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囚われの洞窟

囚われの洞窟

フレイディアに促され、中に入ります。一歩踏み込むと、先ほどの道とは全く違いました。大きな空間の中で、何かが無数に光っています。

「ジェニー、ライトを消してみて。」

ライトを消した途端、

「うわーぁ!」

3人は思わず息を吞みました。そこにあったのは、まるで宇宙の中に放り出されたような暗闇と、星々の瞬きのような青白い光の海でした。目が慣れてくるにつれ、そこは何本もの太い柱、祭壇のようなせり上がった一枚岩、その上には大きな石棺が据えられているのが見えてきました。

「ここは何?礼拝堂のようにも思うけれど、こんなに星が光ってるのは見たことないわ。」

「これ水晶よ。全部水晶の結晶から光が出てる。」

「ミーティア、試しにその水晶に振れてみて下さい。」

「なんでよ。」

「さっきからあなたは不思議な力を使っていることに気が付きませんでしたか?」

フレイディアが代わりに答えます。

「岩が動いたり、扉が開いたり?」

「そうです。その力、まさかとは思うのですが。」

「なによ、二人とも。深刻そうな顔をして。偶然でしょ、偶然。」

と笑って言いながら水晶に触れると、ポキュッと音がして、水晶の結晶が折れてしまいました。

「ああ、これどうするのよ。折っちゃった!怒られちゃうわよ。」

水晶がボワッと蒼く光ると周りをいくつもの金の光の粒が回り始めました。

「え、何これ、奇麗だけど、ちょっとフレイ何とかしてよ、フレイってば!」

蒼い光は青白い光に輝きを増し、それに伴って金色ダストもだんだんと早く、そして自由に回り狂うようになっていきます。それに合わせて、他の水晶たちも青白く輝き始め、あたりをまるで真昼のように明るく照らし出していきました。

「ちょっと!怖い、怖い!どんどん大きくなるぅ。」

やがて光は一つのビームとなって、まっすぐに祭壇の下へ伸びていきました。

「あの下に、きっと何かがあるんだわ!」

フレイディアが気づくと、ジェニーも同じように頷き、祭壇に駆け寄りました。その時です。石棺の蓋が大きく跳ね上がり、漆黒の影が飛び出したかと思うと、3人に襲い掛かりました。

「逃げて2人とも!」

ミーティアが叫ぶと同時に、ジェニーの髪がエメラルドのように光りだし、その周りにも金の光の粒が無数に取り巻いたかと思うと、あちこち飛び回り、襲い来る影に向かって一直線、鋭い風が突き抜ける様に闇を払いに立ち向かいます。

「フレイ、聞いてください!祭壇の下に、何かあるはずです!スイッチみたいなものはないですか?何か石で出来た仕掛けがあると思うのです。」

フレイディアは祭壇の下を探り、もともと知っていたかのように仕掛けを見つけました。そして、

「あったわ!」

といって、石のブロックを倒します。

大きな音とともに、祭壇が後ろへ下がり、大きな階段を覗かせた四角い穴が広がりました。

「うん。そうね。まあ、よくあるっちゃ、あるわよね!」

「冗談じゃないわ、ミーティア!こんな事そうそう起こるもんですか!おかげであちこち擦り傷だらけよ!」

「わぁたしのせいじゃないもの。それにしても一体何だったのかしら、あの黒い影!すごく寒い感じだったわ。」

いつの間にか、黒い影は消え去り、水晶の光も、ジェニーの髪の色もすっかり元どおりのようです。ただ、無数の水晶たちは青白く光り続けているのでした。

「さあ、何から考えたら良いのかしら。」

「まず、私が触れた水晶よね。」

「まるで、剣のようでしたわ。」

「もう偶然とは言わせないわよ。」

「そんな事言ったって、私の力じゃないわよ。それよりジェニーの髪が造った光の嵐みたいなやつ。もう、ビックリ。この世界がきっと私たちをおかしくしちゃってるんだわ。もう、それしかないじゃない!」

