第九話 期待以上
久しぶりに書くと楽しいなぁ!?
鬱蒼とした森に囲まれていた道場の雰囲気とは一変した、厳格な雰囲気を放つここは“アンテイル魔術学園”
今日は今年度の入学試験を行う日だ。一般枠と特待枠で日にちが被っているからか、受験者が結構いる。それもそうか、この辺りじゃなかなかでかいらしいからなここ。
「人多すぎる...ムリィ」
「しゃんとしろよシン、他の受験生に舐められちゃ今後の学園生活にも支障が出るだろ」
辺りを見渡すとみんな立派なローブを身にまとっていて、肩や胸には家紋のエンブレムを縫い付けていた。いやかっこよ。
「それに比べて俺らはただただ動きやすい服装ですからな、気後れするって」
「シンがこんな調子じゃ後が心配だわ、俺とお前じゃ試験会場が違うんだからな」
そう、俺は元の世界で剣道をしていたこともあってジェイドに剣術の才を見出されていた。その結果、俺は剣術部門での特待枠を目指すことにした。一方のジョンソンは魔術にポイントをかなり振っていたため魔術部門での特待枠を狙う作戦にした。
後余談だが、この世界の算術?まぁ算数みたいなものだけど、元の世界よりもかなり進歩が遅かったため、一応2人とも学問部門での特待枠も狙えたらしい。義務教育、最強!!
「...っ!!おい見ろ!!」
突然、受験生のひとりがある生徒を指さして騒いでいた。俺達も思わず声の聞こえる方へ体を向けた
「カイル・ミッスだ!」
「ミッスって...まさかあの炎帝の誉れか!?」
「今期の試験に参加するって噂があったけど、本当だったんだ...」
皆口々に歓喜の声をあげているけど...いや誰だ。
炎帝...って言ってるから炎を操るんだろうなって感じではあるけど、いやてか体格バカいいな。アメフトやってるアメリカ人顔負けの体格してるって、それでいて全身の傷...まじでthe・ハンターって風格を感じられるな。
そんなこんなでミッス君の全身を舐めまわすように見ていると、別のとこでも騒ぎが起こっていた
「ミランダ・エラー...マジかよ」
「確か最年少で3属性魔法を習得したんだよな?」
「すっげー美人だなぁ、歳は俺らと変わらないはずなのに大人っぽく見えるぜ」
人々が羨望の眼差しで見つめる先にいたのは全身を純白のローブで覆った、俺たちと背丈の変わらない上背にほっそりと、それでいて絹のように滑らかな肌を見せつけている足が魅力的な女性だった。
エレンも可愛らしかったが、別ベクトルの美人って感じだ。髪は銀髪で翡翠色の瞳がなんとも吸い寄せられそうな感覚になる。
「異世界の美人ってやっぱレベチだな」
「あのべっぴんさんは魔法得意なんだよな?ってことはジョンソンはあの子と一緒に試験を受けるんだな」
「だろうね、実技試験は広いフィールドでのバトルロワイヤルらしいから、接敵したらまぁヤバそう」
「骨は拾ってやるよ」
なんて互いに小言を話していたところに、目の前にバカでかい影が近づいてきた。
「見ない顔だな、それにその服装...ここら辺の人間では無いな」
話しかけて来たのはさっきの...なんだっけ?“炎帝のホコリ”?よくわかんねぇけど、すごい圧が感じられた。
「え、あ、うん....ちょっと遠いとこから来た...かな」
「...お前の方が骨になるのは早そうだな」
バカデケェ体格の強面の男に迫られたら、誰だってこうなります。隣で肩震わせて笑い我慢してるジョンソンは後で骨にします。
「そうか、見た感じ剣術の部門での特待枠を狙っているようだが、残念だったな。今年は特に粒ぞろいだ、俺を含めてな。俺以外にも剣を持って“5年も”経っている奴らばかりだ。ま、怪我しねぇように気ぃつけろよ。健闘を祈るぜ」
良い奴なのか挑発しに来たのか全くわかんねぇけど、
「5年...か。言ってくれるじゃん」
一人気合いが入っているところで、会場の門がゆっくりと大きい音を立てながら開いた。
「お集まりの皆様、ようこそアンテイル魔術学園特待生選抜試験へ。これから皆様を剣術部門・魔術部門ごとのフィールドへお送り致します。ご承知の通り、本試験はフィールド内での戦闘を主とする実技試験です。合格者は最後まで“生存”または戦闘続行可能状態と認められた者のみです。参加者にはこちらから支給致します、マジックアイテム“監視の腕輪”。こちらを装着された参加者は、運営から監視されます。戦闘続行不可または死亡とみなされた場合はその場で失格となります」
「「...待って死んだりするの??」」
たかが試験だろ...なんで死人が出るような試験方法をとるんだ!?
