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★大臣と所長の会話4


「彼はなぜ社会からはみ出してしまったのか?父親が国際クルーズ船の船長。母親の学歴だってそれなり。同年代とうまくなじめずに引きこもったのか?それとも就職後か?」

「両親の影響ですね」

「それは断言できないだろう。エレベーター学校に入学できた資金も能力もあったんじゃないのか?大手ゼネコンに行ってから人生設計が狂いだしたんじゃないのか?」

「いいえ。彼が語っている経歴はすべて嘘です。自分の空想にすぎません」

「そんなことに何の意味があるんだ?」

「母親が求める基準に達しないと育児放棄されます」

「ネグレクトか」

「そうですね。洗濯も掃除も母親はしません。母親が考える成長曲線を求められ、ゲームもおもちゃもアニメも与えない。一番困るのは食事でしょう。長期休みは道草で腹を満たしたときもあるとか」

「母親の要求はやはり学力面か?」

「彼は学校内でも上位の学力を持っていました。ただ同世代との関係が上手くできずに友達もいませんでした。友達をたくさん作りなさいという母親の要求を達成することができないといつも困っていたとか」

「父親が国際クルーズ船長なら一年の半分以上は家に帰ってこない。おかしな母親と四六時中一緒。友達を作れと言われても流行を知らないから会話に入れない。ゲームがないから輪に入れない。かわいそうだな」

「母親が息子を自分の人生を完璧にやり直してくれるいいきかいだと認識したんでしょうね」

「誰しも自分の子供には完璧になってほしいんだ。その親心は正しいと思う。ただ、旦那はほとんど留守。母親の育児にかかるプレッシャーはあっただろう。育児が上手にできなければ自分の能力がなかったことも、自分の遺伝子が劣勢だったことも認めないといけない。彼女もまた逃げる場所がなかったんだろうな。ただそのストレスを子供にぶつけていたんだ。劣性なのは確実だろうな」

「そうですね。子供は自分を守るために嘘と現実逃避を学んだんでしょう」

「一番嫌なのがこういうケースは珍しくないということだな。昔言ったことがあるんだ。すべての子供を親元から離して、全寮制の学校を作ろうとね」

「そんなことが?」

「あれ。知らないのか?私を有名にした、いわば事件だ。夢物語だと馬鹿にされ、人権団体から糾弾されたよ。私の代名詞だったけどね。もう別のことになってしまった」

「駅のホームでの殺人事件ですか。大臣の奥様とお子さんが亡くなったあの」

「私のを入れて十人だ。私は敵を作りやすい人間だった。けれど私が原因で狙われたわけではない。そこにいたから殺されて、死にたいがために刺されたんだ。私は許せなかったよ」

「」

「ただね。私だけは復讐できたんだ。自分の職権を乱用して死刑台のボタンを押したよ。二番目のボタンだった。実に痛快だった。『ボタンを押す』と聞こえるように言うと猿轡から苦しむ声が漏れるんだ。そして芋虫みたいにうねうねと動く。あれほどの快楽はこの世にはないだろうね」

「」

「かける言葉がないかい?」

「いえ。違います」

「じゃあなんだ」

「この装置ができたとてご家族は戻ってきませんよ」

「わかっているさ」

「なぜこんな活動をなさっているのです」

「」

「言いたくなければ結構ですよ」

「復讐した日。誰もいない夕飯。何をしていいのかわからなくなったんだ。生きる意味が消えたんだ。心が死んだよ。大臣の在任期間が終われば死のうと思っていた。そんな時博士と出会った。最初は他愛もない世間話だった。話していくにつれお互いの不幸に共感してしまってね。僕らの目的が叶うかもしれないとそそのかされて実験費用をたかられた。おかげで今も働いている」

「そして本当にできてしまったと」

「あぁ。まさかだった。おかげで空っぽの私はこうやって生きられることができているんだ。このシステムは私にとっても生命維持管理装置。この世と私をつなぐ臍帯なんだろうな」

「人間の自由も進化をも消す装置のおかげですね」

「まだわからないだろう」

「いいえ。完成しましたよ」

「君たちがそう言っているだけだ。私は確認していない」

「どのように確認するのです?」

「君たちはどのように確認したんだ?」

「命令への従順度です」

「従順度?」

「絶対に実行はします。成功するのかはまた別です」

「死ねといえば死ぬのか」

「えぇ。殺せといえば殺します」

「すごいな」

「思っていますか?」

「思っている。現実味がないだけだ。私は大切なものを守るあまりに過剰に防衛していたんだろうか」

「仕方がないことではありませんか。誰しも理不尽な目にあいたくありません。その可能性が減ることは歓迎するべきかと」

「…そうだな」

「大臣は確認なさいますか?」

「…もう少し考える。方法が思い浮かばないんだ」

「かしこまりました」

「やつらは確認したのか」

「二十三人。原子力発電所で実験中です」

「あぁ。どおりで」

「心当たりが?」

「除染作業員の被ばく量の単位が違うわけだ」


ご覧いただきありがとうございました。

この物語は完結済みのため、添削でき次第投稿します。

次回も皆様とお会いできるのを楽しみにしております!

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