第八十九章 〜 ホテルの朝食で 〜
雄紀達が宿泊している、ホテルのオーナーの女性、マヤさんは、しばらく 話をしていたが、制服を着た女性から呼ばれた。
マヤさんは、雄紀達に対して、丁寧に挨拶をすると、制服の女性と共に奥へ戻って行った。
「マヤさんは、スラム街にボランティアとして来ていた時に知り合ったんだ。 一度、凄い雨の時に、こっち側から スラム街に続く、道にある橋が流されたことがあったんだ。 その橋は、ヘーゼルマン居住区からスラム街へ渡る道は、全てその橋に続いていたんだ。 当時、僕の家族は、スラム街の一角に住んでいたんだ。 あまり、広くは無かったんだけど、マヤさんと、マヤさんの連れの人の3人くらいは寝る場所を作る余裕はあったんだ。 だから、マヤさんたちを招いて泊って頂いた。 嵐の前で、漁師の人達から譲ってもらった、小さな魚が沢山あったから、それを料理して食べて頂いた。 マヤさん達は、“美味しい!”って食べてくれた。 僕は、ヘーゼルマンの人達の食べているものを食べたことがなかったから、口に合うか 凄く不安だったんだけど・・。 食べてもらえて嬉しかった。 “美味しい”って言ってくれたのは、お世辞だと思っていたけど、本当に美味しいと思ってくれたみたいで・・。」
サンチェスは、夕食用のメニューを開いて、メニューの写真の1つを指さした。
「この料理は、その時の味付けなんだ。 これは、あの時よりも、何倍も大きな魚を使ってるけど。 」
「凄いね! よっぽど美味しかったんだね。 」
雄紀は感心した。
「すっごく お腹が好いている時は何を食べても美味しいでしょ。 でも、そのご縁で、時々 ホテルのメニュー開発とかで働かせて頂いてます。 」
「そうなんだ。 良かったね。 」
「ありがと。 でも、前に言ったよ~・・。 」
サンチェスは、照れ笑いをしながら答えた。
「みんな、そろそろ良いかい? もう直ぐ、9時になるけど、もう、そろそろ行こうか。 」
おじさんが、みんなに声をかけた。
「そうですね。 会場は、ここから歩いて行けますが、どうしますか? 」
「荷物が沢山あるから、車で行くよ。 サンチェス、君は、助手席に座って 道案内をしてもらえるかな? 」
おじさんが答えた。




