第十一話 コォレ勝ったな
あぁ19191919191919
死人の墓を簡易で作った俺は、その墓の前で手を合わせていた。鬱蒼とした林の中で、木漏れ日が墓を照らしていた。
悲しみか、後悔か、自分でも感情を理解できなかった。そのせいだろう...
背後から迫ってきた弾道は、俺の頬を掠めた。
「...ッ!?」
敵からの攻撃だということを即座に理解した俺は、瞬時に戦闘態勢に入った
躱せなかった...だがおそらく直前で軌道が変わっていた、一体誰が庇ってくれたんだ?
「人の死を悼む者を背後から襲うだなんて、あまり褒められたものではありませんね」
そう言って木陰から姿を現したのは試験開始前に、受験生達を騒がせていた...
「ミランダ...だと..、なぜ邪魔したんだ!?」
俺を襲撃したであろう受験者が、困惑していた。当然だ、ミランダの行いは試験内容から逸脱していた。
でもそのおかげで助かった...
「先程も申したように、この方は自身が屠った死者への弔いをしていました。この試験において、このような“愚行”は自身の身すら危うくさせる...」
ミランダは俺を見て笑顔を浮かばせた。この試験内容に対して、彼女も不満を抱いていたのだろうか。
ミランダは目の前の試験者に向かい直して、軽蔑の目を向けた。
「貴方には到底真似出来ないでしょうね」
「真似する気なんざ更々無いからなぁ!?」
激昂する受験者は自身の前に杖を構えた。その杖の前には赤く光る炎を灯していた。
「中級魔法...炎弧の金切り!!」
「...ッ!?」
炎属性の中級魔法、その中でも上位に匹敵するレベルの技だった...目の前のミランダですら、固唾を飲んで防御に徹する姿勢を見せる。俺はさっきこの人に助けられたんだ、だったら俺がやることは...!!
走り出した俺はミランダの前に出た、俺だってジェイドのとこで遊んでばかりだった訳じゃない!
「ちょっと!?貴方正気ですか!?あれは上位魔法にすら匹敵するのよ!?」
「でもだからって貴方でも防げるか確証がないのでしょう??だったら試してみたいんです...」
ジェイドのところで学んだ...“上級魔法”
これは攻撃手段じゃない、自分の身を守る、誰かの身を守る手段だ。
実践での発動はまだやったことないけど、ここでやれたら...
───かっけぇだろうがァっっっっァああああああ
「うぉおおおお!!!絶対防御!!」
目の前まで迫ってきた炎の魔法弾と自身との間に発生した青白い魔法の壁は俺とミランダを覆うように湾曲した。目の前から迫ってくる攻撃が後方にいなされていくようだった。
「はぁ!?この技を食らって、なんで無傷なんだよ!?これを防げるのは魔道具か絶対防御くらいしか...ッ!?」
「なかなかお強い方でしたが、私とは相容れないでしょうね、岩石弾」
そう言った彼女から放たれたストーンショットは、受験者の腹部を穿った。破壊力が凄まじかったのか、受験者の上半身が弾け飛んでしまった...洒落にならんレベルでグロかった。
しかし、とても洗礼された魔法だった...従来のストーンショットよりも強度も形状も確実に上であった。あんなもので腹を貫かれたら...ウホ
さすがに寒気が止まんねぇ...まじで敵にしたくない...
そう考えていると、ミランダがこちらへ近づいてきた。彼女はとても腰を低くした姿勢で話しかけてきた。
「先程は、防御してくださりありがとうございました...正直、あの攻撃を無傷で受けきれる自信がなかったのです...」
そう言っている彼女の目には悔しさが滲み出ていた。これほどの力を持ち、皆から賞賛を受ける彼女ですら、力及ばないことがあるのだと知り、なんだか親近感が湧いた。
「僕も、最初に貴方が攻撃の軌道を変えてくれなければ...とにかく、ありがとうございました!!」
そう言ってお礼をしたら、ミランダが毛先を弄りながら俺を見つめ、恥ずかしがりながらとある提案をしてきた
「もしよろしければなのですが、この先の試験も、共に行動してはいただけないでしょうか...二人で行動してはいけないというルールもないですし、私が攻撃、貴方が防御をになっていただけたら、向かうところ敵なしです!」
俺からしてみれば、今回の試験で最も敵に回したくないであろう人から、思ってもみない棚ボタ提案が飛んできたんだ。受けない手はない。
「こちらこそ、心強い限りです!」
シン、わし勝ったわ。骨拾っちゃるからなぁ^^(心の声)
────── 一方
「いいよ、来いよ!!」
そう言った俺の体は嘘かと思うほど軽くなった。手に持つ剣ですら綿毛のように軽く、まるで体の一部にでもなったかと感じる程だった。体は熱を帯び、溢れ出る闘気が周囲にいる受験者を襲う。
「な、なんだアイツ...どうなってんだ!?」
「気配がまるで違う、どんなバフを使いやがった!?」
「それに、猫耳まで生えてるぞ!?」
この世界には存在しないであろうこのバフ、いいぞぉいい反応だ...