そんなこんなで愚痴を履いていると周りの連中は皆血気盛んに盛り上がっていた。この試験では死人が出るのに、まるで自分たちが“狩る側”だと信じて疑わないようにも感じた。
「イカれてんなぁ...」
「2人揃って骨になる可能性、アリッ!」
2人して意気消沈。もう既に帰りたい。
すかさず大会運営からの声掛けで、会場全体がさらに猛りだす。
「それでは皆様をフィールドへ転送致します。フィールドには全試験者を等間隔で配置致しますので、転送後は即試験開始となります。それでは“ご武運を”」
そう言った瞬間、足元に人一人分の大きさの魔法陣が現れた。俺とジョンソンの魔法陣の色が違うから、やっぱり違う会場なんだなと少し寂しくなった。
「ほな、逝きますか」
「イクゥ」
...チラッと見えたんだけどさっきのバカデカ君、わしと同じ魔法陣の色だった。もーー無r
激しい光が放たれたかと思ったら次の瞬間には
──────俺は森の中にいた。
...静かだなぁ
等間隔で配置されたってことは移動してりゃ他の受験生にも出会うことになるな、さてどうしようか
今回の試験では要は最後の3人に残ればいいと云うなんとも単純な試験だ。初動はハイドで戦闘はなるべく避けたいな、初動で戦闘を起こせば、ほぼ確実に漁夫される。...隠れるか
草むらでは簡単に見つかってしまいそうなので木の上とかにしようかな。上手く行けば奇襲とかもできそうだし。
そう考え、木の上に身を隠した途端だった。自分がさっきまでいた辺りから足音が聞こえた。耳をすましていると、足音が急に止まった...と思ったら
「そこかぁっ!!」
「っ!?」
俺が隠れていた木に向かって、恐ろしく早い斬撃を繰り出してきた。なんで!?わし隠れとったやん!!??
「あぁ!?なんでバレたんだよ??」
「は?お前、索敵も知らねぇのかよ。アンテイル魔術学園もレベルが下がったな。こんな雑魚が特待枠狙いに来てるなんてな」
「まぁ、それはそう」
「否定しねぇのかよ...」
そりゃわしも色々覚えたかったけど、ジェイドとの特訓では剣術を中心に訓練して、その他の魔術は剣術に役立つ最低限のものしか習得してなかったから、サーチなんて知らない...
「まぁいい、俺も鬼じゃねぇからな。苦しまねぇように一撃で屠ってやるよ」
「流石に屠られるのはいやなので、反撃します」
なろうの題名にありそうなセリフを言った後に、俺はすかさず鞘から刀を抜いた。
「なんだその剣?細すぎるだろ、そんなチンケな剣で俺に勝とうってのか」
「めっちゃ悪役みたいなセリフ言うやん」
思わず口に出てしまったツッコミに苛立ったのか、勢い任せにこちらへ突っ込んできた。俺の刀より一回り大きい剣を大きく振りかぶりながら近づいてきた。
「やりやすいことこの上ないな」
"相手が無防備に刀を振りかざしながら飛び込んでくる"そんな相手にぴったりな剣撃を、見せてやる
「絶唱返し!!」
振りかざされた剣を斜め下へ刀で流し落とす。その後、刀の軌道を流れるように相手の腹部へ返し、切り伏せる。
剣での戦い、それも対一であればかなりの有効打になる技だ。相手の体には深い傷跡が刻まれ、多量の出血がある、、、長くはないと思う。
...ちなみに技名はこっちの世界のにした。もう流石に恥ずかしかった。
「な、何しやがった...剣の軌道が見えなかった、お前なんなんだよ」
峰打ちはしなかった。追撃されたら面倒だったからな。
息も絶え絶えの状態、悔しさからか奥歯を噛み砕くかのような形相でこちらを見てきた。ジェイドとの特訓の最中、魔物の血を浴びることも少なくなかった。、、、その中には人の形に似た魔物も、
そんな時だった、俺が放った斬撃が遠くの位置まで届いてしまったのか、続々と受験者が集まってきてしまった。皆、漁夫の利を狙ってのことだろう。ただ、一人、明らかに別の目的で集まった者がいた。
「...期待以上だったなぁ?」
「カイル・ミッス...!!」
品定めにでも来たのかよ...




