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四話《語り尽くす変人》

「それで……俺の家に来たと?」


秋宮君はそう言ってはぁ……とため息をついた。


数分前、僕は、何故か家が壊れていたのでえーっと……神中だっけか? と秋宮君の家へと向かった。

そこで、秋宮君に僕と神中はとてもとても、丁寧にその時のことを説明した。

そして、今に至る。


「うん、家がぶっ壊れたんだし仕方がないよね」

「いや、仕方がないのはわかってるんだ。でもな。友達であるお前はまだしも、お前はまだしもだ……けど、この女はなんだ?」

「女性になんだって言うのはもの扱いみたいで失礼だと僕は思うな。秋宮君、そういうところは気をつけようよ」

「お前は一旦黙ろう。話の腰を折るな!」


話に腰なんてないだろ。

やっぱり秋宮君って頭悪いなぁ……。


「腰と言えば、僕はこしあんのほうが好きなんだけど、秋宮君はどっちが好きなのかな?」

「お前、黙れって言ったのが聞こえなかったのか?」

「……? 聞こえたけど、それがどうかしたのかい?」

「聞こえたんなら黙れよ!」

「それよりも、いくら友達だからと言って黙れと命令系で言うのはどうかとおもうんだよ」

「あー、もういい。一階にさっきお前が好きと言っていたこしあんの饅頭があるから食べてこい。俺はその間、この子と話してるから」


うん? 僕は別にこしあんは好きじゃないぞ?


「僕はつぶあん饅頭のほうが好きかな。ここにいるよ」

「なんでさっき言ったことをすぐ否定するんだよ」

「否定? とんでもない。僕は生まれてこのかた否定をしたことがないんだよ」

「わかったからほんの少しでいい。静かにしていてくれ」


なんだ。そんなことくらいなら一言黙れとでも言えば聞いてあげたのに……。


「わかった! 僕は黙ろう。まず何故黙るかについて語っていくと……」

「一人で語ってろ」


言われたので一人で語っておくとしよう。

さて、語りも語り、語り続けてなんと一時間が経った。

後ろを振り向くと、会話が終了したのか、僕のほうを二人はジーっと見ていた。


「会話は終わったのかな?」


僕は秋宮君にそう言って尋ねる。


「んー、まぁそこそこはな。お前が語ってる間に未来へ行って、この人が未来人ということはしっかりと理解した」

「え⁉︎ 未来人だったの?」

「お前、知ってるんじゃなかったのか?」

「うーん、知ってたとしても、そんなつまらないことは忘れちゃうからね」


そう、忘れる。

僕は記憶力がとんでもなく悪いのだ。

実際、基本的に僕が覚えていることは、ある程度の一般常識と十人程度の名前、後は一年前の事……くらいである。


「そろそろ、本題に入らない? 私、そろそろ眠いわよ……」


すると、神……えーっと神中! 神中はそう言った。


「本題……か。僕としては、あの変な風の能力は一体なんだったのか、というところが気になるね。あれはなんだったんだい?」

「え……」

「ん? わからないのかな?」


なんだ? 神中……お前は今から説明してくれる役回りとかではないのか?


「いや、貴方ってまともに話せるのね……」

「君は僕をなんだと思っているんだ……」


僕がまともに話さなかったことなどあっただろうか?

