいアートが作れそうだ―


上機嫌に、今日の予定について考える。

昨日の水原との一件は、赤咲の芸術センス訴えかけるものがあったのだ。


「なあ斬耶。昨日のニュース見たか?」

「ん? ああ見たよ。でも、何のニュース?」


と、突然背後からの声に、反射的に答える赤咲。

声の主は、赤咲の友人の大野である。


「何のって、昨日都内で人が動物に喰われたってさ。ライオンとかだと思うけど、まだ全然見つかって無いんだって。怖いよな」

「ああそれか。確かに怖いよな」


 その犯人とは昨日会って話もしている。

 しかし当然それは、トップシークレットであるので赤咲は適当な相槌を打つ。


「でも不思議だよな。動物園からライオンとかが逃げ出したって話は全然聞いてないし……」


大野は仕切りに首を捻る。


「どうせ、どこかの動物園が隠蔽でもしているのでしょう」


そこで綾瀬川が話に入る。


「昨日のニュースで、家の者も大騒ぎでしたわ。まあわたくしの家でしたら、セキュリティーがしっかりしているので、何の心配もありませんけど。ですがしっかりとしてほしいですわよね。危険動物を扱うという責任感に欠けていますわ」


 綾瀬川は非常に立腹している。

 住んでいる町に猛獣が徘徊していると考えれば、その反応も当然だ。


「そっか。でもまあ、セキュリティが万全なら綾瀬川は心配ないな。安心したよ」

「はっ、赤咲……今なんとおっしゃったんですの?」


 赤咲の言葉に反応し、突然綾瀬川の顔が赤くなっている。


「いや、綾瀬川が杞憂なく身心共に、平穏無事ならそれに越した事は無いって思っただけさ」

「なっ!」


赤咲の言葉にますます顔を赤くする綾瀬川。

 しかし、当の赤咲は全く自身の発言に頓着していない。


「おい斬耶。いつの間に綾瀬川とデキてたんだ」


 そこで、当然のように大野が赤咲をからかう。

 またクラスの男子の視線も、自然と赤咲に集中する。


「えっ?……ああ違うよ。ただ綾瀬川は今度、ピアノのコンクールがあるだろ。だからそれに影響が無いならそれに越した事は無いってだけさ。音楽には、その人の心が表れるっていうだろ。綾瀬川の高貴で綺麗な音色に影響がしたら大変だしさ」


 しかし、赤咲は視線を完全にスルーして、大野には率直に思ったことを口にした。


「それだけか?」


 その言葉に大野はつまらなそうな態度を見せる。


「それだけって、それ以上何があるんだ?」


 大野の追及には、赤咲は首をかしげながらの応答を返す。

 だが、すると綾瀬川の赤く染まっていた顔は、次第に元に戻ってしまう。


「そっ、そうですの。ではわたくしはこれで」

「ああ、またな」

「ふんっ」


綾瀬川は気分を害したといわんばかりに、その場から離れ自分の席へと戻る。

周囲も既に赤咲には関心がなくなり、その場には赤咲と大野のみが残る。


「ん? なあ隆。綾瀬川、何か苛立ってたみたいだけど、どうしたんだろ?」

「お前なあ、少しは綾瀬川の……いや、これは俺が言う事じゃねえや」

「えっ?いや、言う事じゃねえって、最後まで言えよ。気になるじゃ……」


赤咲が大野に追及しようとするが、そこでタイミングよく始業を告げるチャイムが鳴る。


「…………もういいや。何となくだけど、これはお前に聞くことじゃない気もするし」


 赤咲は気の抜けたチャイムの音に、気がそがれたように、落ち着いて自分の席へと座る。

 その後、担任教師によるホームルームから始まる、何の変哲も無い普通の一日が始まるのだった。


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