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八話《ホテルでの変人》

観覧車から降りると、すっかり日も暮れ、もう夜になっていた。


「観覧車に乗っただけなのにもう夜か……」

「移動に時間……かかっちゃいましたからね」


うん、と僕は頷き、「そろそろ……どこかに移動しようか」と提案した。


「とにかく泊まる所が必要ですね」

「泊まる所……か。良かったら僕の家に来る?」

「お兄様の家……ですか。はい! 是非行きます」


と、琴鮫が言ったので、僕たちは再び電車に乗り、僕の家へと向かった。


けれど、なんということだろうか……。

家に着くと、僕の家が壊れていたのである。


「ここが、お兄様の家ですか……?」

「……うん」


なんで壊れているんだろうか?

昨日に何かあって壊れたんだったかな?

うーん、思い出せない。

昨日で覚えてることは…………裸と靴下?

なんだ? 裸と靴下って……想像しただけで嬉しくなるような組み合わせだけど、全く覚えがないぞ?


「僕は覚えてないんだけど、何故か壊れているみたいだから、近くのホテルにでも行こうか」

「え、いや、だからぼくは男ですよ!」

「普通のホテルだよ? 琴鮫、何を勘違いしているんだい?」

「ふぇっ⁉︎ うぅ……」


恥ずかしがっている琴鮫可愛い。

おっと、いけない。

琴鮫は親友、琴鮫は親友。

決して邪な感情なんて抱かない。


その後、琴鮫を慰めて、僕たちはホテルへと向かった。


「あぁ……疲れたね。琴鮫」

「うん、遊園地で遊んだのは楽しかったけど、ぼくたち……一回死んでますからね」

「うん……」


ベッドの上で二人、寝転がりながら、僕たちはそんな風に会話をしていた。


「なぁ、琴鮫。明日はある人のところへと行くから付いてきてほしいんだけど良いかな?」

「え、うん。いいよ。どんな人?」

「少し変わった人」

「ふーん……」


まぁ僕の友達、というか知り合いに、変わってない人なんて、一人たりとも存在していないのだが……。

そんなことを思っていると、僕のポケットから振動音が聞こえた。

電話……か。誰からだろう?

一応出てみる。


「おはよう」

「うん、おはよう。っておはよう⁉︎ 今、夜よ? というかもしもしじゃないの?」


このツッコミ……昨日聞いた気がするな。

誰だっけ?


「うーん、それじゃあ……もしもし?」

「貴方、今何をしているの? 朝からずっといないじゃない!」

「一応……今はホテルにいるけど」

「ホテル⁉︎ なんでそんなところにいるのよ。それよりもはやくきて! 私も、秋宮さんもピンチなの!」

「秋宮君が……? 君、もしかして秋宮君の彼女かい?」

「違うわよ! とにかく、はやく助けっ……」


プープープーっと、音が鳴り、電話が切れた。

なんだったんだ? 秋宮君がピンチと言うならば助けたいところだが……うーん、僕も今、結構大変なことに巻き込まれてるしなぁ。

秋宮君か琴鮫…………僕は琴鮫をとるぜ!


その電話から、十数分経った。


「そういえば……琴鮫。君はなんで僕に助けを求めたんだい?」

「ぼくが見えるからだよ」

「見えるから? それってどういう……」


意味なんだよ。と言おうとした時だった。

パリンパリンパリンと僕らの部屋の窓ガラスが勢いよく割れていく。

外の風が吹き込み、部屋の中のものがお祭り騒ぎ……。

電気も消え、外から少しだけ光る月の明かりを頼りに、僕は琴鮫の手を急いで握った。

ここから……逃げるしかない。

僕の頭の中にその言葉がよぎった。

僕は琴鮫の手を離さないようにしっかりと、よりしっかりと握り、走り出す。

琴鮫も、今の状況で自分は何も出来ないと察したのか、僕に黙って引っ張られている様子だった。

そして、バタバタと靴も履かずに、僕は部屋の扉を開けた。


「……嘘だろ?」


すると、そこにはブルマだけを履いた筋肉質のおっさんが立っていた。

くっ、どうする? どうすればいい?

そうだ……!

相手は能力者なんだ。なら僕の能力であるコピーに近い何かを使えば一応、能力を一瞬は無効化出来るじゃないか。


「二回も……死んでたまるかよ」


僕は少し口調を乱しつつも、そんな風に言ってニヤリと笑った。

その瞬間、奴は動いた。

急いで右手を突き出す。

ドスンと、右手にすごい衝撃が走った。


「ぐっ……」


少し痛い……。

だが、目の前にいたブルマ野郎は、目の前で尻餅をついていた。

そしてブルマ野郎の顔を見ると、ポカーンと馬鹿みたいに大きく口を開け、目を見開き、「どういうことだ?」と小さな声で呟きながら、自分の手を見ていた。


「お前じゃあ僕には勝てないよ。さあ早く諦めて消えてくれないかな?」

「こ、この……」

「ん?」

「クソガキがぁぁぁぁあ!」


ブルマ野郎のそんな声が聞こえた瞬間……僕の体が地に落ちた。

ど、どうなってやがる……?


「ふん、貴様ごときがこのワシに敵うと思ったか。このガキめが。どんな原理かは知らんが、その右手に気をつければいいだけじゃろうが」


くっそ……!

どうすればいいんだよ……!

あぁ……またこれだ。

死ぬ感覚……。

また、元に戻るのだろうか?

戻るなら、次は、次こそは、こいつを…………倒す。

そう誓って、僕は二度目の死を迎えた。




 気づくと、また目の前にはコーヒーがあり、喫茶店だった。

ループ……というやつなのだろうか?

あいつを倒すまでは戻れないということか?

はぁ……こうなったらやっぱり本格的にあの人に頼るしかないか。

僕が出会ってきた変人の中でも屈指の変人に……。


「お兄様……早く逃げましょう」


横には、当然のように琴鮫がいた。


「琴鮫も……また殺されたのか?」

「えぇ……」


くっ……また琴鮫を守れなかった。

ループしてればいいっていうもんじゃないだろ!

今度は、本当に今度こそは、琴鮫を守る!


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