否、ない。

僕は常にまともだ。

なぜなら、僕ほど平凡で普通で無個性の人間はいないからである。


「まあとにかく、あの風はなんだったのかということを説明してくれないかな?」

「わかったわ」


そして、彼女は語り始めた。


「その前に、まずは二百年後の惨状を語らないといけないわね」


惨状? と僕は尋ねる。


「うん……二百年後、この世界は地獄のような世界になるのよ」

「地獄? それは少し大袈裟なんじゃねえか? お前も元気そうじゃねえか」


秋宮君はそう言ってから、コップに入ったお茶をゴクリと飲み干す。

そして、コンっとコップを置いてから「ぷはー」と声をあげ、またキリッとした顔つきになった。


「私が、偶然にも運に恵まれただけなんです。私やその他ほんの少しの人以外は、ほとんどは死んでいて、生き残っても病気だし、飢えている人だらけなんですよ」

「マジかよ……なんでそんなことになってるんだ?」


秋宮君は問いかける。

僕は唾を飲み、話に備える。


「だから、ここで出てくるのが能力者です」

「能力者……。俺は見てないけど、話を聞く限りだと、とんでもなさそうだもんな。そいつらが能力を使って世界を荒らしたってことか」

「はい……」


その後も、神中は語っていった。

表情は暗くなっていき、口調も乱れ、感情的になり、たまに泣きながらも、語っていってくれた。

要約すると、世界は、今増えつつある能力者達によって壊滅させられるらしい。


「あれ……? でもおかしくないかな?」


僕は疑問に感じる……。

記憶力の悪い僕が覚えていたことには自分でもビックリだが、とにかくあることに疑問を感じた。

今の話には完全な矛盾を生じるのだ。


「ん? 何がおかしいのよ」

「いや、君のお母さんとお父さんって……あの風使いに殺されたんだよね?」

「ええ」

「なんで……彼はそんな未来まで生きているんだい?」


そうだ。おかしいのだ。

彼女が生まれてすぐ彼女のお母さんとお父さんが殺されたとしても、約百八十年以上は確実に未来の話なのである。

風使いは見る限り、確かに二十歳前後ではあるけれども、さすがに百八十年生きるかと言われると、それは絶対に無理と断言できるだろう。


「能力者は、能力者を殺すと、寿命が延びるのよ」

「なるほど」


あれ? でも……ということは。


「彼は、かなり人を殺したってことになるけど……そんなに強いのかい?」

「まぁね。能力者を十人は殺しているし……」

「ふーん……」


よく勝てたな、僕。

運が良かったのかもしれない。


「それで……未来がとんでもないのは分かったが、なんでお前は過去に来たんだ?」

「そんなの、過去を変えるために決まってるじゃない」

「それもそうだな」


それで、過去を変えるために自分だけじゃ無理だから秋宮君のところに来ようとした訳か。


「そういえば、神中。なんで君は秋宮君のところへ行こうと思ってたんだい? もしかして……秋宮君も能力者なのかな?」

「えぇ、秋宮さんは全ての能力を使えるのよ」


それは凄い。無敵じゃないか。


「へ?」


すると、秋宮君は疑問に思ったのか首を傾げた。


「どうしたんだい? 秋宮君」

「いや、俺……全ての能力とか使えねえんだけど?」

「はい?」


ん? どういうことなんだ?

もしかして神中のやつ……また間違えたのか?


「俺は……フェニックス、つまり不死鳥の力を持ってるだけなんだ」

「へえ、フェニックスかぁ……」


ってフェニックス⁉︎

俺は神中の方を見て、どういうことだ? と表情で表す。


「…………てへっ?」

「てへっ、じゃないよ……神中。じゃあその本当に全ての能力を使えるやつはどこにいるんだい?」

「ちょっとまって、今調べるから……あー!」

「ん?」

「ガセネタだった」


もう、おっちょこちょいだな。神中は!


「それで、どうするの? このまま秋宮君に任せる? フェニックス……ってのも強そうじゃないか」

「そう……よね。わかったわ!」


そう言ってから神中は秋宮君の方を向く。


「お願いします! 未来のために能力者を倒してください!」

「ごめん、フェニックスの力って言っても……今は少量の炎を出すのと、多少の再生能力しかない。つまり、俺は弱いんだ……」

「へ……」


仕方ないなぁ……そろそろ僕の出番か。


「よし、ならば僕の出番だね」

「貴方は不安よ……」

「さっき倒したじゃないか。風の能力者を」


全く、失礼だね。

僕が本気を出せば能力者の一人や二人余裕なのに……。


「確かにさっきのやつはかなり強いけど、それでも一番弱いのよ?」

「かなり強いのに一番弱いってどういう意味だい? 僕には理解できないんだけど……」

「あー、言葉が足りてなかったわね。ごめんなさい。えーっとじゃあ説明すると、能力者は能力者でも、未来に影響を及ぼす……又は未来まで生きていて今もなお世界を破壊に導いてる能力者の中では、一番彼が弱いってこと」


なるほど……。


「じゃあ良い能力者もいるんだね」

「ええ、一応ね。そうじゃないと全ての能力を使える人になんて頼ろうとは思わないわ」

「君は何か能力は使えないのかい?」

「一応……触ったものの重さをプラスマイナス十キロ変える能力はあるけど」

「微妙だね」


重力を操るくらいの派手さが欲しいところだ。


「それで……悪い能力者は、一体何人いるのかな?」

「六人……よ。本当は七人だったんだけど、貴方が一人倒したからね」

「わかった。そいつらがどこにいるかはわかってるの?」

「ある程度は……」


ならば、決定だ。

そいつら全員、僕が倒す。


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