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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第三章 悪
37/81

9-5 ECS副会長

 セオドア・リードベルトは自爆した。

 そして周囲のあらゆる物を焼き尽くしながらその爆発は広がってゆく。

 当然アーニャ達のいる場所もその範囲内であった。


 耳が裂けそうな轟音、そして眩い光、それらを雅史達が感じとった瞬間には爆炎が目の前まで迫っていた。


 『死』


 誰もがそれを思った。

 雅史は覚悟を決め、睦沢は静かに目を伏せ、オリビアは後悔した。

 そして爆炎が4人の体を包み込む。


 絶望的な状況。

 しかし4人はいつまで経っても燃え尽きることはなかった。

 

 4人の前には金髪の男が立ち、爆炎はその男と自分たちだけを避けるように周りを焼き尽くしている。


「な、なにが起こってんだ……」


 やがて炎は収縮し、雅史達の周りだけを綺麗に破壊した。

 そして金髪の男が振り返る。


「なんとか間に合ったみたいだね」


 雅史は目の前の男に見覚えなどなかった。

 

「ふく…………かい……ちょう……?」


 いつの間に目を覚ましたアーニャが雅史の背中の上でそう呟く。


「よかった、アンナくんも無事みたいだね」

「あんた……一体誰だ?」

「君は初めましてだね、僕はアレックス・レオナード、ECSの副会長をしている者だ」

「ECSの副会長……つまりアーニャの……」


 その男を見て雅史は敵ではないとすぐに判断した。

 どう見ても自分たちの窮地を救ってくれたのはこのアレックスという男で間違いないだろうし、ECSの副会長ということはアーニャの仲間でもあるはずだからだ。


「驚きッスね……まさかあんたまでこのゲームに参加してるなんて……」

「ほんとびっくり……」


 どうやら睦沢もオリビアもアレックスの事を知っているようだった。

 それを見て能力者の世界でなら当たり前の事なのだろうと雅史は思った。


「まぁ各々言いたい事はあるだろうけどそれは安全な場所に行ってからにしないかい? ここはまだ危険すぎる」

「それには賛成だけどよ、アーニャはこの通り半分意識が無いし、睦沢だって怪我してる、ここでオリビアに治療してもらってからの方がいいんじゃないか?」

「それは心配には及ばないよ」


 そう言ってアレックスは腰から先端が少し大きめの銃を取り出し、上空へ発泡した。

 銃口からは緑色の煙が空へ真っ直ぐ飛んだ。


「信号弾……?」


 なぜそんな敵に発見されてしまうものをここで撃ったのか雅史は疑問に思ったが、その理由はすぐに分かった。

 雅史の目の前の空間が蜃気楼のように少し歪んだように見えると、突然一人の男が現れた。


「!?」

「ああ、驚かせてすまない、彼は時空間転移の能力者でね、マルコス、五人同時にいけそうか?」

「ギリギリですがなんとか……」

「よし、頼んだぞ」


浅黒い肌をしたマルコスという男は五人を囲むようにチョークのようなもので円を描いた。

 

「最初なので少し気分が悪くなるかもしれませんが我慢してください」


 マルコスがそう言うと円の中が青く光り、マルコスを含めた六人の目の前の景色がぐにゃり歪み、強い衝撃の後、全く別の場所へと転送された。


「ここは……?」


 そこはどこかの建物の中だった。

 少し薄暗く、中はかなり広い。

 

「ここは都市エリアにある大きな倉庫の中です」


 マルコスが突然の事に唖然としている雅史に言う。


「しかし初めてでそんなにしっかり意識を保ってられるとは驚きです」


 雅史が周りを見ると、睦沢もオリビアも地面に向けて嘔吐していた。


「二人が落ち着くまで少し待とうか、とりあえずアンナくんをここへ」


 アレックスが言う場所には倉庫には不釣り合いなパイプベッドが置いてあった。

 雅史はアーニャをベッドまで運ぶと、優しくそのベッドに寝かせた。

 さっきは一瞬目を覚ましたアーニャだったが、その後すぐに気を失ったままのアーニャ。

 雅史はそんなアーニャを心配する。


「ふぅ、もう大丈夫ッス……」

「わたしももう平気……」


 まだ顔色の悪い二人だったが、吐き気は収まったらしい。


「よかった、それじゃああらためて自己紹介といこうか、僕はECS副会長のアレックス・レオナード、そこで寝ているアーニャくんの上司だね、それで君達をここに転送したのがアルテミオ・マルコス、彼は僕達の仲間の一人さ」


