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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

運が良かったと笑っても

作者: 黒木 聖広

私はある大学に通っています。

私の名前は柿野(かきの) 美香(みか)です。

これは、私が高校1年生の時のお話です。


高校に入学して私はたくさんの友達ができました。趣味の話をしたり、好きなアイドルの話をしたり。楽しい日々を送ることができました。

そんな日々のある9月頃のことです。

A「ねぇみんな、好きな人いるの?」

この一言から好きな人が誰かということを話し始めました。

B「いるよ!クラスの人気者の須藤くんだよ‼︎毎日のようにあの人を眺めていることが好きだぁ〜。ホントだよ‼︎」

C「なにそれおもしろ(笑)私かー、んーちょっと気になってる人はいるかなぁー」

AB「えーー‼︎⁉︎Cちゃん好きな人いるの?だれ、だれ、だれー‼︎‼︎」

C「いや本当に好きってわけでもないしさ。まだ言わないよ。」

A「そっか〜じゃー美香!」

話を振られてしまった。

正直こういう話はあまり好きでなかったりします。なぜなら私にはそのような人がいないからです。

美「え、いや、い、な、い、、、かなぁ〜」

ABC「えー」

美「え」

この時少しくらいは話を合わせたほうが良かったかもしれません。

A「そんなわけないでしょ〜。あんた何かと美人なんだからさ、さっさと好きな人作ってさ、さっさと告りなよ〜」

そんな殺生な。

B「そぅだよそぅだよ‼︎そうだぁ!今から誰かと話してきなよ‼︎‼︎」

え?

C「いやいやいきなりは無理だろう」

そうですそうです。

B「でもやっぱり最初は話さないとわからないよ‼︎‼︎うーんと、うーんと、あ、あの子なんてどう?あのこと話しなよ‼︎そしたら絶対他の子とも話せるよ‼︎」

何か話が勝手に進んでいるようでしたが、一応しばらくは話を合わせようと思いました。

Bちゃんが指をさした先には、一人寂しそうに座っている男子がいました。

C「え、たしかあのひとって、、、」

グループに変な気が流れます。

B「あ、そっか…」

私にもその人の噂は聞いたことがありました。

その人の名前は黒田 雪斗(仮名)色白で目元にクマがあり、容姿はさほど悪くないけれど、身長は低く、猫背なため、少々暗い印象がある人です。

黒田君の噂は『黒田に触ったら不運なことが訪れる』と言ったものでした。

例をあげるとすれば、

担任の先生は黒田君が集めたプリントを受け取る時に触れたらしく、家に帰ったと同時に40度の高熱で倒れたらしいです。原因は不明らしいとの診断で、危険な状態でしたが、熱はだいたい1ヶ月後におさまったそうです。

クラスの委員長、つまり室長は、女子代表という名目で遊び半分で黒田君に触り、放課後、階段を踏み外して、右足を骨折、両手の骨にもヒビが入ったらしいです。確かまだその時は休んでいたはずです。

そんな噂が後を絶ちませんでした。

そのためか黒田君は毎日1人で自分の席に座っていたました。

B「で、でもまぁ、あの子クリアできたら他の子ともカンペキに話せるよ‼︎」

美「た、確かにそうかもしれないけど…」

あんな黒い噂を聞いて話しかけようとする気持ちが沸きませんでした。

C「まぁ…好きな人なんてそう簡単に作るものでもないし、美香は自分のペースで作りなよ。」

美「あ…うん」

A「あ、次移動教室だった‼︎後3分‼︎‼︎急ご‼︎」

私たちと黒田君以外の全員が既に移動していました。

C「じゃ、先いっとくよー」

A「私も一緒に行くよー」

会話する時が一緒というだけで、移動は別々という感じのグループなのです。

B「じゃあ、先行っとくね?」

美「うん」

私は行動が遅く、カバンの中も整理できていないので、準備において私は一番遅かったのです。

(うわぁ後2分だぁ)

室長は休んでいるので行動をうながしてくれる人もいなければ、教室の鍵を閉める人もいない。なので、一番最後の人が鍵を閉めるということになっていました。

(急いで行かないと)

