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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第一章 始
8/81

2-2 裏切り

 爆心地に二人が着くとそこには隕石でも落ちたかのような巨大なクレーターが出来ていた。

 辺りの木々はなぎ倒され、その衝撃がかなり大規模だったことを物語っている。


「もしもここにリアンがいたら……ねぇジャン、リアンの場所は?」

「もう少し先だ……現在地が分かるってことはまだ死んじゃいねぇはずだ」


 二人はクレーターを横切る形で森の先に進む。


「もう少しだ!」


 ジャンは相変わらずリアンに話かけているがアーニャは疑問には思うことがあった。


「ねぇジャン、どうしてリアンは通信を返してこないのかしら?」 

「そんなのリアンが今会話できる状況じゃねえからに決まってんだろ!」

「本当にそうかしら……」


 この時アーニャは妙な違和感を感じていた。

 リアンはチームのリーダーとしてここに来る前も色々な事をアーニャ達に教えてくれ、実際アーニャ達が知るこのゲームの情報の半分ほどがリアンに教えてもらったことだった。

 アーニャはリアンのことは人間的にはあまり好きにはなれなかったが、信用していないわけではなかったし、ジャンとオリビアに関してもリーダーとしては信頼していたようにみえた。


(何か胸騒ぎがするわね……)


「……リアン!? 良かった! 無事かリアン!? 分かった! すぐ行くからそこで待ってろ!」


 どうやらリアンに通信が繋がったらしい。


「どうやら強力な能力者に襲われて重症らしい、治療の準備をしといてくれ!」

「わかったわ」


 そう返事をするとアーニャは走りながら右手を別空間に繋げ、そこから医療セットと拳銃を2丁、いくつかの弾倉を取り出す。

 取り出した拳銃の一つと弾倉をジャンに渡し、もう一つの拳銃は自分の腰にさす。


「サンキューアーニャちゃん」

「どういたしまして」


 しばらく走るとジャンはリアンを見つけ、アーニャにあそこだと言って指をさした。

 アーニャがジャンの指をさした方向を見ると木により掛かかっている人影が見える。


「よかった! リアン無事だったん──」


 ジャンは思わず言葉を途切らせた。

 それは木により掛かるリアンの姿があまりにも変わり果てたものになっていたからである。


 体は血塗れで、血のせいでどこを怪我しているのかさえ見分けがつかない。

 そしてなにより二人を絶句させたのは顔が無くなっていたことである。

 顔が無くなるとは文字通り、皮膚が消え、顔の血管がむき出しになっているということ。

 かろうじで息はしているようだったが、その姿はどう見ても手遅れなのは確かだった。


「ジャン……これじゃあ──」

「くそっ!!! 何もここまでしなくたって!!!」


 リアンは助からない、高位の回復系能力者であるオリビアがいたとしてもこれは無理であろうとアーニャは判断した。


 リアンは他人の能力の力を大幅上げれる能力を持っていた。

 能力自体は戦闘向きではないが、チーム戦ではかなりの優位に立てる能力だ。

 例えばリアンの力を使えばアーニャの能力も別空間から物を出し入れできるだけでなく、生物すらも別空間に飛ばすことができる。


 アーニャ達のチームは全員あまり戦闘には向いていない能力であったため、リアンの能力で自分たちの能力を底上げし、リアンを守りながら戦い抜くという作戦であったがそれはもうできないであろう。


 もちろんアーニャ達は能力が戦闘向きではない分訓練を重ね、体術でも充分人を殺傷できるだけの力は得たが、高位の能力者相手では体術などまるで意味がない。


 アーニャがこの先の心配をしている間にジャンはなんとかリアンの傷の処置をする。


「くそっ!! 血が止まらねぇ……すまねぇリアン……俺がもっと早く着ていれば……」


 ジャンという男は仲間の死に涙を流せる人間らしい。

 アーニャは素直に羨ましいと思った。

 リアンが死んで自分が真っ先に考えたのはこの先どう戦い抜くかということだったのだから。


「ジャン、もう行きましょう、リアンを襲った敵がまだ近くにいるかもしれないわ」 

「……」

「ジャン……?」


 ジャンはリアンを見ながら何かを考えているようだった。


「ジャン、もう無理よ。早くここから離れましょう」


 アーニャの言葉に全く動ことしないジャン。

 それを見て無理矢理にでもジャンを連れて行こうとしたアーニャだったが、あることに気づいた。


(よく考えれば心臓だけは回収するべきかもね……)


 そうアーニャは思いジャンに話しかけようを思った時ジャンが口を開いた。


「まずい、罠だ……」


「え?」


 一瞬なんのことかとアーニャは思ったがすぐにさっきの違和感を思い出した。

 よく考えて見ればリアンはこんな状態でどうやってジャンと話していたのだろうかと。


「離れろアーニャちゃん!!!」


 ジャンはアーニャを抱えるようにリアンの死体から飛びのいた。

 それとほぼ同時にリアンが寄りかかっていた木の上から人の体ほどもある火の玉が二人に向かって降り注ぐ。

 火の玉はそのままリアンの身体を燃やし尽くし、その体を心臓へと変える。


「おやおや、おしいですねー」

「!?」


 その声に反応して銃を構えるアーニャとジャン。

 声の主は木の上から地面に飛び降りると銃口を構えた二人に臆した様子もなく話しかけた。


「それにしてもひどいじゃないですか、大事な仲間にむかってそんなものを向けるなんて」

「やっぱり生きてたか……」


 細身で丸眼鏡をかけた男。

 アーニャのチームのリーダーであり先程死んだはずの男。

 その正体はリアン・メンゲレであった。


「当たり前ですよ、この僕がそんな惨めな死に方するわけないじゃないですか」

「そいつは一体誰だ?」

「あぁ、それはたまたま近くにいた他の参加者ですよ」

「なぜこんなことを……?」

「おや? 頭のキレるジャン君ならそろそろ気づいてもいいんじゃないですかね?」

「……そういうことか」

 