 アレックスの自己紹介に続き、雅史と睦沢とオリビアも同じように自己紹介する。


「雅史くんにオリビアくんに亮くんだね、よろしく」

 

 アレックスは小さくお辞儀をする。


「それじゃあさっそく君達の疑問に思っていることから答えようか、なぜ僕が君達を助けたのかを」


 そう言ってアレックスは自らの目的を話し始めた。


「僕がこのゲームに参加している理由はこのゲームを壊すことだ」

「それって……」


 雅史はアレックスと同じ目的を持つ参加者達に覚えがあった。

 リアンに殺されたアランという男、そして一時期行動を共にしたミランダとキース。

 彼らもこのゲームを壊すことが目的であると言っていた。


「雅史くんは何か知っているのかい?」

「いや、それと同じこと言ってる奴等とここで合ったからよ……」

「……名前は?」

「ミランダとキースだ」

「そうか……2人は君達と一緒にいたんだね……」

「2人に会ったのは俺とアーニャだけだけどよ、仲間だったのか?」

「ああ、彼らは僕の仲間だった」


 仲間だった、その言葉を言うアレックスはどこか悲しげに見えた。


「そうか……なら話は早い、僕が君達を助けたのは君達に協力してほしいからなんだ、ミランダ達の話を聞いたなら分かると思うが、僕たちには仲間が必要なんだ」

「確かにそう言ってたけどよ、その肝心の仲間を集める理由ってのは聞いてないぜ」


 確かキースは『神様は万能じゃない』『作戦が成功すればゲームを壊して参加者も無事に元の世界に戻れる』『作戦には仲間がもう少し必要だからゲームに賛同して参加してない人間を探してる』そう言っていた。


「そうだったか、なら少しだけ説明しよう、まず僕たちの作戦に必要な物は二つ、人数とある能力を持つ人物だ、この人数は君達が仲間にさえなってくれれば問題ない」

「まだ仲間になるとは決まってないぜ」


 雅史としてはアレックスの話を全てを信じたわけではない。

 しかしこのアレックスが自分たちを助けたのは事実、それにゲームを壊して元の世界に無事帰れるという話はかなり魅力的だった。


「2人はどうかな?」

「わたしはアーニャと雅史くん次第……かな?」

「え、自分は関係ないんスか……ま、まぁ自分もアーニャさん次第ッスね、ジャンの事も見つけないといけないッスから」

「ジャンのことなら心配しなくても大丈夫そうよ……」


 突然ベッドの上に寝ているアーニャが話に入り込んできた。


「ア、アーニャ!? もう大丈夫なのか!」

「アーニャさん! よかったッス!!!」


「大袈裟ね、もう大丈夫よ、それより副会長、ジャンもあなたが保護しているってことでいいのかしら?」

「あぁその通りだ、だがどうして?」

「どうしてもこうしてもあなたがさっき私たちを助けるのに使ったのはアイギスの盾でしょ? あれは私がジャンに渡したものだからね」

「なるほど……」


 雅史にはなんのことだかさっぱりだったが、どうやら自分たちを守ったのはアーニャがジャンに渡した武器らしい。


「それでジャンはどこにいるの? 会って一発殴りたいのだけど」

「実はジャンくんはかなり深手を負っていてね、奥で安静に寝かせてある、君達を助けた武器っていうのもジャンくんから勝手に拝借させてもらったものなんだ……」

「そう、なら後でいいわ、それで副会長、このゲームを壊すってのは分かったけどどうしてあなたがそんなことを?」

「それはアンナくんが協力してくれるなら教えるさ」

「ならこっちの条件も聞いてくれるかしら?」

「なんだい?」

「十字架を背負う者達の一人、赤い髪の男の情報と、あなたが達が探しているある能力を持つっていう人物についてよ」

「……分かった、教えよう」

「決まりね」


 ミランダ達との交渉と同じようにアーニャは条件を出し、相手がそれを呑む形となった。

 そしてアーニャがアレックスたちに協力することを決めたことにより、結局アーニャ以外の3人もアレックスに協力することになった。


「それじゃあまず僕たちの探している人物について、これは名前を言えば全員顔はすぐ分かるはずだ」

「というと?」


「千里眼のお姫様と呼ばれる少女、メルル・ルルミックだ」

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