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第十話 可能性

ちょいとステータスの内訳とか色々変えた

転送後、早々に危機に陥ったシンだったが、ジョンソンもまた危険な状況だった。


「くっそッ!等間隔でのテレポートじゃなかったのかよ!」

「等間隔だったぜ!でもよぉ、俺にはこの暗影漣飛(シャドウ・インセクト)がある!こいつぁ便利だぜぇ??影から虫形の式神を出せるんだ!コイツらに跨りながらサーチを使えば一瞬で索敵からの奇襲ができるってわけだ!」


テレポートしてからわずか数十秒で索敵に引っかかってしまったジョンソンは、絶賛逃走中だった。そして奴が使っている魔術には見覚えがあった。

ジェイドとの特訓の中で様々な魔術に関する文献を読ませて貰った。その中には本当に多岐にわたる魔術の種類が載っていた。

こいつが使っている式神召喚のような芸当もそこに載っていた。こいつらに対する戦い方は...


「式神を出している本人を倒すんだけ...どぉ」

「なんだ?ビビって動けねぇのかぁ?」


いやぁ、ビビるよねそりゃ。

だって今アイツが出してる式神さ、カマキリ、アリ、そしてG...。

生理的にも受け付けねぇし、あの範馬○牙も言ってたように、カマキリやアリが人間サイズになりゃ人は勝てないってな。

アイツが召喚する式神はどれも人間サイズにまで巨大化している。正味無理...あっ


すっかり現実での脳で考えてしまっていた。ここは異世界で俺は“魔法使い”じゃん。忘れてた。

まるで袋のネズミを眺めているかのように俺を見つめる目の前の虫野郎に向け、エレンから譲ってもらった木製の杖を構える。


「そんなヘナチョコな杖からじゃ初級魔法ですら」

香蓮の砂撃(ロータス・ショット)ッ!!」


杖から放たれた植物の種子のような物体は、凄まじい回転とともに爆発的な加速によってまるで本物の弾丸のように敵の右胸に命中し、穿った。

...訓練では魔物に対してだけ魔法を使っていた。人に向けたことなんて、あるわけない。"初めて人を殺める感覚"というのは、現代人にトラウマを植え付けるのにそう時間はかけないものだった。


「オ"ェエ"ッ...」


目の前で弾け飛んだ肉片が...さっきまで鼓動を響かせていた心臓が...そこらじゅうに飛び散っている血飛沫が...

命を狙われていた。こうしなければ確実に俺が死んでいた。でも、ほんとにそうだったのか?話し合っていたら、もう少し互いを知ろうと思っていれば...あまりにも残酷な現状を静寂が静かに突きつけてくる、この凄惨な現実にも、いずれ慣れるのだろうか。俺たちは、とんでもない世界に来てしまったのではないのか...。

ギルドで過労死寸前までこき使われるハンターや勇者、学園の試験程度で死人を出させる制度...この世界はどこか、人の命を軽んじてるように見える。


自身が倒した...殺した相手の亡骸を草むらの中へ避け、簡易的だが墓を立てた。罪悪感か、それとも一種の覚悟か、今の俺は殺人を前向きに捉えようとしていた...心底気持ちが悪い。はずなのにどこかスッキリしている。異世界の世界観に、順応していけているのか...順応していいのか、

自身の在り方を葛藤していたからか注意が散漫になっていた...


後方からの攻撃魔法に気づけなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━


「期待以上だったなぁ」

「カイル・ミッス...」


まずいな、周りにこれだけの人数がいる中でこいつの相手は骨が折れるどころじゃない...

周りの奴らはなぜか切りかかってくる様子がない...何考えてんだよ。


「周りの奴らがそんなに気になるか?」

「まさか、むしろちょうどいい機会だね。かの有名な炎帝の誉れ様がどのような剣技を見せるのか、みんな気になるだろうし。かという俺も、見られながらだと気分上がるね」


余裕綽々の意思を見せてみて不敵な笑み的なのも見せてみたけど、全く態度がブレねぇ。こいつのステータスも知らねぇからこっちからも迂闊に攻め込めねぇし...


「来ねぇならこっちから行くぞッ!!」

「ッ!?」


その体躯からは想像もできない程の膂力で一気に距離を詰めてきたカイルは大振りでの天面砕きを繰り出してきた。

間一髪で避けはしたものの、まともに喰らえば致命傷だったろう...


「ちっせぇ体だからか身軽だな。逃げてばっかじゃぁ俺には勝てねぇぞッ!!」

「ほんとに嫌になる...力任せの相手はイッチャン嫌いなんだよッ!!」


力で押し負けてしまったら、先程のカウンター剣術が通用しなくなってしまう。力任せの技は技術で受け流すにしても、力の差が大きすぎればそんなのは全く効かない、、!


