残暑見舞い申し上げます。
掲載日:2026/08/11
読んで頂いている皆様にささやかな感謝を込めて。
夏の間、冬の魔女は湖の底にある隠れ家で冬支度をする。
夏でも涼しい水底の隠れ家は硝子天井になっていて水の底から湖を見上げる形になる。
硝子天井を滑るように移動していた蟹がポカンと泡を吐いた。
淡く小さな魚群が震えるように散ると硝子張りの天井から見える湖の主気怠そうに隠れ家の床に大きな影を生み出す。
ゆっくり動く巨大な魚影に黒猫が興味津々だ。
チリリ…リリ…リリ…
猫が走る度に首につけた鈴が鳴る。
カラリと汗をかいたグラスの中で氷が澄んだ音を立てた。
冬の便りを準備していた手を留めて冬の魔女は硝子天井を見上げ眩しい光に目を細める。
深い湖の底にも関わらず天井を見上げると灼熱の魔女の異名をもつ夏の魔女が創り出したギラつく日差しが解る。
かなり激しいダンスを踊っているのだろう。
残暑見舞いの時期から始まる冬の便りの準備はこれからだ。
「当分出番はなさそうね。」
溜息をつくと冬の魔女は再び作業に戻る。
夏の魔女が踊り疲れるまで。
あーつーい。
BGM 打首獄門同好会『なつのうた』




