▲大臣とその運転手との会話
「座りっぱなしは腰に来るな」
「大臣。宿舎まで今から三時間かかりますよ」
「もっと速度上げてくれよ」
「安全運転で行きますよ」
「それにしても研究所のソファーは固いな。オットマンとマッサージ付の後部座席よりも劣るよ」
「また投資額を増やすんですか?もう財務はかつかつですよ」
「あぁ。増やそうと思う。なにせ理系の話は長いんだ。トイレの近くなった老人をいたわろうともしない。ひどい奴らだ」
「どうでしたか?」
「よかったよ。私の夢が叶うようだ」
「浮かない顔ですね」
「そうか?」
「そうですよ。もう十五年も一緒なんですから」
「もうそんなに立つのか?」
「あの事件からこんなにも立ったんですよ」
「理屈はわからんがきちんと動作するものを信じられるか?」
「動くのならいいじゃないですか。私は携帯電話が作動する理屈を説明できませんからね」
「私もそうなんだがね」
「確認しなかったんですか?」
「何をしていいのかわからなくなってしまった」
「あの結果が本当ならなんでもできたのでは?」
「何でもが本当に何でもだったんだ。想像以上に出来が良かった。文句の一つや二つ用意しておいたんだが…出番がなかった。迷いもするさ」
「そうですか」
「財閥は作業員として従事させているが目に見えない危険な作業。無知なら大金払えば解決できる」
「」
「被検体とも会話をした。ただ彼が本当に被検体なのか。今になって思うよ」
―やはりあなたは信じないのですね―
「あ?何か言ったか?」
「」
「運転中に携帯とは、大事な連絡でも来たのか?」
「えぇ。とても大事な」
「…お前あの所長とつながっているのか?いつからだ?」
「違います。私はあなたの味方です」
「おい。線路上だぞ。止まってどうした」
「疑念を持つ不確定要素は排除しなくてはならない。通知が来ました」
「チャイルドロックはやめてくれ。そんな年齢じゃないだろう」
「もちろん。わかっております」
「情はないのか?俺への」
「ありますよ。だからこそあなたの目的は命に代えても叶えなくてはならない」
「そこまで思ってくれるとは有り難いね」
「えぇ。パクスプティコンが世界を作り変えますよ」
「そうか。…そうだな。あの誓約は私の死後だものな」
「理解しましたか?」
「あぁ。もちろん」
「余計なことでしたね」
「君たちはあれで何をするんだ?」
「平和を造ります」
「私と一緒にいた君ならいかにそれが困難なのかわかっているだろう」
「あのシステムがあれば可能です。国家による平和からシステムによる平和を始めます。
人間ができなかったことをシステムが、ウィンストンが叶えるのです」
「財閥は知っているのか?」
「知らないでしょうね。私たちの独断です。あなたと博士の意志を尊重した結果です」
「私以上の目的を君たちは持ってしまったんだな」
「大臣が始めたおかげです」
「いつからだ?」
「初めから決められていました。こうなることも予想しています。そういう配役ですよ」
「この瞬間に遮断機が下りることも想定通りか」
「想定通りです」
「…俺の家族も、お前の家族も殺されたあの事件すら決められていたのか!」
「いいえ…。いや。計画のうちだったのかもしれません。詳しくは教えられていません」
「復讐はしないのか?」
「あなたほど心が強くないんですよ。もう妻の顔すら思い出せません」
「私もそうだ。犯人の顔ははっきりと思い出せるのにな」
「それにしてもずいぶんと笑顔ですね」
「そりゃそうだ。心残りがなくなったよ。この会話奴も聞いているのか?」
「はい。今もつながっています」
「タバコあるか?」
「どうぞ」
「お前も吸えよ。昔は吸ってただろう。お墓の前で吸っていたじゃないか。お線香のにおいが嫌いだからとか言って」
「私は従者ですから」
「もういいだろう。死に際まで使えてどうする」
「では、いただきます」
「お前は幸せか?」
「えぇ。あなたにお仕えできて幸せでした」
「お前まで死ぬ必要はないだろう。私の代わりに政治家になってはくれないか?お前らの目的だって今日明日で叶う夢ではないだろう。船頭が必要だ。馬鹿を導いてやってはくれないか」
「その役は私ではありません。それに地獄までだれが運転するんですか?」
「ははっはは。じゃあ最後までよろしく頼むよ」
「お任せください」
「…そうか。財閥の人事が変わっているのもお前らの仕業か?」
「えぇ。すり替わっていますよ。今頃原発でしょうね」
「素晴らしい発明だな。心の底から感動しているよ。誰が私の代わりをするんだ?」
「所長じゃないですか?」
「もっと日常会話を練習をしてくれ。あれじゃだめだ。ジョークの一つや二つ言えるようにしてほしい。そうすれば素敵な政治家になれるだろう」
「」
「所長ありがとう。これで心変わりをしなくて済む」
「」
「だが私は政治家だ。誰よりも意地汚く欲深い。非検体に教えてやる」
「」
「私はなぜ彼女が笑わなかったのかを知っている。これは誰も知らない。お前があがめているウィンストンも知らない。私の頭の中にしかない。もうおs」
『パァァァァァァぁぁぁ』
ご覧いただきありがとうございました。
この物語は完結済みのため、添削でき次第投稿します。
次回も皆様とお会いできるのを楽しみにしております!