 何かを理解したジャンが歯噛みする。


「ねぇジャン、これはどういうこと……?」

「ハメられたんだよ、最初からな。俺の能力は相手の現在地を把握できるが立体的には捉える事ができないのは知ってるよな? だからリアンは死体の頭上の木の上に身を隠して自分が死んだように見せかけたんだ」

「どうしてそんなこと?」

「さぁな……まぁ裏切ろうとしてる理由なら大体分かるがな」


 そう言ってリアンを睨みつけるジャン。


「さすがジャン君正解です。まぁ別に大した理由があってこんなことしたわけじゃないんですよ? 強いて言えば僕が死んで君たちがどんな反応するのか見てみたかったっていうのが正解ですかね。いやぁ実際ジャン君には泣かされましたよ。それに比べアーニャ君は随分と冷たいんですね」

「つまんねぇ話はもうその辺でいい……それよりお前の新しい仲間も近くにいるんだろ」

「やはり気づいてました? 仕方ないですね。ファフニール君もう出てきてもいいですよ」


 その言葉と同時にリアンと同様に一人の少年が降りてきた。

 見た目はどう見ても10歳前後くらいだろう。

 ファフニールと呼ばれるどこにでもいるような幼い少年はアーニャ達を一度見ると隣のリアンに話しかけた。


「ねぇリアン、今度はこの人達を焼けばいいの?」

「そうですね、もう少しゆっくり話をするつもりでしたけどもう興味もなくなってきました。焼き払ってしまいなさい」

「はーい」


 少年は無表情のまま口を大きく開いた。

 その口から炎が漏れ始め、その炎は口先で球体を形作っていく。

 それは先ほど死体を焼き払った火の玉だった。

 ある程度の大きさになるとその火の玉は真っ直ぐ目の前の敵に放たれる。


「アーニャちゃん!!!」


 ジャンの呼びかけと同時にアーニャは異空間からこのゲームのために用意した縦横5メートルの鋼鉄を目の前に転送した。

 火の球は目の前に突如現れた鋼鉄の壁に直撃し、辺りに炎をまき散らし砕け散る。


「んー、やはり便利ですねぇ、アーニャ君の能力は」


 間一髪敵の攻撃の防いだ二人の行動は決まっていた。


「早く逃げましょう!」

「ああ! 俺らじゃどうにも敵いそうにねぇ!!!」


 ジャンとアーニャは一目散にリアン達とは逆方向に全力で走りだした。


 森の中は走りやすいというわけではないが、それは向こうも同じはず。

 リアンの身体能力はそこまで高くはなく、ファフニールと呼ばれる少年はまだ子供で能力はともかく身体能力もそこまで脅威があるとは思えない。

 このまま走れば充分逃げきれる。

 アーニャとジャンはお互いそう判断して後ろを振り返ることなく真っ直ぐただ走った。



 ◇



 二人の体力が限界を向かえ始めた頃、ジャンは自身の能力でリアン達を巻いたのを確認して走るのを止めた。


「もう……大丈夫……だ……」


 その言葉に安心してアーニャも足を止める。


「危なかったわ……」


 二人はそれから少し歩いたところにある岩山に小さな洞窟を見つけ、そこに一旦身を隠すことにした。


 アーニャは小岩に背中を預け息を整えるとジャンに尋ねた。


「ねぇジャン、さっき言ってたリアンが裏切った理由ってなんなの?」


 その問いかけにジャンはあくまでも予想だがと前置きをして話し始める。


「このゲームを有利に進めるためさ、俺達の能力は全員殺傷能力はほとんどねぇ、リアンの能力を使えばある程度は戦えるがリアンからすればそれなら最初から殺傷能力に特化した奴等と手を組んだ方が早いって話さ」

「ならどうしてリアンは私達を?」

「簡単に心臓を集めれそうな能力者を集めただけさ、つまり殺しやすそうな能力者をな」


 確かに合理的な作戦だとアーニャは素直に思った。


「リアンは俺らとチームを組みつつ他の奴等とも組んでやがった。恐らくそいつらは俺達と違って能力も戦闘向きの奴等だ。最初からリアンは俺達の心臓が目当てだったってわけさ」

「なるほどね。それにしても初っ端からこんな事になるなんて」

「まぁ怖がんなよアーニャちゃん、俺がついてるからよ」

「怖がるんじゃなくてこの先を心配してるのよ私は……」


 ジャンに対して呆れ口調で言うアーニャ。

 しかしそんなアーニャに対してジャンはニヤリと笑った。


「実はよ、この展開を予想してなかったわけじゃねぇんだ」

「……どういうこと?」

「リアンが裏切るかも知れないっつうのは全く無い話じゃないと思ってた。だからこうなっちまった時のために作戦は立ててある」

「作戦……?」


 ジャンは自分が立てていた作戦について話を始めた。

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