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題目もろもろ短編集

乗ってみたい憧れの乗り物は…

作者: R-N
掲載日:2026/09/05

 もの知らずもここまでくれば大概だと思うが。

 能天気にサクラは手をあげて叫んだ。

「あたし乗る乗るっ!是非乗せてッ!」

「バカ、お前は乗るなっ! すっこんでろっ!」

 俺の忠告などお構いなしに、話を持ち込んだ田羅石に縋りつく。ヤツはヤツで困った顔をして頭を掻いていた。だが、実質サクラを無視して俺に話を振ってくる。

「で、どうです?士津見さん。」

「お断りだ。何度も言ってるだろ。俺はテメェの口車に乗るつもりはない、てな。」

 横でしつこくハイハーイッと手をあげるサクラを無視し、俺はヤツを玄関へ引き戻す。

「とにかく帰ってくれ。これ以上俺の所に話を持ち込むな。」

 無理矢理俺はヤツを追い出し、扉を閉めた。そんな俺をじっと見つめ、不服な表情でサクラは詰め寄った。

「どうして乗っちゃダメなの?田羅さんだって、気を利かせて誘ってくれてるのに。」

 指先でシワの寄った俺の眉間を突く。いつだってコイツは俺が悩む顔をするのを嫌がっていたな。成り行きで拾ったとはいえ、もう二人で暮らし始めて随分と経つ。

 俺は軽く宥めるように、サクラの頭に手を乗せた。サクラはサクラで突拍子のない事を言う。

「口車って、面白そうじゃん。いっつも田羅さん楽しそうに話してるよ。」

「サクラ、お前は何にもわかっちゃいねぇだろ。」

 途端に子供みたいにブータレて、サクラは駄々をこね出した。

「だって乗ったこと無いんだもんっ!、いろんな種類がある有名なアトラクションなんでしょ?それにセイがこっそり乗ってるの、あたし知ってるんだからっ!!」

 表向きは一級整備士をしている。だが裏は、他人に言えるものじゃない。そっちの世界では"仕掛け"屋と言われる俺だが、そもそもサクラには説明するだけ無駄ってモンだろうな。

 口車は乗り物じゃない、という事すら気付けないのだから。

「だったら。ちゃんと自分で責任取れよ?どうなっても俺は知らねぇからな。」

「ホント?乗ってもいいの?」

「…勝手にしろ。」

 ヤッター!! と諸手を上げて喜ぶサクラに、景気づけの一杯をごちそうする。

 どんな車も乗りこなす、超一流のドライビングテクニックの持ち主だ。


 お手並み拝見、と行こうじゃないか。

念の為。

口車に乗る は辞書に書かれている意味の通りです。


違う意味で取る人はいないだろうと思いますが、心配になったので、後書き追加しました。

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