第十四話 あ、そういう感じ?
日常回
試験を無事...じゃないけど何とかクリアした俺たちは、晴れてアンテイル魔術学園への入学が決まった。
「ンアァァアア///」
「...朝からキメェよ」
朝イチの伸びが気持ちいい今日、彼らは窓から零れる朝日の眩しさとエレンが作っているだろう朝ごはんのいい匂いで目を覚ましていた。
彼らはジェイドが世話になってる道場の部屋の一角を借りて普段生活している。ここで朝起きてエレンが作ったご飯を食べて、他の門下生と昼間に鍛錬に勤しむ、それが2人の日常だ。
「にしても...ニヘヘヘ」
朝イチに道場に届いた合格通知書を掲げながらニヤニヤが止まらないコイツはシン。
剣術の特待枠での入学が決まって、数日後にアンテイル魔術学園への入学が決定している。
「嬉しいのは分かるけど、いい加減顔洗えよ。飯行くぞ」
横で「ハァ...」と大きくため息を着いてるのはジョンソン。
こいつもアンテイル魔術学園への入学が決まった魔術枠での特待生だ。こいつは絶世の美女であり、文武両道を体現したような聖人、ミランダと共に試験を突破したんだと、羨ましい。
ん?あー、一人称じゃないって?どうも、シンの中身です。
卓に着いたシンはエレンが用意してくれた米を口いっぱいに頬張りながらなんとも嬉しそうに隣に置いている合格通知書を眺めている。
「オッホ、これでワイらも学園生ですか、イイぞぉこれ^^」
「おめでとう2人とも。ほらシンお椀貸して、よそってあげる」
そう言って朝から新妻ムーブしてるのはエレン。エレンの炊く米は本当に美味い、これを朝から食える俺たちは幸せもんだなぁ...そう考えている俺の目の前では...エレンもニヤけている...
「2人も...後輩...ニヘヘヘ」
「...ジェイドさん、朝からこのふたりが気持ち悪いです...」
「ま、まぁそう言ってやらんでくれ...シンも割と試験で苦労したっぽいし、エレンも学園で初めての後輩が出来たりだし...」
苦笑いを浮かべながらジョンソンを宥めるのは、年齢の割に髭にたくましい髭を携えているジェイドだ。
彼はこの道場の門下生にして現在の師範の立ち位置でもあったらしい。最初は「世話になってる」なんて言っていたからまさか師範の座にいたとは思わなかった。
そんなジェイドは、朝は俺たちと共にエレンが作ったご飯を食べ、昼は俺たちに剣術や体術の指導をしてくれている。
朝ごはんを食べる手がゆっくりになったシンが、おもむろに口を開けた。
「にしてもさぁ、カイル・ミッス...あいつまじで強かったんよ。」
「たしかに、お前のレベルならアイツ程度なんともないはずなんだけどな」
そう、俺やジョンソンはこの世界にいる誰よりもレベルが高いはず。カイルにレベルを聞いた訳では無いがそれでもレベル差は少なく見積っても40はあるはず...それなのに俺はあそこまで苦戦、いやほぼ死線だった...。
「ジェイド、ひとつ聞きたいんだけどさ」
いつになく真剣な顔つきにジェイドも手をつけていた卵焼きを一旦皿に戻し、箸を置いて話を聞く姿勢になった。
「ひとつ気になったんだけど、同じレベル内でもステータスに差があったりするのかな」
「...ッ!?」
ジョンソンの顔がハッとしたのが見えた。そう、俺たちの世界でも割と馴染みのあるステータスの“初期値”、もしこの初期値によってレベルアップ後のステータスに大きく影響するならば、レベルアップの1ポイントが倍率値UPだろうと固定値UPだろういずれ初期値による差はかなり顕著に現れるだろう。
もし本当に初期値なんて言う概念があるならカイルとの戦闘がかなり苦しかったのも腑に落ちる。
シンの質問にキョトンとしたジェイドも、顎に手を当てて考え出した。
「そーだなぁ...あんまり意識してみたことはねぇけど、まぁ言われてみればそんな気がする場面は過去にあったな...」
「た、例えばどんな??」
またジェイドが考え出す、なんか言えない感じなんか?