そう思い、急いで準備し、鍵を持って外へ出て扉を閉めようとしました。その時でした。

黒「僕が閉めますよ?」

不意に後ろから声が聞こえた。私はこういうはちょっと苦手だったりします。声にならない声が出ました。

美「ッッッ⁉︎」

黒「そんなに驚かないでください。僕、これでも人間ですから。」

そこにいたのは黒田君でした。

黒「急いだ方がいいですよ?あと1分30秒くらいですから。」

普通に低音、かつ爽やかな、いい声で。

黒「?柿野さん?」

美「あ、はいすみません…。」

私はあの時どんな顔してたんでしょう。多分目は丸くなってたと思います。

黒「鍵貸してください」

美「あ…はい」

鍵を渡そうとしました。その瞬間、あの噂が頭をよぎりました。私の動きが止まったからか、黒田君は悲しそうな顔になり、それでも笑いながら、

黒「僕の手の上に落としてください。」

と、言ってくれました。

この後、なんとか授業に二人とも間に合うことができました。チャイムの数秒前だった気がします。


次の日

私たち4人はいつものように話していました。

A「あ〜○○(俳優)いつ見てもかっこいい〜」

B「確かに!でも私は□□(某アイドル)派だなぁ〜」

A「まぁ確かにそっちもかっこいいけどぉ〜」

B「ねぇCちゃんは?」

C「わたし?うーん私は三次元より二次元派だからよく分からないなぁ。」

B「そういえばこないだトライアングル(少女漫画)

の新刊出てたね!やっぱりレイ(ヒロイン的男子)くんかっこいいなぁ‼︎」

C「だよね!だよね‼︎レイくんは……」

私は話に入れずにいた。Cちゃんの漫画好きはすごくて、本当に語ると止まらない勢いなのです。

C「……だからレイくんはいいんだよねぇ〜」

Cちゃんが語り終えた後、話が急に変わりました。

A「そういえば美香、昨日黒田と一緒に来たけど、なんかあったの?」

あまり触れられたくない部分にストレートに入ってきました。

B「あ、確かに!絶対話したでしょ⁉︎話したよね⁉︎なんか発見あった?どうだった⁉︎」

C「おいおい、あんまり言葉攻めすんなよ」

A「でも気になるんだよなぁ。何かしらはあっただろ?どうだったんだぃ?」

B「さわった?触ったのか⁉︎」

美「えぇと…触ってはないんだけど…」

私は意を決して、自分の思っていることを素直に言いました。


『とてもいい声でした本当に。』


3人とも目を丸くしました。

A「黒田がいい声…?」

B「気持ち悪いんじゃないの?」

C「なん…だと⁉︎」

ですよね。やっぱり疑いますよね。黒田君の噂は本当にひどくて、全てにおいて劣っているというところまで来ていたのです。

A「よし…」

行動力あるAちゃんが言いました。

A「話しかけてみるか」

BC美「エェ‼︎⁉︎」

これには私も驚きました。後になって知ったのですが、実はAちゃん、いわゆる声フェチらしいのです。

この後、昼休みに黒田君に声をかけました。


次の日

A「確かにいい声でした!クラスにあんな逸材がいたとは…クッ‼︎‼︎」

B「意外だったね。というか普通の人だったね‼︎‼︎」

C「最悪あの噂も嘘かもな。」

A「そ、そうかなぁ…」

この時みんなが私を見ていました。雰囲気で察しました。

美「わかったよ。触ればいいんですね。」

A「さすがです大将!」

B「頑張れ〜」

C「いや、さすがにやめた方が…」

Cちゃんはそんなこと言ってても、少し好奇心がある顔です。結局触ることにしました。

最後の授業の後、

美「黒田君。」

黒「はい?」

不意打ちをしました。手のひらで、黒田君の手を触ったことを確認できました。

黒田君はすごく驚いた表情をしていました。

黒「……………‼︎⁉︎」

黒田君は何も言わず、手を振り払い、教室を出て行きました。

(やっぱりやめた方が良かったんだろうな…)

