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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第三章 悪
35/81

9-3 爆弾狂

(A級……?)


 雅史がセオドアの言葉に驚いたのは当然のことであった。

 睦沢 亮、日本の映画やドラマ、バラエティなどで活躍する人気俳優の一人、その特徴は能力者であること。

 能力と言っても物を遠くから少しだけ動かすようなもので、この世界の能力者達に比べれば大したことではない。

 もちろんこんな化け物じみた能力者達がいるとは知らなかった頃なら睦沢の能力は雅史も単純にすごいと思ってはいたが、ここでの睦沢の能力はアーニャ達ECSの基準でいけばD級かC級あたりだと予想していた。

 しかし今、目の前で巨大な鉄骨をいくつも持ち上げたり、アーニャの仲間であるジャンの友人、そしてセオドアの発言からして睦沢 亮は今まで自分の姿を偽っていたのだろうと確信した。


「あんたと話をする気はないッスよ、それとも話せば自分等見逃してくれるんスか?」

「そいつはてめぇら次第だ、俺もさっさとてめぇらを殺してやりてぇとこなんだがよ、うちのリーダーに使えそうな奴は仲間に誘えって言われててよ、どうだい? てめぇら二人俺達の仲間になるならここで死なずに済むかもしんねぇぜ」


「愚問ね、あなた達の仲間になるなんて死んだほうがマシだわ、変態くん? 別にあなたがあっちの仲間になりたいなら止めないわよ」

「勘弁して下さいよ、自分だってそんなの願い下げッス」


「そうかいそうかい、どうしてこう馬鹿ばっかりなのかねぇ」


「それよりあなたに聞きたいことがあるわ」

「なんだいお嬢ちゃん?」

「あなたの仲間に赤い髪をした男がいるはずよ、そいつがどこにいるのか答えなさい」

「赤い髪……? ああ、レイの野郎の事か、んなもん知るかよ、リーダーと一緒にいんじゃねぇのか」

「レイ……」

「あーもうあれだな、これ以上話してても無駄みてぇだしさっさと殺してやるよ」


 セオドアはそう言うと二人に向けゆっくりと歩きだした。


「どうするんスかアーニャさん、見た感じあいつに物理攻撃は効かないみたいッスけど」

「おそらくセオドアの能力は自分の体に触れたものを爆発させるもの、まともに攻撃しても意味はなさそうね、何かしら弱点をつかないと……」

「弱点ッスか……」

「とりあえず距離を取りながら戦いましょう、その間になんとか隙を見つけるわよ」

「りょーかいッス」


 睦沢の返事を皮切りに睦沢とアーニャ、セオドアの戦闘が始まった。

 先に仕掛けたのはセオドアだった。

 セオドアは2人に向かって走りだすとそのまま片腕を振り下ろした。

 咄嗟にそれを避ける二人だったが、地面に激突したセオドアの腕は爆発を起こし、その衝撃で地面は吹き飛び、凄まじい衝撃が辺りに広がった。

 直撃は避けた二人だったがその衝撃で後ろへと吹き飛ばされる。

 アーニャは上手く受け身をとるが睦沢は地面に思い切り体を叩きつけられた。

 そしてそのまま遠くへと吹き飛ばされる睦沢。


 セオドアは間髪入れずにアーニャへ追い打ちを仕掛ける。

 煙の中から現れたセオドアの第二撃、今度は振り下ろすのではなくアーニャの体を掴むように細かく素早い動き。

 掴まれれば終わりのセオドアの腕がアーニャを襲う。

 しかしアーニャはその腕を身軽に躱し続ける。


「おいおい、いい動きすんじゃねぇかよ!!!」


 セオドアの攻撃を避けながらアーニャはウォーターカッターでセオドアの足元の地面を何度か切断し、その地面を崩した。

 崩れた地面にセオドアは脚を取られ、動きが止まる。

 その隙にアーニャは睦沢の元まで後退した。


「大丈夫ッスか!?」

「ったく神経使うわね、グローリアの時みたいに足止めが出来ないうえに触れればその場で終わり、A級ってのはどいつもこいつもこんな感じなわけ」

「はは、自分はそんなに殺人に特化してるわけじゃないんスけどね」


 この時、雅史はどこで援護をするべきかで悩んでいた。

 雅史の持つ銃は能力者の能力を一時的に消滅させる弾が込められたアーニャ特製の拳銃である。

 しかしその弾の数はわずか五発、しかもA級相手にその力が発揮するとは限らない代物。

 使いどころは自然と限られてくる。


(二人が本当にピンチの時か、セオドアを仕留められそうな瞬間、今はまだ使うべきじゃないのか……)