「いや待て...?俺のレベルは80ちょいだったよな...冷静に考えれば俺はそこら辺のヤツらよりステータスが高ぇんだ...!!」


斬撃が飛んでくる合間に、無駄に頭脳にポイントを振った俺は思考を巡らせた。

俺のステータスはパワーに10振っている、そこらの平均レベルが20前後であると仮定すれば、極振りされない限り、俺のパワー10ポイントを超えることは無い!!


自信が出てきた俺はすかさずカイルに聞いた


「カイル!!お前のレベルはいくつなんだッ!?」

「あぁ??剣士やってて俺のレベルも知らねぇのかよ!!」

「知らねぇよ!?くッ...!!」


瞬く間に襲いかかってくる大剣から、俺は逃げるしか無かった。やつのレベルやパワーの数値が分からなければ、こっちとしては対策の仕様がないし...


「俺のレベルを知ってどうする!!さっきの雑魚を倒していい気になってるかもしれねぇが、さっきから逃げてばっかのテメェ程度じゃ俺を倒すなんてできねぇんだよ!!」

「そうか...ッよ!!」

「なっ...おい卑怯だぞ!!降りてこい!!」


斬撃から逃げるため、木から木へと飛び移る様を、カイルは見ているだけしかできないらしい。やっぱりやつのステータスが気になる...。


「お前スピードは早いけど、それはパワーでカバーしてるだけだろさっきのお前の走り方、足の回転自体は全く速くなかった。跳躍を駆使した走り方だったな」

「ッ!?」

「正解、だな。俺の勝ち。なんでバレたか、明日までに考えといてください」


虚を突かれたかのような表情を浮かべるカイル、やつの爆速のからくりが分かったが、同時にもっと嫌なことも分かった。

...やつはほぼ確でパワーに多数のポイントを振っている。先程までの斬撃も、勢いよく振りすぎていた影響で、フィールドのほとんどの地面がえぐれてしまっている。本当に恐ろしい、こんな斬撃をもろに喰らえば...死ぬ。


「俺の足の速さの秘密を知ったからって...それがなんだ。貴様は現に、その木の上から降りられずにいる。俺から逃げるので精一杯なのは確かだろう」


流石にこのまま逃げ続けるのはジリ貧だな...周りは他の受験者に囲まれてるし、結構詰みか?


「あぁ〜異世界来て、勇者よりレベルとかで楽に無双できると思ってたのに...あれ、」


そういえば俺ってなんでこのレベルになったんだっけ...確かあの魔物を...いや、今の俺でも5割の力でやっと勝てるような相手だったし、それに俺が倒した確証もない。そもそもレベルが1だった俺が、どうやって...


今考えても仕方が無いことであるのは分かっている...でも、どうしても引っかかる。


「...オォン??」


たしかに言っていた。こっちに来た瞬間、死を覚悟して咄嗟に出た言葉「オォン」。こいつに意味があるだなんて考えられないが、どうせこのまま行ってもそのうち殺されるんだ。物は試し!!


「オォンッ!!」

「...は?ガッハハッハハァッwww」


目の前で変な雄叫びをあげた俺を、おかしなものを見ているかのような目で周りのヤツらが指をさして笑いだした。


「なんだぁアイツ...獣みてぇ」

「案外獣だったりしてな!ガハハ!」

「田舎者はあんななのかぁ??」


皆口々に俺への罵倒を言っていたが、目の前のカイルは微動だにせず地面を俯いていた。


「...グファッ!!」

「「「...ッ!?!?」」」


俺の目の前で立っていたカイルが、吐血し地に膝をつけたのだ。こいつの症状...あの時の魔物と似ている。

全身から滲み出る鮮血、皮膚が自分から裂傷のようなを浮かばせる。


「お前ェ...な"に"じや"がっだ!?」

「まじかよ...。使えるのか、この“ネットミーム”...」


Sランクの魔物を一瞬で屠ったこのワード、原理はどうであれ相手にダメージを与えられることは分かった。


ネットミームがどうやってこの世界に影響を与えているのか全分からないが、ネットミームだったら俺らの専売特許...!!!


カイルは吐血して、ダメージを受けたけどまだ戦えそうだ。“自分自身にバフが入るような”うってつけのネットミームってなんかあるかな...


こうなったら試すだけ試してみよう、ここにはそれにうってつけの人数が居るしな。


━━━━━━━━ネットミームの可能性を信じて。


「いい世、来いよッ!!!」


授業暇すぎ

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