「いやぁあるにはあるんだが...何分騎士団内でのあれだからな...言っていいのかこれ」
「周りに言いふらしたりしなけりゃいいでしょ!」
隣で静かに味噌汁を啜っていたエレンが助け舟を出してくれた。目配せでこちらにこっそりウインクをしたエレンの顔、あー可愛いっす。
「まぁお前らが誰にも言わねぇってんならいいぞ」
「言ったら針千本飲ましていいよ」
なんだそれ?みたいな顔で見てきたジェイドに少し冷静になった俺はゴホンと咳払いで空気をリセットした。
ゆっくりとジェイドが話し出した。
「俺の居る騎士団の剣術訓練での話なんだが、俺とそうレベルが違わない先輩とよく模擬戦をするんだ。だがその模擬戦は基本俺が勝っちまうんだよ。戦略や剣術はほぼ五分五分、それにステータスポイントもほぼ同じ振り分けだ。それでも大体、いや全勝だな...シンが聞きたいのはこういうので合ってるか?」
確信にもう一歩近づきたいシンは卓に前のめりになりながらさらに質問を重ねる
「もう1個聞いていい?ジェイドがよく模擬戦する先輩の元の体型は?」
「元の体型??いやぁあんまり覚えてねぇけど俺に比べてかなり貧弱そうではあったぞ、今は訓練のおかげで俺とはほぼ差がない体格にはなってるけどな」
これでほぼ、いや確信がいった。この世界には初期値がある。レベルアップ後のステータスが初期値に影響されるなら今の俺たちはおそらくこの世界の20レベ前後程度だろう。
「てか急にこんなこと聞いて一体なんだよ、」
質問攻めを食らったジェイドが若干訝しんだ目をこっちに向けてくる。いやごめんて
「ちょっと考えてたことがあってさ、いやぁ〜俺らの当分の目標が決まったわ」
「そうだなー、でもどうやったらいいんだか」
ジョンソンでも悩んでいるこの状況、まぁ無理も無いわな。俺たちがこっちに来てから随分経つが、レベルアップできたのは後にも先にも最初のブルータル種の討伐時のみだ。初回討伐の恩恵とか?って最初に思ったりしたけどやっぱりよーわからん。
「なージェイド〜、どーやったらレベル上がるん?」
「ん?んなもんお前、魔物討伐くらいしか思いつかねぇぞ」
魔物、生きる者、命を奪って経験値を得る。
命=経験値ってのはこの世界に来てからある程度分かってた。自分たちでどれだけ訓練しても経験値がうんともすんとも言わなかったからな。(ちまちまゲーマーだったジョンソンは訓練開始1週間後に経験値上がらなすぎてキレてた)
「まぁそしたら当分は魔物の討伐をメインにしたいよなぁ、まぁまぁ戦えはするしもしもの時はバフだったりガチで謎の攻撃手段“オォン”もあるから...行けるっしょ」
「んな無計画な...」
ため息を隣で吐かれて朝からジト目がお互い止まらないところにジェイドが話しかけてきた。
「魔物の討伐するんだったら冒険者ギルドに登録した方がいいんじゃないか?」
「あー前なんか言ってたな、でも俺そのギルドいい印象ねぇよ??」
「勇者の話はそんなに縁がある話じゃねぇよ、普通に依頼受けてこなしてりゃそうそう声はかからねぇしな」
「うえぇ...」
なるべく目立たないように立ち回ろう、そう考えているところにジェイドがニヤニヤしながら手で金のジェスチャーをした
「それに、魔物討伐系の依頼はなぁ〜、“これ”の羽振りもいいんだぜぇ」
「オッホ、そりゃぁは魅力的だ」
目が金になるジョンソンと俺にジェイドがスンとした顔になって淡々と言い出した
「あとお前らタダ飯食らいだから道場に金入れろよ。」
うーん滅
マジギュンギュンギュンスキスギテメツ




