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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第三章 悪
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13-3 前回のゲーム

「前回の優勝者……? このゲームは今回が初めてじゃないってこと?」


 アーニャは今回のゲームが初めて開催されたものだと認識していた。

 それは他の参加者も同じことである。


 今回のゲームが始まる1年前、ある日全世界の能力者の元に現れた天使は神の力にもっとも近しい者を集め、勝利者には神の一人となるか願いを叶えるという条件でゲームの開催を伝えた。

 もちろん最初はほとんどが信じなかったが他の能力者の元にも現れたといえば話は別である。

 能力者達は天使からゲームの情報を聞き出し、能力者間でその情報を共有しあった。

 情報を売る者や奪う者、交渉に使う者もいた。

 結局表立ってその話が世間に流れることはなかったが一部を除いてほとんどの能力者がゲームの存在を信じることとなった。

 ゲームに参加を表明した能力者の数は全部で723人、その中から天使たちは100人を選出しゲームを始めた。

 ここまでがアーニャの知るゲームの概要である。

 つまり以前にもゲームが開催されたという事を知らなかったのである。


「そうだ、このゲームは150年前にも開催されていたんだ、そうだろローゼンクロイツさん」

「そうじゃ、150年前に儂と師匠のとこにも同じことを言う天使が現れおったよ、ただその時は能力などは誰も持ってなかったはずじゃからの、ただの人間同士の殺し合いという話じゃったわ、まぁもっとも師匠も儂も当時はそんなものに興味は無く突っぱねてやったがのう」


「なら前回の優勝者は……」


「何人が前回のゲームで生き残ったのかは分からないが、150年前と言えば僕らとローゼンクロイツさんの認識がズレた時と気持ち悪いくらいに重なる、恐らくそこで生き残った人間が僕らに能力を与え記憶を改竄したんだろう」


「確かに辻褄は合うわね……」


「だから僕と会長とローゼンクロイツさん、そして協力者である天使の一人は今回の作戦を考えたんだ」

「真実を知るためってこと? でもそれじゃあ仮に作戦が成功して神を殺せてもローゼンクロイツの不老不死の目的は達成できないし、真実も分からないままじゃないかしら?」

「儂の目的については心配いらんよ、その協力者の天使は今の神の力を奪ってその座につこうとしておるのじゃ、そして儂らの願いを叶えてくれる」

「なるほどね、それであなたに協力する仲間がいるってわけね」


「そういうこと、この事は事情あって亮くんにだけは伝えたんだけどね、それに僕個人の目的は確かに真実を確かめることなんだけど優先すべきは記憶の改竄と人々の認識を正しく正常に戻すことだと思っているよ、何者かに変えられた偽りの歴史や記憶なんて想像するだけでゾッとする、まるで僕らの世界が誰かに乗っ取られてるみたいじゃないか、だから僕と会長は人類のために作戦を立てた」

「大体分かったわ、つまり話をまとめるとあなた達の作戦は新しい神を誕生させ、人類のために改竄された記憶と認識を元に戻すためってことでいいのね」

「その通りだ」

「なんか随分と壮大な話になってきたわね」

「ハハ、でも手伝ってくれるだろ?」

「まぁそうね、確かに誰かに変えられた世界っていうのも気に食わないし、能力を生んだ原因があるなら私はその原因を確かめたい、能力さえなければ私の両親は死なずに済んだかもしれないしね……」


 両親が殺された理由は分からない、ただアーニャに分かるのはそれを殺した男が冷酷な能力者だったということだけである。

 アーニャはこのことから能力者のことを好きではなかったし、能力者である自分のことも好きではなかった。

 復讐を終えたら能力は一生使わない、そうアーニャは心に決めていた。


「ところでそこの2人は新しい仲間と言っておったが他にも新しく仲間が増えたのか?」

「はい、オリビア・メイスンと睦沢 亮という者達も彼らと一緒に仲間になりました」

「そうかそうか、まぁ7人もいれば天界へは繋げられるか、してその2人はどこにおるのじゃ?」

「2人はメルル・ルルミックを探しに行っています、夜には戻ると思いますが」

「ふむ、それじゃあそれまでそこの2人の能力についてでも研究しとるかのう」


 そう言ってローゼンクロイツは雅史とアーニャを近くに呼ぶとどこに隠し持っていたのか見たこともない奇妙な機材を懐から次々と出し始めた。


「さて、何か新しい発見があるといいが」



 ◇



 ──天界──


「なんか思ったよりもすっごい話になってきたわねー」

「今の話が本当なら僕たちの中に裏切り者がいるってことになりますね……」


 ミカエルとガブリエルはそれぞれ雅史とアーニャを通してアレックスが語った作戦について聞いていた。


「そうねぇ、話通りだとあたしたち天使の中でも序列が上の天使っぽいけど誰かしらね」

「序列が上となると大体限られてきますね、でも神様を殺すなんて考える天使が僕たちの中にいるとは考えられませんが……」

「そうかしら? 神様に不満を持ってる天使なんてたくさんいると思うけどなー」

「ですかね……仮に神様を殺そうなんて思うとしたらアザゼルさんかメタトロンさん辺りでしょうか……」

「あの2人は神様の愚痴結構言うものねー、でも怪しいっていったらアルメン辺りも前に神様に逆らってたしあり得ると思うけど」


 2人は神殺しを考えそうな天使の名前を次々と挙げていく。


「こう考えると結構怪しい人たくさんいますね……」

「あはは、だねー、天使って自分のことしか考えられない奴ばっかだしねぇ」

「あなたがそれを言いますか……でも序列で考えると神の名を持つ4大天使の中というのも考えられますね……」

「あらぁ? それ本気で言ってるの?」

「あくまでも可能性の話ですよ……」

「4大天使って言ったらラファエルとウリエル、それにあたしとあなたの事でしょ? 神様からもっとも信頼されてるあたしたちの中にそんな裏切り者がいるなんてそれこそ考えられないわねー」

「でも他の天使たちに影響力があるのは確かです、というか僕個人としてはあなたこそ一番あり得るんじゃないかとすら思っているんですが……」

「あたし? あははガブっちは想像力豊かだねー、あたしがそんな事するわけないじゃーん」

「……」

「仮に裏切ってもガブっちや天使長の事を敵に回すなんて命がいくつあっても足りないっての、あたしだってそこまで馬鹿じゃないんだゾ!」

「そうですかね、僕はあなたを敵に回すのが一番怖いですよ」

「えー、こんなか弱い乙女を捕まえて怖いだなんてミカエルちゃん超ショックー」


 ぷくーと頬を膨らませるミカエルに対し呆れ半分ですみませんと謝るガブリエル。


「ともかく彼らの作戦が実行されれば分かるでしょう……その時は裏切り者の粛清に出向かないといけなくなりそうですね」

「その時はガブっちがさくっとお願いね」

「はいはい」


 天使の中でも絶大な力を持ち、それぞれが神の名を名乗ることを許された四大天使。

 天使序列第1位ガブリエル、第2位ウリエル、第3位ラファエル、第4位ミカエル、その4大天使なら確かに参加者に協力することも可能なのではないかとガブリエルは思った。

 しかしもう一人ガブリエルには思い当たる節があった。

 ゲームが始まってからの様子が少しおかしな者、4大天使を束ね、全天使の中でもっとも力のある者。


(天使長ならもしかしたら……)


 今回のゲームの行く末が一体どうなってしまうのか、ガブリエルは自分の知らないところで静かに動き出している何かを感じていた。

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