 雅史はその銃を握りしめ、戦いの行方、そして機会を伺う。


「いやぁお嬢ちゃんいいねぇ、能力者ってのは大抵自分の能力にかまけて身体能力ってのは疎かになりがちだけどよ、お嬢ちゃんほどの動きする奴なんて滅多にいねぇぜ」

「それはどうも……」


 セオドアの表情は最初に見た時よりも生き生きとしていた。

 それはまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように。


「変態くん、お願いがあるわ」

「なんスか?」

「少しの間だけ一人であいつの相手をしてもらえるかしら? 試したいことがあるの」

「いいッスよ、何か考えがあるんスね」

「ええ、頼んだわよ」

「任せてくださいッス、自分も良い策思いついたんで、足止めどころか倒しちゃいますから」


 睦沢の言葉を聞き終えるとアーニャは睦沢の後ろへ後退した。


「おいおい! お嬢ちゃん! せっかく楽しくなってきたってのにやる気無しかい!?」

「心配ないッスよ、あんたの相手は自分がするッスから」

「ちっ、せいぜい楽しましてくれよ!!!」


 睦沢は辺りに散らばった瓦礫を念動力で操り、自らの周りへ浮かせる。

 そしてそれらを一つづつセオドアに向けて放った。

 その速度は人間の反射神経をゆうに超えるものであったが、セオドアは特に気にせず睦沢へと突っ込む。


 瓦礫はセオドアに当たった瞬間爆散し、まるでダメージはない。


「そんなちんけな攻撃無駄だぜ!!!」

「ならこれならどうスかね……」


 突如セオドアの周りの地面に亀裂が入り、セオドアを囲む。


「あぁ? なんだこりゃあ」


 そしてその周りの地面が持ち上がったかと思うと、それは生き物のように動き、セオドアを閉じ込める巨大な球体を形作った。

 

「それは自分が特別力を込めて作った牢、あんたの爆発じゃそう簡単には壊れないっスよ、それにその中で爆発させれば酸素は無くなりあんたは死ぬ、これであんたはそこから出られないッス」


 セオドアが睦沢の牢に閉じ込められた時、アーニャは簡単テレパス機を使って雅史と連絡をとっていた。


『作戦があるわ、今から言うタイミングであいつを撃ってちょうだい』


 アーニャは自分が考えた対セオドアの作戦を伝えた。

 その作戦は普通に聞けば無謀なものであったかも知れない、しかし試す価値は確かにあるものだった。


『でもよ、それじゃあお前が危険すぎるだろ……』


 作戦を聞き終えて雅史が思ったのはアーニャへのリスクであった。

 それはあまりにも危険で、自殺行為とさえ思われる。


『危険は承知よ、それにあなたが外さなければ上手くいく確率も高いわ』

『はは、責任重大だな』

『頼りにしてるわよ』


 アーニャはそう言って雅史との通信を遮断した。


(頼りにしてる……ね、こればっかりは外すわけにはいかねぇな……)

 

 雅史はアーニャの言うタイミングを見逃さないよう、集中してその戦闘へ目をやる。


「お待たせ変態くん」

「早かったッスね、でもこっちはもう終わったッスよ」


 そこにはコンクリートで作られた地面の球体という奇妙な物があった。

 その球体の大きさは近くのビルの三階ほどの高さもある巨大なものである。


「セオドアはあの中ッス、見ててくださいアーニャさん、後はトドメを刺すだけッスから」


 睦沢は両手を広げ、その手を両側から内側へ何か物を潰すような動きをする。

 すると球体はその睦沢の動きに合わせ、大地を揺らしながら徐々に徐々にその形を小さくしていく。

 球体が小さくなるにつれ睦沢には能力による負担がかかり、目は血走り、鼻からは血が垂れる。


「あなた……大丈夫なの……?」

「問題……ない……ッスよ……」

  

 そう言う睦沢だがその顔は明らかに苦しそうであり、今にも倒れてしまいそうなほどであった。


「もう……少し……」


 球体がセオドアのいるであろう箇所を押しつぶそうとしたその時だった。

 突如球体の外壁が光、爆発を起こした。


「なっ……」


 中から出てきたセオドアは焦った様子を全く見せない様子で睦沢に語りかけた。


「いやぁ、いい考えだったぜ、確かに俺の能力が自分に触れた物を爆発させるだけの能力なら今ので死んでたかもな」

「……どういう……ことッスか……?」


「気付かねぇか? 俺の能力は触れたものを爆発させるだけじゃねぇ、触れたものを爆弾に変えちまうんだよ」


 そう言ってセオドアは周りに散らばる瓦礫の一つを掴むと、それをアーニャ達に向け投げつけた。


「まずい!?」


 アーニャは能力の代償により体力を失った睦沢を抱え、その瓦礫を避ける。

 瓦礫はアーニャ達の後ろの地面に落ちると、小さな爆発を起こし、その小さな破片がアーニャ達を襲う。


「どうだい? 驚いただろう?」


 運良くアーニャには瓦礫は当たらなかったが、睦沢の脚には大きな破片が突き刺ささっていた。


「そんなところで寝そべってていいのかい? お二人さん?」


 セオドアはもう一つ瓦礫を拾うと、それを再びアーニャ達へ投げつけた。


 アーニャは睦沢を抱えて避けきるのは無理だと判断し、一人でその瓦礫を避けようとするが、なぜかその脚は動かない。

 その理由をアーニャ自身は分からなかったが、どうしても動こうとしない自分の体を諦め、最後の手段である兵器を取り出そうとした時だった。


 瓦礫はちょうどセオドアとアーニャ達の間で止まった。


「へへ、自分だってこれくらいはできるッスよ……」

「いいねぇいいねぇ!!! 俺の読み通りだぜぇ」


 そう言ってセオドアは胸にかけていたサングラスを装着する。


「まさかっ!?」


 アーニャはその姿を見て投げられた瓦礫がただの爆弾で無いことに気付いたが、それはすでに遅かった。


 瓦礫は爆発をしなかった。

 代わりにそれは爆発の瞬間の光の数十倍の光を放った。

 辺りは光に覆い尽くされ、その光はアーニャと睦沢の視界を奪う。


 そしてその一瞬の隙をつき、セオドアはアーニャの元へと詰めより、その首を掴み持ち上げた。


「じゃあな、ECSのお嬢ちゃん」

 

 セオドアの右手はパーヴェルを爆殺した時のように一瞬光り、アーニャの首を爆発させた。

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