第九十八章 〜 ヴィッディーの家の跡地 〜
雄紀とおじさんは、マヤさんの執事の運転する車の一番後ろに座った。
マヤさんと、サンチェスは、その前の席に座っている。
執事の人達は、2人で代わる代わる運転するので、最前列に座っている。
マヤさんと、サンチェスの座っている席の前の席は、トランクに入りきれなかった荷物の置き場所になっていた。
もう少し進んだら、ヴィッディーの家があった場所が見えてくるはず・・。
「マヤさん、少し寄り道をしたいのですが、お願いできませんか? 」
雄紀は、マヤさんに聞いた。
「所長さんが問題なければ、大丈夫ですよ。 」
「少しなら、問題ないよ。 」
雄紀は、運転席の斜め後ろの席に座って、道案内をした。
ヴィッディーの家のあった場所・・。
雄紀は、車から降りて、辺りを見回した。
サンチェスが降りて来た。
サンチェスは、本当なら、ヴィッディーの幼馴染だったはず。
ヴィッディーと一緒に、港町のヘスーサンの人達のヒーローになっていたはず・・。
そして、遠くに見える海を遠い目をして見つめた。
「雄紀、雄紀は、港町に来るのは初めてだったんだよね。 この場所は何か有名な場所なの? 」
「いえ。 違います。 研究所から港町に行く途中に、一度車を停めた場所なんです。 」
『何か、理由らしい理由になってないな・・。 』
雄紀は思った。
「ここ、海が見えるんだね・・。 」
サンチェスが、そう言いながら海を見つめた。
マヤさんも、車を降りて来た。
「ほんとね。 海が見えるのね・・。 ・・ここは、とても気のいい場所ね。 神様を祀る祠でも作ろうかしら? 」
雄紀は、身を乗り出すようにしていった。
「それなら・・、お城の教会に、星屑石と言う不思議な石があるのですが・・その石の神様か天使を祀っては如何でしょうか・・? 」
「んん・・、良いわね。 私も、その石のことなら知ってるわよ。 その石の、神様と、天使を祀るのは良い思い付きね。 伝説でしか聞いたことは無いけど・・。 」
「実在します・・・・。 」
雄紀は、そう言うと、海の方に向いて胡坐をかいて座って、眼を閉じた。
サンチェスも雄紀の真似をして、胡坐をかいて座って、目を閉じた。
『・・何か聞こえる・・。 』
雄紀は、心の中で思った。
「・・何か聞こえる・・。 」
サンチェスが呟いた。
雄紀は、サンチェスにヴィッディーのことを話しそうになって、口をひらいた。
途端に大粒の雨が降り始めた。
みんな、後ろから、凄い速さで追いかけて来る、真っ黒な雲から逃げる様に 車に駆け戻った。
さっき、晴れていたとは信じられない程の、大粒の雨が突風を伴って空から落ち始めた。
『ヴィッディーのことをサンチェスたちには話しては、いけないんだ・・。 』
雄紀は、思った。
車は、そのまま、研究所に向けて出発した。