体からは闘気が溢れて、体は熱を帯びてる...おまけに猫耳...猫耳??
耳を疑ったが、確かに聞こえた。猫耳??
震える手で頭の方を撫でてみると...確かにある。モフモフの何かが。
えーと...ナンジャコリャァァァァァァアアアア!?(心の声)
くっそキメ顔でバフかけたってのに...猫耳じゃあ格好つかねぇじゃねぇか!?でもこれがバフの状態なら...今後もこの格好になるんかな、嫌だ...泣
そう心の中で呟いていると、目の前のカイルが苦しそうに、それでも確かな闘気を瞳に宿しながら立ち上がった。俺のさっきの攻撃?か何かで身体はボロボロのはずなのに...
「いいじゃねぇか、やっぱ殺し合いってのはこうでなくちゃなぁ!?」
「ほんとイカれてるよ、あんた」
カイルはその手に持った大剣を大振りに振りかざした。その威力は絶大だった。
周囲の木々が瞬く間になぎ倒された、
「ッ!?」
俺も必死に防御に転じたがそれでもダメージをゼロにできなかった。肩に強烈な斬撃を食らった俺は、少々よろめきながら後退した。防御に10ポイントも振ったのに、それでももろに食らえばこうなってしまうのか...
「痛ってぇ...」
「そんなもんかよ...おれはまだ戦えるぞ?」
目の前に広がった鮮血、肩からあふれる血液、滞ることなく襲ってくる痛み...
命の取り合いだと改めて認識した...俺は今、あいつに命を狙われていて、あいつもまた、俺に命を奪われまいと必死なんだ...
こんな感覚、現世では経験することなかっただろうに...ほんと、すごい世界に来ちゃったな―――――――
感覚が違うんだ、俺らがやってたゲームじゃない。残基のない...負けたら一発ゲームオーバーの世界。
その危機感が、焦燥感が、俺の神経を研ぎ澄まさせた。
スポーツで言うところのいわゆるゾーンと呼ばれる状態だろう。
さっきまで力強く握りしめた刀から、少しだけ力を抜いた。
相手が踏み込んでくる前に、俺が!!
爆発的なまでに上昇した膂力で、地面を蹴りだしてカイルに向かって飛び込んだ。
一瞬反応が遅れたカイルだったが、それでも攻撃の為に大剣を振り上げた...が
斬撃を出すには大き過ぎる大剣を振りかざしたころには、俺はもうカイルの懐に潜り込んでいた。
「獣王牙突―――!!!!」
手に持つ刀から、放たれた打突はカイルの腹部を直撃した――。
カイルはたまらず血を口から噴き出した。その手にあった大剣は音を立てて地面に落ちた。
渾身の一撃だった。それでもカイルの腹部を貫通することはできなかった。おそらくカイルの身に着けている防具が凄まじいのだろう。
「はは...やっぱ、期待以上だったな...」
「...」
こいつはどうも憎めない、試験が始まる前から言っていた期待以上の意味が分からなかったが、こいつはどこか寂しそうな顔をしていたような気がした。気のせい...かな
地に伏せ気絶しているカイルを地面に寝かせる俺を後ろから切りかかってきた者がいた。
「ッ!?」
間一髪で避けれたけど、さすがにさっきの一戦でなかなか体が言うことを聞かない。
そして俺は気づいた、なぜこんなにも試験者がいたのに誰も戦わず俺たちの戦いを見ていたのか、なぜ乱闘が起こらなかったのか...
「猛者だったカイルもいねぇし、あいつとやり合ったお前も満身創痍...テメェさえ殺せば、もう敵はいねぇも同然だな??」
漁夫の利ってやつかよ...
ドピュッ