私はこの時、手のひらに変な感覚がありました。例えるなら、手のひらから血液の中へと細長いドロドロした生物が入ってくるような感じです。

美「うぇ…なんか気持ち悪い…」

その瞬間、右腕がきつく締め付けられているような感覚がしました。それは長い舌が私の腕に巻きついているような感じで

『キャァァァアアア‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎』

C「大丈夫か‼︎⁉︎」

A「まずかったか⁉︎」

B「しっかりして‼︎‼︎‼︎⁉︎」

声をかけてくれる友達。でも今の私にとって、それは逆効果だった。

美「来ないで‼︎殺さないで‼︎‼︎」

C「どうした⁉︎」

その時私は幻覚が見えていたのです。友達の目が光り、口には長い犬歯、長い舌、耳は頂点が尖っていて、髪は長い。さらには黒いオーラを放っている。悪魔が3人、私を覗いているようだった。右腕も悲鳴を上げている。

美「あ……ぁ…………」

私は気絶しました。

次に目が覚めた時は病室にいました。主治医によると右腕の骨が2箇所折れていたらしいです。

主「学校へは行くことはできますが、どうしますか?」

あの不思議な現象はもうおさまったようでした。主治医の顔が普通に見えました。

少しホッとしました。

美「行きます。」

私はその夜、腕を固定したまま退院する準備をしました。部屋を見渡すと、棚の上に花瓶がありました。

美「先生、花はどうしたらいいんでしょう。」

花瓶には10輪ほどの青い花がさされていました。

主「そうですね…病院で処分しても構いませんが……どうしますか?」

美「………やっぱり持って帰ります。」

主治医はそれを聞くと、花瓶ごと渡してくれました。しばらくすると、母親が病院前まで迎えに来てくれました。それに乗り、家に帰りました。

母「いきなりでびっくりしたわよ〜。もう一週間以上も休んでたからねぇ。」

美「えっ…」

本当に驚きました。私にとっては一瞬だったのですが…

美「ど、どのくらい?」

おそるおそる聞いてみました。

母「そうねぇ…8日くらいかな。」

8日、人生においてとても貴重な青春が…

などと思いつつ、家に帰り、明日の準備をして寝ました。

次の日

A「ごめんね…美香ちゃん…無責任なこと……」

B「ヒッグ、エグ。ごっめん…ねヒック」

C「……………………」

私を見た瞬間、3人とも泣き出しました。別に泣かなくてもいいのに。

美「大丈夫よ。泣かないで‼︎」

3人とも少しずつ泣き止んではいましたが、目は真っ赤でまぶたが腫れていたので、結構反省していることが分かった。

こういう場合、どうすればいいかよくわからないのでいろいろと困りました。

この日の放課後、私とAちゃん、Bちゃん、Cちゃんの4人でマックへ行き、私が休んでいた分の授業内容を教えてもらいながら、いつもの仲を取り戻していきました。

C「…で、だからここの公式を使って……」

A「そこちょっと計算ミスってるかな。」

B「パクパクパク  ポテト.....オイシイ........」

美「な、なるほどぉ‼︎」

成績的にはCちゃん トップ10、Aちゃん 10位代、私 30位代、Bちゃん………3桁。

ということで、一気に約一週間を取り戻すことができました。

C「よしできた‼︎‼︎」

美「いやぁ長かった‼︎」

A「夕食どうするよ。今日もどうせ外食だろ?」

美「まぁ…そうだね。」

私の家庭はシングルマザーという形なので、母親は仕事をしていることがほとんどで、一週間に1回帰ってくるかというような忙しさ。それに加え、ご飯の作り置きも特にないので、私は基本、外食でした。

