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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第三章 悪
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14-1 強襲

【17:50 都市エリア 南西部】


「雅史くんとアーニャ大丈夫だったかな……?」

「きっとあの2人なら平気ッスよ、アーニャさんは強いし雅史さんだってやるときはやる男ッスから」


 睦沢とオリビアは都市エリアにある噴水広場で休憩を取りつつ話をしていた。

 アーニャが撃った信号弾、それを睦沢とオリビアが目撃してから約2時間、2人は雅史とアーニャの心配しつつもメルルとローゼンクロイツの捜索を続行していた。


「そうだよね……あの二人が簡単にやられるわけないよね……」

「そうッスよ、それに本当にやばい敵でもアレックスさんが何とかしてくれるはずッスから」


 睦沢には2人が無事という確かな根拠があるわけではなかった、しかしオリビアを安心させるために笑顔でそう言う。


「確かアレックスさんてA級の能力者だったよね?」

「そうッスよ、A級の中じゃ表の世界にも裏の世界にも一番顔が知れてる人なんじゃないッスかね?」

「そりゃECSの副会長様だもんね」

「それだけじゃないッスよ、オリビアさんは知らないんスか? アレックスさんが能力者達になんて言われてるか?」

「んー、聞いたことあるようなないような」

「処刑人ッスよ」

「随分と物騒だね……そんな風には見えなかったけど」

「自分も驚いたッスよ、もっと怖い人想像してましたから、でも実力もA級の中では最強なんて言われてますからね、同じA級の自分なんかよりもずっと頼りになるッスよ」


 アレックス・レオナード、対能力者機関ECSの副会長にして17人のA級能力者の中でも最強と言われる男。

 能力者の中に彼の事を知らない者はほとんどおらず、彼が今まで粛清してきた能力者は200を超えるという、その事から能力者の中では恐怖と畏怖の念を込めて彼を処刑人と呼ぶ者が多くいる。


「そんなことないって! 亮くんだって頼りになるよ! それに何気に優しいしね」

「あはは、自分が優しいのは可愛い子だけッスよ」

「口がうまいなー、流石俳優さんだね」

「どういたしまして」


 睦沢はその整った顔をわざとらしく笑顔にする。


「ところでさ、どうして休憩するのにこんな見晴らしいい場所選んだの? ここだと敵に見つかりやすくなっちゃうんじゃない?」

「あー、オリビアさん気付いてないんスか? 結構前から自分ら付けられてるんスよ」

「え……?」

「足音からして3人てところッスね、こんなに足音立てて尾行するなんて素人もいいところッスけど」

「ほ、ほんとうなの?」

「ほんとッスよ、これでも昔はジャンに散々しごかれたッスから、この会話聞いてるならそろそろ出てくるんじゃないんスか」


 睦沢は噴水広場を囲む茂みの一つに向け話しかける。


「というわけでバレバレッスよ、コソコソしてないで出てきたらどうッスか?」


 その声に反応するように一人の女が茂みから姿を現した。


「お、もしかして自分のファン……には見えないッスね……」


 姿を現した女は背中に巨大な機関銃を二丁背負い、その虚ろな目を睦沢に向ける。


「睦沢 亮ですね、あなたを殺します」


 女は機械のような口調で喋ると背中にある機関銃を地面に乱暴に落とした。

 ガシャンと音を立てて落ちるその機関銃を睦沢は知っていた。


「ブローニングM2重機関銃……しかも普通より弾倉が多いッスね、あんなもの二丁も背負うってどうなってんスか、二丁で80キロ近くある代物ッスよ……」


 ブローニングM2重機関銃、各国で使用される有名な機関銃であり、主にヘリコプターや戦車などに設置される大型の機関銃である。

 一発で人間の胴体を真っ二つにするその弾を毎分五500百発で撃ち出すその二丁の殺戮兵器は、急に重力を失ったかのようにフワリと地面から独りでに浮かび、2つの銃口を睦沢へと向けた。


(念動力!?)


