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久しぶりの死、決められたリスポーン地点

 音のない山を出て何もない平野を走る。 

 さっきの考えを自分なりに整理している。

ウィンストンが僕を試すというなら、彼が僕のそばにいるのかを試したくなってきた。

 時頼切れるラジオを頭で補完しながら聞いていた。運転中の青年が声をかけて来た。 

「お疲れさまでした。どうでした?」 

「君はあの中身をどのように使うのか知っているのか?」僕は強気に出た。いいやただの憂さ晴らしなのだ。パワハラというやつだ。何をしても生きていられる保証が僕にはあった。自暴自棄に近い。筋道も結末もすでに決まっている。

「この国の発展に必要なものなのでは?」 

 知っているそぶりはなかった。彼らは自分たちが何をしているのか何も知らない。 

「忘れてくれ」僕は外を見た。森が割れ平野が見え始める。 

「栄転なさるのですか?」 

「聞いたのか?」 

「えぇ。上官から聞いておりました」

「そうか」  

「不満があるのですか?」 

「そう見えるか?」 

「あまり嬉しそうには見えません」 

「…今が気に入っているんだ。やりがいもある」 

「ウィンストンからの使命ですよ。今よりもきっと上官にあった職場になることでしょう」 

「約束が守れそうにないんだ」

「ウィンストンとのですか?」 

「それだけじゃない。もっといるよ」 

「ウィンストンが示す場所にすべてありますよ」 

「そうか」 

「そうに違いありませんよ」 

「そうであってほしいな」 

「いいえ。そこにあります」 

「   」予想通りのわかりきった会話。ウィンストンとともに生きる彼らの理想的な回答を押し付けられる。 

 そうだ。一つの疑問を投げよう。彼らの反応を知りたくなった。

「君は豊作省に行きたいんだっけ?」 

「はい」 

「どうしても?」

「はい。そうです」

「両親の願いなんだっけか?」

「はい」

「両親はどんな人なんだ?」

「父は自動車工場を営んでおります。壊れている車もいとも簡単に直してしまうんです。母はそんな父を支えています。経営は苦しいですが廃材をうまく使ってお客様の生活の足を支えているのです」

「素敵なご両親だね。なぜ豊作省を進めるんだ?」

「…そうですね。ウィンストンのためになれと言っていますね」

 彼のレスポンスが鈍くなる。彼は正直者なのだ。せっせと違うストーリーを練っている。

「君は豊作省がいいと思っているのかい?車は国民の生活に欠かせないものだ。工場だって必ず必要なものだろうに」

「…かもしれません。ですが私は戦争に勝ちたいのです。戦地への物資の供給を手伝い、勝利へと向かいたいのです」

「とてもいい心がけだね」

「ありがとうございます」

「けれどね、」

「なんでしょうか?」

「ウィンストンに選ばれた我々がまるで怠慢のように語るのはよしてくれないか?」

「…!。いえ。そんなことは」

「まるで我々が勝利をしようとしていないように聞こえるんだが。申し開きはあるかね?」

「大変申し訳ございません。そのようなことは決して思っておりません」

「なんて。冗談だよ。はははっはは」

 僕は笑った。自分にとても優位なギャンブルをやっているような気になる。人質ごっことでもいうべきだろうか。

「…あ、、ありがとうございます?」

「こんなこと私以外には話してはいけないよ」

「承知しております。ご指導ありがとうございます」

「君が豊作省に入れなかったら?」

「え」

「ウィンストンの意志と両親の意志は対立するということだよな」

「」

「ウィンストンとは異なる思想を持つ裏切り者ということになるよな」

「 」彼は無言で銃口を僕に向ける。黒いリボルバーだ。ハンドルを持ち、顔はフロントガラスを向きている。僕と眼球が会う。 

「そんなんじゃ本当になれないぞ」ハンマーを引き起こす。 

「ウィンストンは知っている」青年の人差し指が少しずつ曲がる。

 フロントガラスに反射する彼の顔は真っ赤だった。 

「人殺しの常套句か。今度使おうと思うよ」 

『バン』 

 頭が熱い。シートベルトが倒れないようにと必死に耐えていた。 

 

 


 

「お疲れさまでした。どうでした?」運転手が僕に平然と声をかける。 

 クラクションは鳴らない。 

 帰路の途中か。

 僕は殺された。けれどもう一度ここにいる。運転手との関係も壊れていない。時間が戻ったようだ。あの理髪店ではなくここから始まっている。けれど不服だ。運転手が自殺すると思っていたのに僕が殺されてしまった。助手席からハンドルを握る用意はできていたのに甲斐がなかった。

 彼は最後にあの言葉をつぶやいていた。ならば彼の家族が考えていることも筒抜けなんじゃないのか?あの言葉は食事を食べる時に言う『いただきます』と同じものなのだろうか。本来の意味を忘れたただの呪文なのか?


「熱いな」考えがまとまらない。頭が焼けるように熱い。 

 運転手は僕の声を聴いてエアコンのスイッチを弄っている。

 僕は適切なチェックポイントを通っている。僕はウィンストンの正しさの上にいる。だからこそ途中から復帰できている。

 僕は実験用の動物。ニートから見れば大出世だろうか。僕は迷路に入れられ、決められた道でゴールすることを求められている。それ以外の道に踏み込んだら殺され、やり直す。非倫理的な実験だ。ゴールには何があるかわからない。それでも進む以外に選択肢なんてない。 

 これはただの調教だ。僕はウィンストンのおもちゃになる。ベルが鳴るだけで唾液が出る体にされるのだろう。生きる理由が何かにすり替えられ、それが幸せだと誤認させられる。彼らのルールが刷り込まれる。 

 でもまだ僕だ。選択は自分で決める。

 隣の労働者とは違う。

 彼は私のちょっかいに言論で返すべきだったのだ。銃をもって僕の口を封じた時点で後ろめたさがあったのだろう。ウィンストンよりも自分を優先した。彼もあの病院の患者と同じなのだ。僕はまだ人形ではない。

 これが僕ができる最後の選択だ。 

 僕は誰の約束を破るべきか。

「      」 

 うっすらと浮かんだ答え。いいや。まだ決めるにはまだ時間はある。


ご覧いただきありがとうございました。

この物語は完結済みのため、添削でき次第投稿します。

次回も皆様とお会いできるのを楽しみにしております!

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