B「私はファミマがいいです。」

A「ファミレスな。ファミマはコンビニな」

C「じゃあ、あそことかかな?」

Cちゃんが指をさした先には、反対車線側にある、ある有名チェーン店だった。

美「行こっ‼︎」

私たちはマックを出て、反対側に行くために横断歩道を探しました。でもまぁ、大体はわかってましたけど。

A「あとちょいだよなぁ…」

その時でした。私がふと反対車線側を見るとそこには、

美「黒田……君?」

C「えっ?」

黒田君はこっちを見ていました。でもその視線は私たちではなく……

美「ま……さか…」

私は走りました。

3人をおいて。横断歩道は信号の点滅中に渡りきり、急いで黒田君の元へと向かいました。

美「黒田君‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

必死に叫ぶと、黒田君はこっちを向きました。

黒「あぁ、柿野さん。」

相変わらずの暗い雰囲気で、季節的にはまだ早い長い服装でした。

黒「どうしたんですか?そんな怖い顔をして」

美「何を…しようと…しているの?」

黒「何って、普通に散歩してるだけですよ?」

美「違うでしょ⁉︎」

平然をよそおう黒田君。でも絶対に嘘だと思いました。だって、あの時の視線、あの時の何かを悟ったような表情。あれは明らかに…

美「自殺…しようと…してるんでしょ?」

AちゃんBちゃんCちゃんが追いついてきました。まだ事態を飲み込めていないようで。

B「ハァ.....ハァ.....何かあグムグ‼︎⁉︎」

ただならぬ雰囲気を感じたのか、Bちゃんの発言をCちゃんが止めました。

黒「何が自殺ですか。そんな当てずっぽうな発言、止めたほうがいいですよ?」

微かに笑いながら言う。でも、

美「ただ散歩してるだけの人がなんで車道ばっか見てるんですか?なんであんな悲しそうな表情してたんですか‼︎⁉︎」

私はただ思っていることをそのまま言った。

黒「散歩がただ歩くだけだなんて思わないでください」

散歩において、あんな長い時間車道を見るのはおかしい。

美「なんで黒い服着てるんですか?」

季節的にもまだ早い長袖長ズボン。夜もまだ蒸し暑いので、寒いからなんて言わせない。

さらに色は黒、夕闇に染まるために決まっている。

この時私は思っていたことを全部吐き出してしまいした。早く次を言わなければ、逆に論破される可能性が高い。早く次を…次を…

黒「はぁーー---」

黒田君のため息が突然聞こえました。その後、小さな声で

黒「何でこういう人ってこういう時の勘が当たるんだろう…」

と、言っていました。

黒「言い訳を言おうと思えばいくらでも言えるんですが…ここまでくると面倒ですねぇ…」

美「えっ…」

黒田君はうつむいた顔を再び私に向けて

黒「確かに自殺するつもりでしたよ。」

ようやく認めさせることができました。

美「どうして?」

黒「決まっているでしょう。僕に触れた人は不運になる。こんな特殊な体は死んだ方がこの世のためなんですよ。」

美「だとしても黒田君は人間でしょ?」

黒「ここまでくるともう人間ではない‼︎」

黒田君は今までで聞いたことのないような声で叫んできました。

黒「僕はもう言うなれば死神に近い存在です。僕は……人を苦しめるために生まれたわけではない。殺しに生まれてきたわけではない。なのになんだこの能力は。普通に生きたいこの僕が、僕の周りの人が、なんで…………なんで……………こんな…………」

黒田君の目から一筋の涙が流れました。

美「だからって黒田君が死ぬことないじゃない‼︎‼︎なんでわざわざ死ぬ必要があるの?なんで黒田君だけが苦しむ必要があるの?」

黒田君は涙をぬぐい、いつもの黒田君の雰囲気が戻ってきました。

黒「僕は小さい頃から一人なんです。児童養護施設に育てられ続け、小中学校では友達を作らず、親友ができたとしても僕に触って僕を怖がる。これの繰り返しです。」

黒田君の口は止まりません。

黒「さらに児童養護施設は閉鎖され、結局一人暮らしになって。高校に行った所でみんな僕をきみ悪がる。どこにも悲しむ人がいない。どちらかといえば僕が死んだほうが世の中にとってもメリットしかないんですよ。」

死を恐れていないような表情をしている。

美「そんなこと」

黒「もう逝きますよ」

美「………えっ…」

黒田君は再び道路の方を向きました。そしてガードレールを乗り越え、一車線の道路の真ん中に仁王立ちをしました。遠くから何台もの車が見えます。

美「何してるの⁉︎早く戻ってきて‼︎‼︎‼︎」

必死に呼びかけますがこっちを向きません。

黒「…僕は産まれた時から、何かしら霊的な能力を持っていました。それがこの相手を不幸にする能力。おかげで自分自身も不幸になりましたよ。」

美「そんなのどうでもいいから戻ってきて‼︎」

どうして?どうしてこっちを見てくれないの?早く、早く戻ってきて欲しかった。

AちゃんBちゃんCちゃんも叫びます。

A「おい馬鹿‼︎何やってんだよ‼︎‼︎」

B「戻って‼︎‼︎戻って‼︎‼︎‼︎戻って‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

C「何が死ぬなんだ‼︎そんなことやっても意味ないのよ‼︎‼︎‼︎‼︎」

どうしても振り向いてくれません。

トラックがすぐそこまで迫っていました。

(こ、こうなったら…)

