表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】病弱な妹に全てを搾取されてきた令嬢はもう何も奪わせない【受賞作品】  作者: やきいもほくほく
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/78


コレットが仕事を覚えて大量の資料を片付けると父が満足そうに頷く。

伯爵家を継ぐために……父や母にそう言われると、なんだかコレット自身を見てくれているようで嬉しくなった。

コレットは父の仕事を学び、手伝うことで時間を潰していた。


(この仕事をがんばれば、わたくしのことを認めてくれるかもしれない)


そんな淡い期待も数年後にはコレットに仕事を任せて楽をするためだと知って裏切られることになる。

当時は父の期待に応えるためにと、コレットは懸命に仕事を学んでいた。


そんなコレットに更に追い討ちをかけることが起こる。


必ず出席しなければならないパーティーがある。

それが国中の貴族が集まる王家主催のパーティーだ。

コレットは数ヶ月振りに外出することになる。

母はリリアーヌとミリアクト邸に残り、コレットはお手洗いに行くといって父から離れた。


(やっとヴァンに会える……!)


久しぶりにヴァンに会えるかもしれない……しかしいくら探してもヴァンの姿はない。


次第に外出が許可されるようになり、お茶会やパーティーに出席するようになっても、やはりヴァンを見つけることはできなかった。

コレットはヴァンが消えたことに大きなショックを受けた。


(わたくしがヴァンのことを話したりしたからこんなことに……っ!)


コレットは自分の愚かな行動を責めた。

まるで罰を受けているようだと思った。



それからあっという間に六年の月日が流れようとしていた。



コレットは今日もリリアーヌの部屋に座って、パーティーでの話をするように強請られていた。

コレットが顔を上げるとリリアーヌの部屋は様々なもので溢れていた。

両親からのプレゼントだろうか。

ドレスに髪飾り、アクセサリーに可愛らしい小物に人形。

すべてはコレットではなくリリアーヌに与えられる。

コレットは息苦しさを感じていた。



「わたしもコレットお姉様みたいにパーティーに行きたかったな」


「……」


「いつか王子様が迎えに来てくれないかしら」


「…………そうね」



コレットの興味なさげな反応に唇を尖らせたリリアーヌは侍女たちと話をはじめた。

コレットには侍女はいないのに、リリアーヌには二人の侍女がついて、つきっきりで世話をしているらしい。

コレットはあの一件の罰とでもいうように侍女の世話を受ける資格すら取り上げられてしまった。

それにはショックを受けるどころか笑えてくる。



「こんなわたしでも、結婚してくださる方がいたらいいな」


「リリアーヌお嬢様ならきっと、王子様の方から結婚を申し込んでくださいますよ!」


「だってこんなに美しいんですもの!」



リリアーヌは笑顔で手を合わせながらコレットの背後にいる侍女たちと談笑する。

こうしてコレットを呼び出したところで侍女たちと話すのに何故わざわざ毎日、部屋に通わなければならないのか意味がわからない。

コレットはこのくだらない時間から早く解放されるのを、ただひたすらに待っていた。


窓の外は晴れていて気持ちよさそうな風が吹いている。

まるでコレットを嘲笑っているようだ。



「コレットお姉様はどう?どんな方がタイプなのかしら」


「わからないわ」


「ああ、そうだわ!気になる令息はいるの?」


「…………いいえ」


「……チッ」



コレットがリリアーヌを見ることなく返事を返す。

小さな舌打ちは聞こえないフリをした。


コレットに選択肢などありはしない。王子様を夢見ることなど許されていないのだ。

それをわかって言っているのかいないのか。

リリアーヌの質問はいつも現実から離れてフワフワしている。



「もしかしてコレットお姉様の気に障ってしまったかしら!」


「…………」


「リリアーヌお嬢様が気にすることではありません!」


「折角、リリアーヌお嬢様が地味で暗いあなたを毎日毎日気遣って誘っているのに……なんて態度なの!」


「コレットお姉様を悪く言わないで!きっとわたしが悪かったのよ。ねぇ、コレットお姉様?」



コレットはいつものようにリリアーヌの歪む桃色の唇を見つめながら、冷めた視線を送っていた。

最近では侍女を巻き込んでこうしてコレットを責めている。


(いつもと同じ。もう飽きたわ)


いつもと同じだ。コレットの遠回しの悪口を聞き流した後に持っていた本をパタリと閉じた。



「……そろそろ失礼するわ」


「もう行ってしまうの?」


「今からお父様に資料をまとめておくように頼まれているから」



そう言うとリリアーヌはわざとらしく肩を跳ねさせた。



「コレットお姉様が羨ましいわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