幼馴染は星座占い待ち
同じ学校の私たちは、なんとなくいつも二人で登校する。
幼馴染みだからこその当たり前。日常。
電車を待つ間、私は携帯を眺め、今日の運勢を確認する。
「今日もダメだぁ」
「宮田は好きだなぁ、星座占い」
違うの、肥川くん。私は星座占いが好きなわけじゃない。
隣にいる君が、肥川龍生くんが好き。
でも小心者だから星座占いに頼って、告白していいよって言われるのを待ってる。
「じゃあ肥川くんの運勢もみちゃおーっと」
今日も無理して笑ってる。
――――
黒い瞳が俺を覗いた。
どうしたらそんなに瞳を輝かせられる? 昔からそうだ。幼馴染みで付き合いも長いのに全然慣れなくて、ドキドキする。
俺のこと好きなの?
……まさかね。さすがに自意識過剰すぎる。
でもなんでいつも楽しそうに俺の運勢みるんだろう。やっぱり好きなのか?
そうだったらと何年も望んでるのに、怖くて確かめられない。
「耳赤いけど、寒い?」
「……うん」
「寒いよねー。私も耳当て持ってきたらよかったぁって、歩いてて思った」
「ああ」
早く告白しなきゃ。俺のもとから離れてしまう前に。
「ねっ、ね、今日恋愛運めっちゃいいって。肥川くん、チャンスなんじゃない?」
無邪気な声が苦しくなる。鼓動が速まり、指先が震える。
先に心の準備を……。いや、今がチャンスだって。いやいやでも占いを信じるのは……。
ああ、もう!
「なぁ」
心とは裏腹に冷たい声が出たが、宮田は「ん?」といつも通り微笑んでいる。
「好、きなんだけど」
「……うん」
「ずっと前から好きなんだ。幼馴染みだからたいして変わんないかもだが、付き合ってほしい」
「いいよ」
何の気なしに言っているようにみえた。
「軽くない?」
「そうかな? でも断る理由ないし」
はじめて宮田から笑顔が消え、黒い瞳は潤む。
「恋愛運がいいときをね、待ってたの。絶対失敗したくないって思ってたから。先にきたのは肥川くんだったみたいだけど」
漏らす声はか細く、笑顔は取り繕っていたと知る。
やばい。好きしか、宮田のことしか考えられない。
駅のホームにいることを、周囲の咳払いが聞こえて思い出す。残念。
しかし電車に乗った後、宮田が手を繋いできた。
「占いに書かれてないけど、手、繋ぎたいなって……。汗かいてたらごめん」
そう言われたが、すでに俺のほうが汗をかいていた。手を離してズボンで汗を拭っていると、宮田は小さく笑う。
「龍生くんのそういうとこ好き」
それから学校に着くまで、ずっと手を繋いでいた。