第八十六章 〜 次元を超えた記憶 〜
「雄紀・・。 」
雄紀は、おじさんから 腕を揺すられて目を覚ました。
『ヴィッディーは、もう居ない・・・・。 』
雄紀の胸に、その言葉が浮かんだ。
そして、その言葉は、雄紀の心に、深く突き刺さった。
無言のまま、雄紀は車から降りた。
『スーリャと、ラディカは、どこまで覚えているのだろう・・。 』
ふと、その質問が、雄紀の頭に浮かんだ。
4人は、チェックインにぎりぎりに時間で、ホテルにチェックインをした。
雄紀は、おじさんと、スーリャと同じ部屋だった。
「スーリャ・・。 」
雄紀は、スーリャに話しかけた。
「今回の旅は、どんな計画だったか教えてくれる。 僕が、はっきりと理解していないところがあって・・。 」
「そうなんですか? てっきり、雄紀が計画した旅だと思ってました。 今回は、雄紀の友達が港町に居て、その人の伝手で、港町近くのヘスーサンの居住区での、媚薬の配布が決定したって聞いたんですけど・・。 違うんですか? 」
「え? まぁ、そうなんだけどね。 ありがとう。 」
雄紀は、何とかごまかして、おじさんの所に行った。
そして、スーリャから聞いた話をした。
「僕には、港町には友人は居ません・・。 それにしても、どうして、スーリャとラディカはヴィッディーとヴィシュヌのことを覚えていないんですか? もしかしたら、彼らの記憶まで違う次元のものになってしまったのでしょうか・・。」
「私は、そう思う。 もしかしたら、彼ら自身が違う次元から来たのかも知れない。 もしくは、私たちが、違う次元に移されたのかも知れない・・。 」
「そうだとしたら、どうして、おじさんと僕は、ヴィッディーとヴィシュヌのことを覚えているのですか? 」
「それは・・、よく分からないな。 もしかしたら、石の護の天使には、人の記憶を操ることが出来るのかも知れない。 もしくは、もしかしたら、君も私も、基本的には、ほとんど食べないでしょ。 」
「食べないことと、記憶とが関係あるんですか? 」
「記憶って言うか・・。 この世のものであるためには、この世のもの、この地のものを体に入れなければならない。 だから、私たちの様に、太陽の光や、ヴィーリヤを直接エネルギーとして摂取していると、その地や世の所属物ではなくなるのかも知れないね。 だから、違う次元に移行しても、移行先の次元の影響を受けることなく、移行前の次元からの記憶を維持することが出来るのかも。 これは、あくまでも、私の主観だがね。 」
「なるほど・・。 」
雄紀は、おじさんの説明で状況が腑に落ちた。
その時、部屋の電話が鳴った。




