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神様のデスゲーム  作者: よっしー
第三章 悪
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9-2 都市エリア

【6:56 森エリア最南端】

 

 天国には太陽らしきものが昇り始め、その光が段々と辺りを照らしていく。


 そして雅史達は森エリアを抜け、都市エリアへと続く巨大な橋に辿り着いていた。


「あれが、メトロポリス……」


 橋の先に見えるそれは大都市であった。

 まるで人間が作った人工物の密集地帯。

 遠目からでもその都市がかなり巨大なものだと分かる。


 橋の下は底の見えない奈落、落ちたらどうなるかは分からないが無事で済まないことは確かだろう。


「なんとか朝までには辿りつけたみたいでよかったッスね」

「長かったー! もう足がパンパンだよぉ」

「まだ油断はできないわ、入り口で待ち構えてる奴等がいるかもしれない、安心するのはあそこで拠点を作ってからよ」


 4人は森エリアを抜け、橋へと足を進める。

 アーチ型の橋の真ん中で雅史は後ろを振り向いた。

 そこには森が遥か先まで広がっている。

 本来ならきっとその森は緑に覆われ、同じ景色が延々と続いているように見えるのだろう。

 しかし雅史の目に映るその森は違っていた。


 昨日ボレロが築いたと思われる氷の城とその城壁。

 その氷が森の半分以上を侵食していたのだ。

 氷の城を中心に侵食は今だ続いており、木々や川を凍らせ、時には岩や木を砕き、森を氷の世界へと変貌させていく。


 もしもあの時にボレロに警戒してあそこから動かなければ雅史たちもあの氷の侵食に巻き込まれていただろう。


「もしかしたらあのエリアにいる参加者のほとんどは全滅するかもしれないわね」


 森を見つめる雅史に対してアーニャが話しかける。


「全滅って……」


「あの氷の侵食、今のままのペースでいけば今日中には森を覆ってしまうでしょうね、そうなればあの森は全てボレロの庭、並みの能力者ならほとんどがボレロの手に落ちるはずよ」


 ボレロ・カーティス、これが次元の違う力を持つ者の力なのだろうと雅史は思った。


「まぁこれでボレロが心臓を集め終わればこっちにまで来ることはないでしょうから、それはそれで安心してもいいのかもしれないわね」

「そうかもな……」


 辺りに警戒しながら橋を進む4人だったが、幸い何もなく無事に都市エリアの入り口へと着くことができた。

 そこはまるで元々自分たちが住んでいた世界そのもの、人影はないがそれでも元の世界の事を四人は少しだけ思い出した。


「さてと、着いたはいいけどどこに拠点を作ろうかしらね、あまり目立たない所がベストなのだけれど」

「それなら普通にそこらにあるビルの中でいいんじゃないッスかね、これだけ建物があるなら下手に離れた場所にある建物よりも、似たような建物がたくさんあるビルの中が逆に安全じゃないかと思うんスけど」

「そうね、なら一番多そうなビル、そんなに階がないビルに的を絞って探しましょうか」


 今のところ都市に荒れている様子はない、森エリアと違ってここで能力者同士で戦闘を始めればその痕が分かりやすく残るだろう。

 それでここが安全だと言い切るには不安が残るが、それでもあの氷に覆われつつある森エリアよりは数倍もマシなはず。

 アーニャは少しだけ安心をし、3人に指示をだした。

 4人は辺りの建物の外観を一つずつ確認し、拠点に出来そうな建物を探す。



 ◇



 都市を捜索し始めて1時間、突然それは起きた。

 ちょうど4人が曲がり角を曲がり、前に目を向けた時だった。


 一瞬目の前が光ったと思うと、車同士が激突したような凄まじい音が鳴り、四人の先にある高層ビルが下から崩れていった。

 ビルが崩れる音と衝撃波、そして土煙に巻かれながら雅史とアーニャは同じ事を思った。


(初日に聞いた爆発音!?)


「んんんん、気持ちいいいいいいいいいい!!! さいっこーだぜえええええ!!!」


 土煙の中から奇声のような歓喜した声のようなものが聞こえる。


「まずい!! 隠れて!!!」


 アーニャの声に反応し、四人はすぐ傍にあったレストランの中へと入り込み、そこから外の様子を伺う。

 しばらく経つと煙が晴れ、その声の主が現れた。


「セオドア・リードベルト……」


 アーニャがその男の名前を呟く。


「だ、誰だそれ……?」

「十字架を背負う者達の3人の幹部の一人、爆弾狂セオドア・リードベルト、A級の能力者よ……」

「A級……」


 雅史は2日目に出会ったA級グローリアを思い出す、自分は直接戦ったわけではないがあの戦闘で2人の仲間を失った、アーニャ自身も勝ったのは運が良かっただけと言っていた。