 機関銃の引き金が独りでに引かれると銃口から耳が避けるような爆音が鳴り、睦沢に向け十二ミリの弾が放たれた。

 固定されていないせいか弾道は安定せず、睦沢の周りに広がるように放たれる。

 木造のベンチを破壊し、噴水に穴を開け、地面を抉るその銃弾は弾倉を空にするまで撃ち続けられた。

 二丁の機関銃は弾倉を空にすると先端から煙を出し、ガシャンと地面へ落下した。


「あのう、やめた方がいいッスよって何回も言ったんスけどあの音じゃ聞こえてなかったッスかね」


 睦沢の前には機関銃から放たれた何百という弾がそこだけ時が止まってしまったかのようにその場で静止していた。


「これはお返しするッス」


 睦沢は自身の念動力で目の前の弾の向きを女に向けると、そのまま機関銃以上の速度で女へ撃ち放った。

 弾は女の体を貫き、その体を文字通り八つ裂きにし、女は声を上げることもなくそのまま心臓へと変わっていく。


「なるべく女の子は殺したくなかったんスけどね……すいませんオリビアさん、大丈夫ですか?」


 そう言って後ろを振り返った睦沢だったがそこにオリビアの姿は無かった。


「あれ……」


 辺りを見渡すと広場の外にあるビルの曲がり角を曲がって姿を消すオリビアを発見した。

 しかしその後ろからはオリビアを追いかけるように別の女が走っている。


「ちょ、オリビアさん!!!」


 必死に叫んだ睦沢だったがオリビアには届かない。

 睦沢はオリビアを追うため走り出した、しかしそこで睦沢を阻むように巨漢の男が現れる。


「ちょっと、そこどいてくれないッスかね、こっちはかなり急ぎなんスけど」

「睦沢 亮だな、ここで死んでもらう」


 先程の女と同様に機械のような喋りをする巨漢の男。


「話しても無駄みたいッスね」


 睦沢は念動力で近くの車を持ち上げるとそのまま巨漢の男に向かい投げつけた。

 勢い良く巨漢の男に当たった車はそのまま爆発を起こし、辺りに部品を飛散させる。


「……しぶといッスね」


 爆発で燃え盛る炎の中から巨漢の男がゆっくり炎を掻き分けるように出てくる。

 その体は銀色に輝き、炎が反射して光っているようにも見える。


「体を金属に変える能力ってところッスかね……」

「ここで死んでもらう」


 男は睦沢に向かって走りだした。

 男が走るたびにアスファルトで固められた地面に亀裂が入る。


「さっきから同じことばっかり気持ち悪いんスよ!」


 睦沢は自分の顔に繰り出される金属の拳をヒョイと避け、その拳に交差させるように自分の拳を男に放った。

 ちょうどボクシングのクロスカウンターのような形で男の顔面を捉えた睦沢は、自分の人差し指と中指をを金属で硬化されていない男の両目にそのまま突き刺した。

 睦沢の指は男の眼球を押し潰すように刺さり、睦沢の指の付け根が男の眼球があったところまで到達すると男は動かなくなり、体は心臓へと変わっていった。


「ったくなんなんスかこいつら……」


 睦沢は男の心臓を回収するとすぐに走りだした。

 オリビアの能力は治癒専門で戦闘には全く使えないといってもいい。

 そんなオリビアは銃で撃たれても金属の拳で殴られても死んでしまう。

 機関銃の弾を受けきるのに集中した時に敵の他の仲間に襲われたであろうオリビアを睦沢は必死に追った。

 もしここでオリビアが殺されたら自分のせいだ、睦沢はそう思いながら噴水広場を飛び出してビルがひしめく都市の中へと入っていった。


(か弱い女の子一人救えない奴が自分の一番大事な人を救えるわけないッスよ……)


 睦沢は思い出していた、元の世界に残してきた世界で一番大事な人のことを──

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