第八十八章 〜 サンチェス 〜
一夜明けて次の日の朝。
8時頃、雄紀達はロビーに降りた。
入り口の椅子には、1人の男性が座っていた。
その男性は、雄紀を見ると、大きな笑顔で手を振って、立ち上がった。
サンチェスだ。
「雄紀、おはよう! みなさん、おはようございます。 」
サンチェスは、嬉しそうに、雄紀に挨拶をした後で、緊張気味に、おじさんや2人に挨拶をした。
「嬉しくて、眠れなくて・・。 待ち切れなくて早く来ちゃったんだ。 9時まで、ここで待ってますから、食べて来て下さい、朝ごはん。 」
おじさんが、サンチェスに話しかけた。
「君は? 朝ごはんは、もう食べたの? 」
「いえ。 でも、いつも食べないので大丈夫です。 」
「一緒に、どう? 色々、今日のことも聞きたいことがあるし。 」
「・・そうですか? すみません・・。 」
4人は、サンチェスと合流して、ホテル内のセルフサービスのレストランに入った。
店員に、中央の丸テーブルに案内された。
みんな、それぞれテーブルに辿り着いた順番に席に着いた。
「何だか、ドキドキします。 」
サンチェスが言った。
「どうして? 」
雄紀が、サンチェスに聞いた。
「どうしてって。 僕らは、こう言う所には、ほとんど来ないんだ。 立ち入り禁止の所も多いし・・。 」
「・・。」
「でも、ここのホテルは大丈夫だと思います。 オーナーが、今回のことを色々、段取りしてくれた人なんです。 」
「そうなんだ。 それは、ありがたいね。 」
その時、1人の女性が奥からテーブルに近付いてきた。
その女性が、テーブルの近くに来た時、サンチェスが気が付いた。
「あ! 皆さん、こちらが、今回の会場の段取りをして下さった、マヤさんです。 マヤさん、こちらが、雄紀です。 そして、こちらが、研究施設の所長さんです。 そして・・。 」
「僕は、スーリャです。 研究員です。 アシスタントで来ました。 」
「私は、ラディカです。 私も、アシスタント出来ました研究員の一人です。 」
「今回は、色々とご尽力を頂き、ありがとうございます。 」
おじさんが、女性に言った。
「みなさん、遠いところをありがとうございます。 そして、今回の事、よろしくお願いします。 私は、彼の夢を叶えて上げたいと思ったのがきっかけでお手伝いをさせて頂くことに決めたんですよ。 彼の生活は、私たちでは、想像もできないくらい過酷な生活環境の中、全く擦れることなく、いつもにこやかで、前向きな人柄。 進んで、人助けをする姿勢も、本当に素晴らしいと思います。 私は、このサンチェスに心を打たれたんです。 みなさん、くれぐれも、よろしくお願いします。 」
「はい。 もちろんです。 」
おじさんは、女性に答えた。
「みなさんの、宿泊費と食事の料金は私が持たせて頂きます。 あなたもよ、サンチェス。 あなたさえ良ければ、部屋を用意させるけど? 」
「ありがとうございます。 もったいない、お申し出なのですが、家に帰って、家族のことをしなければならないので、遠慮させて頂きます。 でも、いつか泊まりに来たいです。 」
女性は、にっこり微笑んだ。
「分かったわ。 いつでもいらっしゃい。 あなたのご家族も連れて来ると良いわ。 」
「ありがとうございます! 」