「そうですね。何かしら不思議な力が、私たちに使えるようになったのは事実のように思います。」

「フレイだって、祭壇の秘密を暴いちゃったじゃない。」

「だって、あれはジェニーが教えてくれたから・・いえ、待って。私、知っていた気がするわ。だって何をすればいいのか解かってたもの。」

「ほら見なさい。たぶんみんなおかしくなったのよ。」

「変な言い方しないでよ。」

「皆さん、この階段はやはり降りていくべきでしょうね。」

「そうね、昔の教会の地下には、罪人を閉じ込めた秘密の牢があるって聞いたことがあるわ。秘密の処刑場とか、拷問部屋とか・・。」

「ちょっと、変なこと言わないでよ。さあ、行くわよ。ジェニー、ライトは?灯りをつけて頂戴。」

「実はライトが点かなくなってしまいました。さっきからやっているのですけれど。電池切れかしら。」

「なんて役に立たないんでしょ。ハートランド先生のセレクションも大したこと無いわね。帰ったら文句言ってやりましょうよ。」

「とりあえず、この水晶で何とかならないかしら。」

ミーティアが水晶をつかむと、先ほどと同じように青白く光るのでした。ただ、金色ダストは出ないようです。

「まあ、なんだかわからないけど、これで行きましょ!」

「あんた、もう、なに、鈍感ってゆうか、なんか、もう豪快ね。」

大変な状況のはずなのに、3人は声をあげて笑ってしまいました。

階段は地下深くまで、続いているようでしたが先が暗くて見通せないのでどのくらい進めばよいのか、見当もつきませんでした。

でも、ひんやりした空気を感じると、水の流れる匂いがすると、ミーティアが言い出しました。

「匂いって、あなたやっぱり犬のようね。」

「えー?水って匂うでしょ?え?違う?」

しばらくすると、皆にも水の流れる音が聞こえたので、ミーティアは得意げです。鼻を鳴らしながら、「どうよ」とばかり水晶を振り回して見せました。

「それにしても、この水晶の灯り、もっと大きくならないかしら。回りがちっとも見えやしな。い」

「ミーティア、この穴に水晶をはめ込んでみて。」

指さした先を見ると、かすかに金色の光の粒が(さっきよりもっと小さな)穴の周りをゆっくりと回っています。ミーティアは水晶を鍵のように差し込んでみました。

「今度は何が起きるの?なんか出るんじゃないでしょうね。」

その時、壁にはめ込まれた沢山の水晶たちが、まるで蠟燭の灯りのように揺らめきながら光りだしました。どんどん光の波が広がると、そこはかなり大きな洞窟であることが判りました。足元に見えるのは桟橋です。静かに水面の広がりが照らされていきます。光が天井を覆いつくすまでになると、そこは地底に広がる湖とその港であることが判りました。先ほどの桟橋には、小さな手漕ぎのボートが何艘か漂っています。

「これって・・・。」

3人が口を開けて見上げる先は、湖の島に立つ巨大な鳥の石像でした。その石像は、首や足に枷を嵌められ、飛ぶことを禁じられたかのように、八方を鎖で留められ縛られていました。

「あれ、結界だわ。」

フレイディアが仕掛けに気づきました。

「どう思う?ジェニー。」

「わかりません。これほど大きな石像ですが、神獣というわけでは無さそうです。ただの石像とも思えませんが、あの結界はやはり何かを閉じ込める為のもののようですね。」

「やばいっ!伏せて!」

ミーティアが叫ぶと、さっき消えたはずの黒い影が、すごい勢いで向かってきます。

「さっきより増えてる!」

「それどころか、バチバチいってるじゃない!」

「あれ、たぶん触ると黒焦げになるやつだわ。」

思わず、逃げ惑うしかない3人です。

「ボートで逃げましょうか。」

「間に合わないわ!」

「水晶の剣ももうないのよ!どうやって戦えっていうの!」

その時です、壁で煌めいていた無数の水晶の灯りたちが、くるりと翻ると、光の刃となって黒い影たちに降り注ぎました。

実体のない姿でも、光の剣にふれると、そこから火が噴き出て、焼き尽くされていきます。そして次々と落下していきました。燃えながら壁にぶつかるもの、石像に当たるもの、水におちて黒く溶けるもの、様々でしたが、しばらくすると影たちは文字通り霧散してしまったのです。

辺りは、まだ焼けた残り火が広がっていましたが、先ほどの小舟が一艘音もなく水面をすべり、3人の前で停まりました。

「ほんと、これ魔法の世界だわ。」

「これに乗れっていうのかしら。」

「行ってみましょう。」

3人が乗り込むと、小舟はやはり音もなく水面を進み、石像のある島に向かいます。

「やはり、結界が張られているようですね。」ジェネスが言いました。

「結界って、どうすれば破ることができるのかしら。」

「そりゃあ結界を結ぶ柱を壊せばいいんじゃないの?」

「なんで、あんたそんなこと知ってるのよ。」

「あら、本当。でも不思議と思いつくのよね。」

「ね、柱ってどれかしら。」

「島の周りを水晶柱が取り囲んでるわ。えと2、3・・5本ね。よしっ!へし折ってやるわ!」

「待ってください、フレイディア。この柱は力ずくでは壊せないと思います。これは五芒星を模っているようですから、何か魔力がカギになるのではないでしょうか。」

「ここは、やっぱり私の出番かしらね。なんかさっきから調子いいのよね。妖精魔法の世界なんだから、もうなんでも来いよ。まず最初はどの子から行こうかしら。」

そういって、足元の水晶に触れようとしたとき、急に指先に電気が走ったかのような痛みに襲われました。

「イタッ!何?これじゃないのかしら。」

「きっと順番があるのよ。そうね、この像の正面が1としたら、星を書くなら次は向こうの柱ね。そう次はこっちに戻って、それ。次はまた向こうの、そう、それ。」

フレイディアの指図通りに触っていくと、水晶柱は青白い光を放ちながら、静かに輝いていきました。そして最後の水晶柱に触れた時、金色の粒たちが一斉に柱から噴き上がったかと思うと、まるで石像を覆いかぶさるシートのように拡がりました。その瞬間、石像も金色に光り、だんだんと白金色の眩い光にまで明るくなると、その中でまるで白金のメッキが溶け堕ちる様に表面が溶けて流れ出していきました。しばらくすると光は少しずつ収まり、あたりは元のような静けさに。

3人は恐る恐る目を開けると、さっきまで石像だった鳥を見上げて、小さく悲鳴を上げてしまいました。そこには巨大なフクロウが、グルリと大きな首を回し、鋭い眼で3人を見下ろしていたからです。


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