第九十章 〜 媚薬の会場 〜
サンチェスの言っていた通り、会場は車で数分のところであった。
ホテルから出て、ホテルの裏に抜けると、大きめの通りに出た。
そこを、まっすぐ進むと、向こうに海が見え始めた。
すると、直ぐに外れまでたどり着いた。
突き当りの、原っぱの様な更地の中に、その建物はあった。
『まるで、地方の公民館の様だ・・。 』
雄紀は、思った。
会場は、その建物の中に入ってすぐ右側にある、体育館の様な部屋であった。
『バスケットが出来そう‥。』
雄紀は、思った。
そこには、既に、サンチェスが募って集まった、ボランティアの人達が10人位、待っていた。
雄紀達は、挨拶を軽く済ませて、会場旁を始めた。
その部屋に、入ってすぐの所に受付を設けた。
そして、部屋の、真ん中辺りに、媚薬を投与するテーブルを置いた。
一番奥には、リラックスしながら、経過を観察するスペースを設けた。
一番奥のスペースにも出入り口があった。
投与を済ませた人たちは、受付を通らずに、その出入り口から退場することが出来た。
その、リラックスするスペースには、座り心地の良い椅子と、ドリンクバーや、スナックを置いた。
もちろん、ドリンクバーや、スナックは、マヤさんからの差し入れだった。
ドリンクバーには、雄紀には見慣れないフルーツの絵の付いたものがあった。
「これ、何? 」
雄紀は、サンチェスに聞いた。
「あ、それ? サファラ。 美味しいよ、飲んでみたら? 」
サンチェスは、雄紀にカップを渡した。
雄紀は、サファラ・ジュースを渡されたカップに注いだ。
赤い色をしている。
雄紀は、一口飲んでみた。
まるで、マンゴーネクターの様なねっとりとした喉越しと、舌ざわり。
味は、マンゴーとイチゴを混ぜたような、甘い飲み物だった。
「本当だ! 美味しい! 」
「あんまり飲み過ぎないようにね。 お腹を壊しちゃうよ。 蠕動運動を促すフルーツなんだ。 」
おじさんは、にっこり微笑みながら、雄紀に言った。
雄紀も、微笑み返した。
サンチェスは、テキパキと、会場を作っている。
雄紀も、サファラ・ジュースを飲み終えると、備品の整理をしている、おじさん達に加わった。
会場は、1時間程で、出来上がった。
受付は、11時からなので、まだ、30分程時間があった。
雄紀は、その部屋の四隅に、聖水をかけて結界を張った。
そして、備品や、関係者の皆にも、聖水を降りかけた。
ここに集う人たちは、皆、城下町では、あまり知られていない、マーラの恐ろしさを認識していた。
それは、言い伝えがあるからなのだそうだ。
その言い伝えは、ソーハムが教えてくれた伝説と同じ内容であった。
しかし、その地域の言い伝えは、それだけでは無かった。




