終わり行く世界を思いながら紡ぐ言葉
正直わかりにくいと思います…
それでも読んでいただければ幸いです
真っ赤な夕陽が、南の海に沈んでいく。爽やかな海風に、日に透ける夜色の前髪を揺らし、夜色の瞳を水平線に漂わせている少年は、背後から響いてくる教会の鐘とにぎやかな声を聞くともなしに聞いていた。
ゆっくりと、ゆるやかに、穏やかに時が過ぎていく。
「こんなところにいたの?」
ゆっくり振り返ると、沈む太陽に目を細めた少女が、ふわりと髪をなびかせながら首を傾げて少年を見ていた。
「…………うん。」
答えてまたすぐに、太陽の方へ視線を向ける。
「まぶしいね。となり、座るよ?」
少女はスカートにシワが寄らないように両手で撫でながら、少年の隣に静かに腰を下ろした。
じっと海を見ている少年に、彼女は笑う。
「なに考えているの?」
「………………。」
並んで2人は、茜色に染まる空と沈む夕陽を見つめた。
ぽつりと少年が漏らした。
「終わり行く世界――」悲しそうに、静かにそう答え、
「――レウは、気にしないでいいよ」
気遣うような、優しい台詞。それに、少女…………レウは寂しそうに瞳を濡らし、少年の顔を覗き込んだ。歳よりも大人びて見える彼女は、少年といるときだけ幼い少女の仕草をする。
それが、彼を包み込むような、あたたかくて優しい気持ちにさせる。
彼しか知らない、彼だけの自慢だった。
「わたしも、考えたことあるよ……。」
彼は寝転び、紫色の空を仰いだ。少女も続いて空を見る。
「いつか全て灰になるなら、体も全てなくなるのなら、僕はきっと何か叫ぶだろうか……。それでも、どんなに叫んでも誰の耳にも届きはしない。思ったところで何もできない……。きっと最後に残った人間はそうやって日々が過ぎるのを待つんだ。朝も昼も夜もない世界。それなのに眠れない夜は続く。そして、なんとなく世界が終わるんだ……。
そんなことを考えてしまうんだ。」
宇宙を走る、まばゆい光。
散りばめられた幾つもの星。
彼らを覆う星座。
名前も知らない、ずっとずっと遠くの世界。
すべては遠き幻想郷。
終わり行く世界の終点。
「ウェル…………」
少年は名前を呼ばれ、となりで空を見ているレウを見た。
「わたしたちの…………わたしたちが考えていることを考えている人はいるのかな?」
泣いているレウに驚き、目を見張った。
「どうして?」
「どうしてかな? どうしてそんなことを口にしたのかな。どうして考えちゃったのかな。手を差し伸べることさえできないのに。言葉を積み上げて届けようとしても弱くて、脆くて、崩れ落ちていく……。でもね、わたしは誰も考えていないと信じたいの」
目の前の少女は、翡翠色の瞳に、悲しみを抱えたまま上を向いていた。
世界の終焉。それは全部がゴミに変わる。全部が終わる。
やがていつかはそうなる。
「レウには僕の心が透けて見えるのかい?」
彼女はその台詞でウェルを見つめた。
「ウェルもそう思ったの?」
「そうかもしれない」
「…………?」
静かにウェルはレウに告げた。再び視線を2人は星空に戻す。気付けば教会のにぎやかな声は無かった。辺りには2人だけだった。
「弱くて脆い言葉でも――」
一度深く息を吸って、落ち着いてから一気に放った。
「きっと、誰かのために、誰かを想って紡ぐことに意味があるんだ」
「…………」
レウはそっとウェルの左手に手を合わせ、くすくす笑い出した。不意の行動に彼は目を丸くした。
「うれしかったから」
彼はまだ意味が分からず首を傾げる。
「たとえ終わり行く世界の中心にいても、あなただけはきっとこうしてわたしのとなりで言葉を紡いでくれる」
「レウはほんとうにやさしい。そうだ。一緒にきれいな朝焼けをみよう。雨がふったら一緒に歌を歌おう。僕らだけでいい。もしも世界の終わりがきたら『最悪な世界だったよ神様!』って大声で叫ぼう。そうして、こうして空を見ながら目を閉じるんだ」
「……だから、言葉を紡ぐだけでいいんだね」
それが届かない言葉でも。
何気ない言葉でも。
弱く、脆く、崩れ落ちたとしても。
誰かを絶望の淵から救うことができるんだ。
静寂な時間。波の音だけが聞こえる。
そして、教会の鐘が鳴った。
2人の心の奥深くに響く音は揺れているけれど怖くはなかった。
これから先どうなるか分からないが、今は十分だった。
「わたしはウェルを癒す言葉を紡いでいくね」
「ぼくはレウを癒す言葉を紡いでいく。そして――」
「――ふたりで誰かを癒すために紡いでいこう」
読んでいただきありがとうございました。