第2章:授業、規律、そして狩人たち
最初の授業、そしてアカデミーに潜む「毒」との遭遇。
アイペリの鋭い観察眼が、クラスメイトたちの隠された本質を暴き出します。
友情、規律、そして計算……影の支配者への道はここから始まります。
最初の授業は「基礎クト制御」だった。
正直に言って、アイペリにとっては完全な喜劇だった。
老教師のボランが、生徒たちに手のひらで安定した光の球を作るよう命じたとき、私は内心であくびを噛み殺していた。
脳内の一角では、退屈しのぎに教室にいる二十七人全員のクトの流れ、心拍数、そしてエネルギーレベルを同時に分析していた。
そして自分の番が回ってきたとき、私は全神経を「無能であること」に集中させた。
【脳内モノローグ:よし、私の番ね。どう演出しましょうか? ……そう、まずは微かな震えを。色は力不足を感じさせる薄い黄色。たまにパチパチと火花を散らして、今にも接続が切れそうな不安定さを装う。最後は力尽きたように消すけれど、未練がましく一瞬だけ光らせる……。よし、これで『頑張っているけれど才能のない令嬢』の完成ね】
「よく頑張った、アイペリ。その努力は認めるよ」
ボラン先生が慈愛に満ちた声で言った。私は恐縮したように、控えめな笑みを返した。
この退屈だが完璧な芝居が続く中、教室の扉が勢いよく開いた。
その男が入ってきた瞬間、教室の穏やかな空気は一瞬で氷点下へと叩き落とされた。
レギオンのグレーの制服は、まるで周囲の光を吸い込んでいるかのようだった。骨のように白い肌と、カミソリで引いたような漆黒の髪。そして何より、魂の底にある弱点を探り当てるような、感情のないブラックホールのような瞳。
彼こそが、アカデミーの規律責任者――カエランだ。
【分析:ターゲット、カエラン。レギオン直属の規律官。オーラは冷酷かつ圧政的。クトのレベルは高いが、鋼鉄の棒のように柔軟性に欠ける。彼の哲学は『弱さは病であり、外科的な除去を要する』というもの。典型的な、教科書通りの独裁者ね】
カエランは教室内を徘徊し、獲物を探していた。
そして、彼は見つけた。後ろの席でルーンを書き間違え、震えているレオという少年を。
カエランの声が響いた。彼は怒鳴りはしなかった。
静かに、そして残酷に少年を侮辱し、レギオンが掲げる『調和』のイデオロギーを盾に、弱者を『不毛な土地』や『混沌の要素』と呼び捨てて断罪した。
私は他の生徒たちと同じように怯えたふりをしながら、脳内のログに冷徹に書き留めていた。
【診断:古典的なファシストのレトリック。敵を作り出し、自らを救世主(秩序)として提示し、集団の中に個を埋没させる。予測可能。だが、恐怖に支配された若者たちには極めて有効な手段ね】
授業が終わり、生徒たちがカエランの毒気から逃れるように教室を去る中、誰も少年に近づこうとはしなかった。レオは一人、涙を隠しながら荷物をまとめていた。
その時、一人の少女が少年の席の横を通り過ぎた。
背が高く、ゲルマニアの貴族らしい凛とした佇まい。彫刻のように整った顔立ちに、感情を読み取らせない静かな灰色の瞳。彼女の名はアルミル。
彼女が通り過ぎた瞬間、手にしたバスケットから一切れのパンが「うっかり」少年の机に落ちた。彼女は振り返ることもなく、言葉を発することもなく、ただ真っ直ぐに歩き去った。
誰も気づかない、静かな反逆。小さな、しかし確かな慈悲の行い。
(……見つけたわ)
私は脳内のファイルに新しい項目を追加した。
【潜在的資産:アルミル。監視リストへ追加】
アルミルが廊下に消えた直後、全く別のキャラクターが登場した。
快活で、ストロベリーブロンドの髪をツインテールにまとめ、顔いっぱいに太陽のような笑顔を浮かべた少女が、駆け足でレオの元へ向かった。
「レオ、大丈夫?」
彼女の声は心配と慈愛に満ちていた。
「カエランの言うことなんて気にしちゃダメよ。彼はただの意地悪な人なんだから。あなたの才能は私が保証するわ!」
彼女は少年の肩を叩き、優しく微笑みながら散らばった荷物を拾い集めるのを手伝った。
それは誰の目にも明らかな、天使のような善行だった。彼女の名はリナ。学園で最も慈悲深い生徒として知られている。
私は廊下の端からその光景を見つめていた。
周囲の生徒たちがリナに称賛の眼差しを送る中、私の分析エンジンは全く別の答えを弾き出していた。
【脳内モノローグ:興味深いわ。アルミルの行動は、秘匿された、リスクを冒さないが誠実なジェスチャー。対してリナの行動は、公開された、演劇的で社会的ポイントを稼ぐためのパフォーマンス。被害者と瞬時に絆を築き、懐に入り込んで信頼を勝ち取る戦術。……過剰な共感、それは不自然なほど完璧すぎる。この子……危険ね。極めて危険だわ】
私はもう一つの名前をリストに書き加えた。
【潜在的脅威:リナ。表の顔:慈悲深い天使。裏の顔:不明。監視リストへ追加。コードネーム:『|砂糖菓子の毒《Candy Poison》』】
廊下を歩きながら、私は薄く微笑んだ。
一人のターゲット。一人の犠牲者。一人の潜在的な騎士。そして、一人の隠れた狩人。
「ええ、このアカデミー……想像以上に楽しめそうね」
影の支配者アイペリによる、最初のクラスメイト分析でした。
静かな勇気を持つアルミルと、完璧すぎる笑顔を持つリナ。二人が物語にどう関わってくるのか……。
次回、いよいよ「禁じられた場所」での運命の出会いが描かれます。お楽しみに!




