第九十一章 〜 DNAの記憶の中のヴィッディー 〜
その、この地域の伝説によると、マーラが次元の歪によって、再来する。
この世界に降り立った、マーラは、この世界で 肉体を得る為に、光る人の血肉を食らうのだそうだ。
そして、救世主が現れて、マーラから人々を救うとも説いていた。
しかし、その救世主は、眠っており、目覚めるまでは大変脆弱なので、みんなで守り、導かなければならないのだそうだ。
しかし、そのうち、民の優しさによって、目覚めた救世主は、愛によってマーラに打ち勝つのだそうだ。
「・・へぇ・・。 」
雄紀は、返事をした。
サンチェスは、雄紀の瞳を覗くように雄紀を一旦、見つめた。
そして、にこっと、いたずらっ子の様に ほほ笑むと、言葉を続けた。
「僕は、その救世主は、雄紀だと思ってるんだ。 」
そう言って、もうしばらく 雄紀の瞳の奥を見つめると、立ち上がって会場の用意に戻った。
雄紀は、まるで ヴィッディーに瞳を覗かれた様な感覚で、一瞬 ドキッとした。
『ヴィッディーは、今、何処で、誰で、何をしているんだろうな・・。 』
雄紀は、しばらく物思いに耽った。
「“心ここにあらず”・・、 サティアさんのこと考えてたでしょ・・。 いつも、一緒でしたからね。 」
ラディカが、雄紀の隣に腰掛けながら言った。
「ははは・・。 」
不自然な、愛想笑いになってしまった。
雄紀は、複雑な気分がした。
本当なら、この会場を中心になって作っているのは、おじさんや雄紀達では無く、ヴィッディーのはずだった。
ヴィッディーのことを考えている時に、ラディカが話しかけて来たと、言うのも偶然ではない気がした。
『もしかしたら、次元が変わっても、ラディカの、DNAの何処かに、ヴィッディーに対しての思いが、一度通った道の記憶として残っているのかも知れない。
だから、ヴィッディーに思いを馳せていた、雄紀と 波長が合ったのかも知れない・・。 』
と、思った。
「次元が変わって、全く出会わなかったことになっても、何処かで、どんな形かは分からないが、繋がっているのかも知れないな・・。 」
雄紀は、呟いた。
「え? 何か言いました? 」
ラディカが、雄紀に言った。
「いや、何も言ってないよ。 」
雄紀は、返した。
ラディカは、スーリャとボランティアの人達が、ドリンクバーの所で楽しそうに話しているのを見つけて、加わりに行った。
入り口から、マヤさんが入って来た。
「みなさん、お昼ごはんをお持ちしました。 隣の、休憩室に置いて置きますので、休憩時に頂いて下さいね。 」
ホテルの制服を着た人達が、ケータリング用の入れ物に入った料理をカートに乗せて運んで来た。
「何から、何まで、ありがとうございます。 」
おじさんが、マヤさんに挨拶をした。
会場の外もガヤガヤし始めた。
もう直ぐ、会場の時間




