第九十二章 〜 サファラ・ジュース 〜
後、5分で会場する。
雄紀は、サンチェスを出口近くのテーブルに呼んだ。
「先ずは、君に媚薬を・・。 」
サンチェスは、雄紀の瞳を見つめながら、ニヤッと笑った。
雄紀は、小さな紙のコップに入れた媚薬をサンチェスに渡した。
「これか・・。 」
サンチェスは、媚薬をマジマジと見つめた。
そして、一気に飲み干した。
「このまま、20分程、ゆっくりしていて下さい。 気分が悪くなったり、何か違和感があったら、直ぐに教えて下さいね。 」
「大丈夫。僕は、この会場からは出ないし。 体を動かしていた方が、早く時間が経つし。 」
サンチェスは、雄紀に背を向けて、自分の持ち場である、受付の方へ歩いて行った。
「分かりました。 でも、何かあったら、直ぐに言って下さいね。 」
雄紀は、サンチェスに言った。
サンチェスは、振り返らずに、右手を振って、返事をした。
「他に、ヘスーサンの人は居ますか? 」
雄紀は、ボランティアの人たちに声をかけた。
3人の人が手を挙げた。
雄紀は、媚薬のことを説明して、3人にも投与した。
「20分程、ゆっくりしていて下さい。 」
と、雄紀は3人に伝えたが、3人とも、サンチェスと同じように 持ち場に戻って行った。
「何か異変を、ちょっとでも感じたら、直ぐに言って下さいね! 」
雄紀は、3人の後ろ姿に向かって言った。
◇◆◇◆◇
いよいよ、会場の時間が来た。
ドアを開くと、人々が流れ込んで来た。
受付で、サンチェスやボランティアの人たちから用紙を受け取ると、椅子に座って小さな簡易的な机の上で書いていた。
書くことが出来ない人たちは、ボランティアが、代筆をした。
そして、説明等を受けて、同意書に署名をした後に、雄紀達の待つ、真ん中のテーブルに歩いて来た。
人々は、再び、軽く説明を受けて、同意の確認を再度受けたのちに、紙コップに注がれた媚薬を飲み干した。
そして、人々は、経過観察のスペースへと案内された。
人々は、ドリンクバーのジュースの飲み方を教わりながら、ジュースを飲んだり、スナックを食べた。
実は、そのドリンクバーも、スナックもヘーゼルマン用。
会場に集まった人々は、それらを 生まれて初めて口にした。
ソファー等、そのスペースに置かれた全ての家具も、マヤさんによって用意された、ヘーゼルマン用のものだった。
人々は、最初は戸惑っていたが、その柔らかな細い繊維の生地を使って作られたソファーの上で寛いだ。
眠り込んでしまう人も居た程であった。
目まぐるしく時間が過ぎていき、あっという間に夕方になった。
受付は、5時まで。
最後の、人々が帰途に就いた時、既に6時を過ぎていた。
それから、みんなは、マヤさんが用意してくれた、昼食になる筈だったケータリングの食事を頂いた。
雄紀と、おじさんも、お腹がチャポチャポ音を立てる程の、サファラ・ジュースを飲んだ。