 セオドアはなにか訳の分からない叫びを上げながらその場で騒いでいる。


「どうやらこっちには気付いてなさそうね……」

「どうするんスか……」

「……様子を見るしかないわね……」


 この時のアーニャの心境としてはセオドアを捕まえ、幹部で唯一情報の少ない赤い髪の男について聞き出したいとこではあったが、セオドアに勝てる見込みはどこにもない。

 今、目の前で起きた爆発の威力がいい証拠である。


「んん? まーだお前生きてんのか?」


 そう言ってセオドアは地面に転がる何かを片手で持ち上げた。

 それは人間であった。

 爆発によって脚が千切れ、全身に火傷を負った人間。


「まさかあれ、パーヴェル・マイヤー……?」

「多分……そうッスね……」


 アーニャの言葉に睦沢が反応する。


「知り合いなのか?」

「パーヴェル・マイヤーはセオドアと同じA級の能力者よ……」

「なっ……同じA級の能力者同士の戦いで一方があんな姿になっちまうのかよ……」

「そりゃ一重にA級っつっても戦闘に関してはピンキリッスからね……」


 掴まれているパーヴェルがゴフッと血を吐いた声で雅史は視線をセオドア達へと向き直した。

 それはちょうどセオドアがパーヴェルの首元に手をかけたまま何かを喋っているところであった。


「中々使えそうだな、パーヴェルっつったっけか、俺達の仲間になれよ、そうしたらここで爆散しなくて済むぜ」

「……く……たば……れ……」

「そっかそっか、良い返事だ!」


 パーヴェルの首元が先ほどと同じように一瞬光り、そしてボンッという音とともにその体は吹き飛んだ。

 バラバラになったパーヴェルの体は辺りにその肉片をばら撒き消滅する。


「!?」


 その光景に思わず後ろに身を引いた雅史だったが、その後ろのテーブルに体が当たり、テーブルの上に置かれていたガラスのコップが勢い良く地面へと落ち、パリンという音を立てて砕け散った。


 その瞬間ぐるりと雅史達のいるレストランへ顔を向けるセオドア。


「誰だい? そこでコソコソ隠れてる奴等は?」


(見つかった!?)


「ちっ! 変態くん! 戦うわよ!」

「りょーかいッス! どうやらやるしかないみたいッスからね!」

「オリビアは後方で待機! やばいと感じたらすぐに逃げて! 雅史は銃で援護! ただしオリビアの身が最優先よ!!!」


 アーニャ達はもしも敵と出くわした時に供え予め各自の動きを決めていた。

 B級以上もしくは階級が判別出来ない相手なら基本は逃げる、逃げれそうにないなら睦沢とアーニャが前衛で戦闘を行い、雅史が後方で援護、オリビアはさらに後ろで待機。

 命の優先度はオリビア>アーニャ=睦沢>雅史といったように、回復の要であるオリビアを優先する。

 それがもしもの時の作戦。

 4人は予め話し合った通りに動く。


 アーニャと睦沢はレストランを飛び出し、セオドアの正面へ、雅史とオリビアはレストランの中へ残った。


「うっひょお、ラッキーラッキー、まーた獲物が増えたぜ」

「あの目の十字架……間違いないわね……」

「みたいッスね……」

「んん? てめぇら二人の顔どっかで見たことあんなぁ? どこだっけな」


 アーニャは別次元からグローリア戦で見せたウォーターカッターを取り出し、間髪入れずにセオドアに向け放つ。


「えっとぉ……あぁ! 思い出したぜ!」


 水の刃はセオドアの体を切断し、その息の根を止める……はずであったが、セオドアの体に水の刃が触れた瞬間に刃は爆発し、一瞬にして蒸発してしまった。


「おい女! てめぇECSの人間だろ! 確か俺達のブラックリストに載ってるぜ! そんで男の方はあれだな、確か念動力使いの──」

「変態くん!!!!」

「分かってるッスよ!!!」


 睦沢は両手を崩壊したビルの残骸へと向け、そこに念動力の力を注ぐ。


「うらあぁぁぁぁぁぁ!!!」


 バキ……バキ……といくつかの鉄骨が音を立てながら空へと浮かぶ。

 そしてその鉄骨はものすごい速さでセオドアへと放たれた。


 しかしその攻撃はセオドアに当たった瞬間に爆発を起こし、砕け散った。


「おいおいおいおい、人が喋ってる時にチャチャ入れるなってママに教わらなかったのかい? 少しは楽しくお話しよーぜ、なぁA級の人気俳優さんよ」

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