私は意を決しました。

私もガードレールを乗り越えます。

A「何やってんだよ!あぶねぇからやめろ‼︎」

Aちゃんが私の行動に気づき、私の袖を掴みました。

美「そんなこと言ってられないよ‼︎クラスメートだよ‼︎⁉︎早く行かないと‼︎」

A「っっ‼︎‼︎⁉︎」

Aちゃんの手を振り払います。トラックは、もうすぐそこでした。

美「間に合えぇぇぇ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

黒「っっっっっっ‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎⁇」

私は黒田君を突き飛ばし私も引かれそうになりながらも、ギリギリの所でかわしました。

道路には膝から落ちます。

美「一っ‼︎‼︎」

ひざを擦り剥きました。血がちょっと出ました。でも黒田君を救うことができました。

美「は…はは……ははは………」

黒田君はちゃんと目の前で息をしています。黒田君は生きています。

(やった…‼︎‼︎)

達成感の喜びが喉の奥から出てきそうでした。

恐怖と興奮で頭がおかしくなりそうでした。

美「一体…何が不幸なんですか。あなたは今生きています。運が尽きていたわけではなかったんです‼︎‼︎運はまだあった……運がとても良かったんです‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

その瞬間、笑いがこみ上げてきました。喜びが全身を取り巻きます。

黒「……………」

黒田君は黙っていました。

美「?どうかしたの?」

助かったのがそんなに嫌だったのでしょうか?それとも他に何かが…

黒「…僕の能力は、直接肌と肌、つまり手と手が触れる必要があるのであなたが今から不幸なことが起こることはありません。」

なんということでしょうか。これは、最高の終わり方ができたのではないかと思いました。

黒「でも…………」

黒田君は笑いながら、悲しそうな顔で、

黒「やっぱり、僕が不幸であることに変わりはないんですね。」

美「えっ…?」

私は何が何だかわかりませんでした。

黒「たとえ、運が良かったと笑っても…」

美「ど、どういう」

黒「今までありがとうございました。」

その瞬間、私のお腹に強い衝撃が走りました。初めは何が何だかわかりませんでしたが、黒田君が蹴ったという事が分かりました。

黒「あなたの無事が確認できて良かったです」

そして消えるような声で



「さようなら、お元気で。」


黒田君が突然膝から崩れ落ちました。

私には何が起こったのか理解できませんでした。さらには音が聞こえます。

美「なんの音?」

すると目の前にいたはずの黒田君が宙を舞いました。無灯火の自動車の仕業でした。

黒田君は地に落ちて、頭から赤黒い液体がどんどん出てきました。

いろいろなことがありすぎてあまり状況が読めなかったのですが、ただ一つ分かること、


黒田君が死んだ


「キャァァアアア‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎‼︎‼︎」

薄暗い国道に、少女達の悲鳴とサイレンが鳴り響いきました。私が運が良かったと笑ったのも、ほんの少しの間だけでした。




その後聞いた話によると、黒田君は小さい頃から不治の病にかかっていたらしく、余命が残り少しだと宣告されていたそうです。黒田君はおそらく、自分の死期を悟ったのかもしれません。


そんな私たちも今は20歳、立派な大学生となりました。

黒田君の出来事は私の人生を大きく変えました。私は将来、研究者になって不治の病をこの世からなくすことを夢見ています。

黒田君の御墓参りは毎年一度、命日にはちゃんと行くようにしています。あの世で楽しく暮らせますように。

AちゃんBちゃんCちゃんとは今でも仲良しです。私は毎日を楽しく過ごしています。

黒田君との出会いは私にとっては運命的な出会いでした。黒田君、本当にありがとうございました。


長くなりましたが、今日は私の話を聞いてくださり、ありがとうございます。これで私の『運命を変えた出会い』の話を終わります。




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