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女王さまはトラブルメーカー  作者: Roki-P SAKOMIZU
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クマさんパーカー

第二章:変装名人


年間の平均気温が20℃前後のぱもぱっちゃの冬は王国の大半が大雪または豪雪で閉ざされ、寒さを耐え忍んだ春には花が咲き薫る。

人民市場は年末に七夜連続で開かれ、その目的は各城都の人々との衣食文化交流だ。

(七夜連続なのは単に大規模過ぎて一夜では廻れないからである)


このことは、ぱもぱっちゃが多くの食材に満ち溢れていることを示している。

我らは戦闘民族でありながらみんな温厚な性格をしていて人々は優しく、いつも明るい笑顔で働き、食に関して大地に感謝する心を養い育ってきた。そして国民はみな、女王さまが大好きである。


女王さまのお名前は”エミリー・テリルク“。

第7810代目ぱもぱっちゃ王国女王(女帝としては2563人目)。今年で19歳になられる。

容姿は艶やかな黒髪に大きな目をしており、子ども好きで人々に優しい声で接せられることが老若男女問わず全国民の心を捕らえている。


万年平和と五民共栄の極地に達し、女王さまを愛してやまない国民と、またその国民を心から愛する女王さまのお姿はまさしく絵に描いたようなスーパーユートピアであった。

前述した五民とは移民順に遊牧民フーシャを始め、戦闘民族パーシャ、医民京族、工民ライン族、農民平安族のことでこれらの民族は一つになっている。人々は今ぱもぱっちゃ族としての誇りを持って毎日を明るく愉快に暮らしている。


時計の針は午前3時を指していた。私と少尉は市場から帰ってきたところである。

彼とはペアで勤務に就く。

先ほど就寝の挨拶を交わして各自の部屋に戻りって明日といっても今日の15時出勤を控えた私は軍服をハンガーに掛け、軍刀の手入れをして部屋着に着替え電気を消すと床に入り瞬時に寝た。


とてつもなく快眠だった。


暗闇の中に文字が光る掛け時計を見る。午後1時10分くらいだ。昼部屋が真っ暗なのは地下だからで窓がないことを改めて感じた。身仕度をして食堂へ向かう途中、エレベーターの前で剣道着姿の少尉と会った。


「おはようございます。良く休めましたか?」


「あぁ、とても清々しいよ。少尉は食事済んだか?私はこれから食堂にいくのだか」


「私もこれから行こうと思っていたところですよ。そうだ!少佐、部屋に食堂の割引券があります」


彼は10分待たせますと言って部屋に入った。

10分なんぞなんともないと待っていたら、少尉の部屋の扉が開いた。


「すみません、お待たせしました」

まだ5分も経っていない。さっきまで汗だくだった顔は軍服を着て凛としている。

彼曰く5分の間にシャワーを浴び、若干手間のかかる軍装に着替えたという。

(なんたる早業だ)


そのあとは地下150階の大食堂に行き、私はパチャモカレー定食大盛を、少尉は麻婆茄子大盛と餃子(一皿20個)を注文していた。


食べ終えたあとは地上まであがり、長方形の校舎のようなシンフーシャ憲兵隊本部に向かった。

中の案内版には道場や会議室など、ごく普通の警察署と変わらなかった。


少尉の左横を歩く。前から一人の女性が歩いてきた。少尉は歩みを止め、背筋を伸ばして対面から来る人物に敬礼をした。


その人物は着ている軍服こそは同じだが、

ボタンを今にも弾き飛ばさんばかりの胸がそこにはあり、襟章は大佐のものだった。


少尉。「モノローソフ中佐」

中佐?

「陽少尉、只今参りました」


「もー!やーくんったらー!私は一ヶ月前に大佐になったっていったでしょ~!?意地悪ぅ!」


「そうでしたっけ?」「そーだよー!」

この気さくそうな方の名前はイリア・モノローソフ大佐。ここの本部長及び本隊長を務めていて、なんでも少尉の従姉妹で私より一歳年上(少尉情報)だそうだ。印象はおっとり系の“クラスの人気者“のような雰囲気を醸ししていた。


少尉が大佐に私を紹介する。

「こちら新任の苻莉茄少佐です」


敬礼をする。

「クサカより参りました、苻莉茄です」


「私はイリア・モノローソフ、大佐よ。苻莉茄君かぁ、珍しい名前だね」


暖かみを帯びた声の頭の中に入ってきた。

苻莉茄はクサカでも珍しい名字だ。


「用とは何でしょうか?」用?初耳だ。なんだろうか。


大佐は長い一本廊下の前後を繰り返し見てから人が来ないのを確認すると、手近な部屋の“空き”の掛札を“使用中“に裏返しすかさず私たちの手を軽く掴んで一気に流れ込む!

