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パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
7/68

休憩の時間

 ソフィアと共に2つ目の街【セカンドグロリオ】に訪れ、リスポーンポイントもとい、ファストトラベル機能がある地図の更新を終えた。オープンワールドはやはりファストトラベル機能があると便利だな。


 さて、長いことリーヴラシルにいた俺はというと、現実世界に戻っている。ソフィアとは昼にまた合流することにしているため、その前に色々済ませてしまおうという算段だ。


「えーと……昨日買ってきたのがあるはずなんだけど……」


 とりあえずは腹を満たそうということで、昨日スーパーで買ってきたおにぎりとビタミン補給飲料を取りにリビングに訪れている。がさごそと冷蔵庫を漁っていると、おにぎりと共にビニール袋に入っているビタミン補給飲料を発見した。


「あった。……でもこれ、減ってないか?」


 1個しか買ってなかったっけ……? いや、俺はおにぎりを梅とツナマヨそれぞれ2つずつ買ったはずだぞ? それとも俺の勘違い……?


「んぉ? マイスイートリトルブラザー、おはよう。そしておにぎりありがとう」


 元凶発見。俺のおにぎりを奪いやがったな、蛇ノ目花音(じゃのめ かのん)


「……おはよう、そしてしばくぞクソ姉貴」


「我々の業界ではご褒美です!!」


 ……止めておこう。俺がぶったとしても奴は喜ぶだけだ。喜びではなく、悦びである。


 ソファに寝そべっている黒に近い藍色の髪を短く整えた、ボーイッシュなファッションに身を包んでいる女性は、大変遺憾ながら俺の姉である。外面はファンクラブがあるくらいにはいい。内面は超ド級のブラコン&シスコンの御歳23の大学生だ。兄貴? めっちゃいい人。彼女さんの尻に敷かれてるけど、めっちゃいい人。それに比べて……


「お母さん譲りの蛇目が養豚場を見ているかのような目に……!」


「興奮してんじゃねぇよ」


「ありがとうございます!!」


 思わずビンタをかましてしまったが、やはり悦びを声高らかに示しやがった。俺が生まれた時から……というか、兄貴と、もう一人の姉貴が生まれた時からこんな感じらしいんだよな……うちの両親曰く。


 あ、もう一人の姉も我が道を往くって感じだ。突き抜けてる。うちの連中、どこかしらぶっ飛んでいるからな……俺なんてまだいい方だと思う。


「うひひっ……ところで碧、夏休みが始まったわけだけど、何か面白いもの見つけた?」


「急に落ち着くなよ。……まぁ、面白いゲームは見つけたよ」


「お? 何々?」


「リーヴラシル・フロントライン」


「ああ、リヴラインか」


 略称、それでいいのか? 掲示板見ても、略称がバラバラだった。呼びやすい名前で呼べ、ということなのだろうか。


「うちのゼミでもやってる人いるよ」


「へー……やっぱり人気なんだな、あのゲーム」


「世界観とかシステムもだけど、ゲームエンジンが凄いらしいね」


 非常に遺憾ではあるが、落ち着けば話が通じて博識な我が姉の話を聞きながら、残っていたおにぎりとビタミン補給飲料を胃に流し込む。うーん、不健康の味。だけどこれが堪らなく癖になっている自分もいる。


「ソロ難易度はまぁまぁ高いって聞くけど、実際どう?」


「うーん……まぁ、そこそこ?」


 ソフィアなんかはソロでやっているし、人によってはソロ難易度が高い……って感じがするんだよな。結局はスタイルが確立するまではソロが難しいゲームな気がする。俺が戦ったシャームドラゴンだって、モーションさえ見切れたらソロ討伐可能みたいだし。


「んじゃ、俺はまたゲームに勤しむんで」


「うん。夕飯の時間には戻ってきなよ?」


「了解。……姉さん、いつもそんな感じにしてなよ。その方がカッコいいって」


「可愛い弟と妹達への愛をひけらかすなと!? 無理!!」


 ……そういうとこだぞ姉貴。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 姉貴との会話を終えてリヴラインーーーー姉貴の略称が分かりやすかったーーーーに戻ってきた俺は、前回取得したスキルを確認する。


 バーストステップは……クイックステップからの進化派生。任意の方向に3回、連続回避行動が可能。その気になれば人とは思えない動きもできそうだ。


 続いてソニックランスはソニックパイクの進化派生。ソニックパイクよりも装甲貫通力が上がっており、その分のリキャストが増えている。ソニックパイクが10秒だったのが、5秒増えて15秒か。大技って感じになってきたな。


 次にスパイラルスタブ。これはシャームドラゴンの腹を抉るように突き刺していたモーションが取得条件を満たしたらしい。螺旋状のエネルギーを纏って攻撃するというこのスキルは、弱点部位にヒットする、またはクリティカル判定が生じると、この攻撃が多段ヒットに変化するという不思議なスキル。


 パリングカウンター。カウンターバッシュからの進化派生で、俺が待ち望んでいたパリィ技。このスキルで攻撃をパリィすると、相手に強制よろけを付与し、自分の攻撃力5%分のダメージを与えるスキル。レベル差によっては強制よろけの時間が短いようだが許容範囲。リキャストは10秒。最高の相棒になりそうだ。


 エンデュアーテクニックはエンデュアーアジリティの技術版。以上。


 最後にドラゴンスレイ……シャームドラゴンをソロ討伐したことで獲得したスキル。効果はドラゴン系との戦闘においてランダムにステータスに補正がかかるというもの。竜狩りは誉れ、ってか? こうなってくると神殺しのスキルとかもありそう。


 スキル確認ついでに手に入れていたアイテムの確認もしたが、目ぼしいものは特になかった。シャームドラゴンの甲殻くらいしかなかったのはちょっと残念。


「うーん……あれの防具とかは重いだろうなぁ……」


「そうね。結構重めの装備になるわ」


「うおっ!? ……って、ソフィアか」


 リーヴラシル・フロントラインでは宿屋をパーティーで使うことができる。その際、同じ部屋に押し込まれるため、金額は折半になるため節約できる。まぁ、宿屋の金額なんてたかが知れているから折半する必要などないのだが。


 ではなぜ俺達が同じ部屋をリスポーン地点としたのか。この宿屋というのは、盗み聞きなどのスキルが貫通してこない最強のリスポーン地点だからだ。そこまで警戒する必要は少ないが、万が一がある。あと、もし死んだ時の反省会がすぐにできるから同じ部屋を使った。


「こんにちは、アオヘビ君。武器探しでもする?」


 いつものようにあいさつをしてきたソフィア。これは俺達の間にあるルールだ。現実世界であろうが、ゲームの世界であろうが挨拶をする。いつの間にか結ばれていたルールだけど、これが無いとちょっと落ち着かない自分がいる。


「こんにちは、ソフィア。うーん……武器の耐久回復も併せてやろうかな」


「そ。なら案内するわ」


 さすが上級者。街の施設、その位置を全て理解しているようだ。武器探しをしながら、アイテム補充もしたい。


「ちなみに、ここではパリィ用の短剣はありますか」


「無いわね。あげましょうか?」


「…………………………………………いらねぇっ……!!」


「凄い葛藤したわね」


 パリィ用の短剣は作れる鍛治師探す! それまでは続投だ闘士の籠手ェ! モンクじゃねぇけど、全力で使い回してやるからな! ほぼほぼカウンターにしか使わないけど!


 パリィ用の短剣に想いを馳せながら、俺はセカンドグロリオの街へと武器探し及びアイテム補充のために繰り出した。

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