第九十六章 〜 海洋博物館 〜
港町に来て、6日目の朝。
雄紀達と、サンチェスは、朝食を食べていた。
ホテルには、朝食を食べられるレストランが、何店かあったが、結局、毎日 ビュッフェ・スタイルのお店に来た。
雄紀は、ちょっとだけ残念な気持ちだった。
「・・結局、毎朝、ここのレストランに朝食を食べに来ましたね。 」
雄紀は、こぼすように言った。
「そう言われてみれば、そうだね。 他のレストランにも行ってみたかった? 」
おじさんが答えた。
「そうですね。 折角なら・・。 」
「でも、どうせ雄紀と所長は、飲み物しか飲まないじゃないですか。 何なら、僕たちが試して報告しますよ。 」
雄紀の話に、スーリャが割って入った。
「私、隣のレストラン、行ってみたいな~。 入り口に、いつもお花を飾っている方のお店。 明日の朝、行ってみようかなぁ。 」
ラディカが、スーリャに向かって話した。
「僕は、その向かいのお店が良いな~。 明日は、別々に食べてみる? 」
「それもそうね。 どうだったか、教えてね。 ・・それより、サンチェスさん、いよいよですね。 」
「・・うん。 」
「何だか、緊張してない? 」
雄紀は、サンチェスの瞳を覗きながら言った。
「・・ちょっとね・・。 」
「今朝は、あまり食べてないじゃないですか・・。 もしかしたら、凄く緊張してます? 」
ラディカが、少し茶化すように言った。
「そんなこと・・はぁ、そうですね、夕べ眠れなかったし・・。 実は、僕はこの場所を生まれてこの方離れたことがないんです。 お城も見たことがないし・・。 祖母のお世話があるので、まさか、この町を2週間も離れることになるなんて、夢にも思わなかったし。 」
「おばあちゃんのお世話は、専門の人が毎日来てくれるんでしょ。 」
雄紀が聞いた。
「はい。 マヤさんが手配してくれました。 」
「たまには、自分のことだけに集中する時間を持つ良い機会だから。 羽を伸ばしたら? 」
おじさんが言った。
「頑張って、勉強します。 ボランティアで来てくれた、皆の為にも、早く指導員の資格も取りたいんです。 」
「そうだね、頑張ってね。 期待してるよ。 」
おじさんが、にこやかに答えた。
「私も、羽を伸ばさせて頂きま~す! 」
ラディカが嬉しそうに両腕を上げて背伸びをしながら言った。
「僕は、海洋生物について興味があるので、時間がある時は、海洋博物館に通い詰めようと思ってます。 」
スーリャが答えた。
「この町の海洋博物館は、ジャイナだけに留まらず、近隣国を含めた、この地域でも一番 海洋生物の種類が多くて、施設も大きく整っているので有名なんですよ。 」
マヤさんが現れた。
「そうなんですね! 行ってみたかったな~。 」
雄紀が残念そうに言った。
「媚薬の研究の際も、ここの海洋生物博物館には、とってもお世話になったんだよ。 また、ここに来ると良いよ。 」
おじさんが微笑みながら言った。
「海洋博物館の本が売ってたら、送りますね。 」
スーリャが雄紀に言った。