(速いっ!)


そこは写真を現像する暗室だった。入った瞬間に大佐がずっこけた!

扉が閉まる。暗い、真っ暗だ。そして窮屈すぎる原因は複雑な倒れ方をしたのだと推測する。

推測しないと大佐の柔らかいのが右手の平に乗っかっている意味が分からない!

私は呼び掛ける。


「たた…大佐?」汗が吹き出てくる。


大佐は驚きの声を上げた刹那、私は米5キログラムに引っ張叩かれたような猛烈ビンタを食らっていた!


「陽くんのバカぁ!従姉妹同士でそんなことするなんて!お姉ちゃ…いえ、私は許しませんからね!?」

人違いです!どこだ!?どこだ少尉ー!?


「中佐!私はここですよ!?少佐を打たないで下さい!それに僕が従姉妹の身体に欲情したみたいことを言わないで下さい!!」


「や!やーくんはそんな目で私を見ていたの!?」


いいえ!!と即答する少尉。続けて、


「少佐に謝って下さい!」


大丈夫ですか?お怪我は?と労る横で大佐はごめんさいと謝った。


いいえ、それより少尉、

「はい、どうかなされましたか!?」

少尉の労りの顔が真っ暗闇で見えた気がした。


「そんなこと考えているのか?」


「少佐まで何言い出すんですかー!!?」



遮光のためのドアは二重で一枚目のドアと二枚目の間は畳み横一つ分の空間だ。そこに三人で立って鼎談する。大佐は赤灯を点け、盛大に乱れた軍服を整えて気を取り直し本題に入る。大佐はコホンと咳払いをし我々に下命した。


「あなたたちに今から一ヶ月間の特務を下命します。女王さまの側近となって、女王さまの騒動を片付けて貰います」


特務=騒動の片付け、つまり端的に言えば女王さまがやらかしたことを我々二人で落着させろ。とのことだ。


「今日も女王さまは得意の変装をして城を抜け出し、今年シンフーシャで流行した背中にクマさんの顔がでかでかとプリントされたパーカーを着て散歩をされているとの情報です。今晩の祭りにも必ずや行くとこでしょう。任務の説明は以上です」


部屋から出る。二人対一人で向き合って敬礼を交わし、15時20分、早速城外へ向かった。


フーシャ王国時代の城門を抜け、右へ100メートルほど真っ直ぐ行くと突き当たりを左に曲がると目の前は市場である。

「少尉」

「はい、何でしょう?」

「女王さまの変装をお目にしたことはあるか?」


「何度かありますよ、最後にお目にしたのは四日ほど前です。その時のお姿は西城ひ〇きのコスプレでしたね」


こりゃまた大胆な。

「少佐、”憲兵”の腕章は、女王さまに気付かれてしまう恐れがあります」


そうだな、外していいぞ

「側近になれなんて、女王さまはご存じなのか?」


歩きながら外した腕章をポケットにしまう。

「はい、ご存じです。今日から家来も同然ですよ♪」


やけに喜んでいる。いや、喜ばないほうがどうかしている。

側近と言うことはやはりそうなるのか。

市場全体を探すのは二名で足りるわけがない。適当に探し回っていたらある一つの屋台に大勢の人が群がっていた。

おぉー!や、ツケヒゲのおジョーちゃんうまいねぇ!などの歓声が聞こえてくる。

人混みを掻き分けて見てみると、少尉があることに気付き小声で「少佐、あれ」と言った。


射的で百発百中の戦果を挙げていた彼女は例のクマさんパーカーを着ていて、偶然にもチラッと顔が見えた。


「ん?あの子って昨日の子じゃないか?」

「確かに、そうですね…」

大きなぬいぐるみの景品を大量の抱えた…

エミさんは今日も奇抜な仮装をして祭りを楽しんでいるなぁ、と微笑ましく思っている私のすぐ後ろで何故か歩みを止めて目と口を大きく開けて立っている少尉がいた。

そして次に彼が発した言葉に私は驚いた。


「じょ!…女王さまあぁー!?」

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