第八十一章 〜 始まり 〜
「ゔぁ ―――――――――!! 」
ヴィッディーの家の方から叫び声が聞こえた。
ヴィシュヌだ!
みんなは、ヴィッディーの家へ向かって走り始めた。
「あ! 」
玄関先にヴィシュヌが倒れている。
ヴィシュヌのお腹のあたりに黒い雲の様なものが宙に浮いていた。
その、黒い雲の様なものの、ギラギラした真っ赤な目が一瞬こっちを向いた。
黒い雲の様なものは、かき消すように消えた。
ヴィッディーが、ヴィシュヌに駆け寄った。
「ヴィシュヌ!! ヴィシュヌ!! 」
「う~ん・・。 」
ヴィシュヌは、唸りながら体をよじった。
カッ! と、目を開いた。
ヴィシュヌは、ゆっくりと起き上がった。
「大丈夫!? 」
ヴィッディーが、声をかけた。
「え? どうした・・? 何が起きた? 」
「良かった。 大丈夫そうだね。 」
ヴィッディーは、ヴィシュヌの両肩をつかんで、抱き起した。
「良かった。 心配しました。 本当に大丈夫ですか? 」
雄紀は、ヴィシュヌに話しかけた。
「何が? 君か・・。 極めて大丈夫だ。 ふふ・・。 」
「ヴィシュヌさん、顔が真っ青ですよ。 本当に・・気分は大丈夫・・。 」
雄紀が言いかけた途中で、スーリャが、雄紀とヴィシュヌの間に入って、ヴィシュヌの顔を見ながら言った。
「僕もお腹が好きました。 早く、ヴィシュヌさんのシーフード・サンドイッチ食べたいです。 」
「・・・・。 」
「せっかく、ヴィシュヌさんが食事の用意をして下さったので、頂きましょ。 ヴィッディー、お腹すいたでしょ? 」
ラディカが、ヴィッディーの隣に来て言った。
「そうなの? ありがとう。 」
ヴィッディーは、ヴィシュヌにほほ笑みながら言った。
ヴィシュヌも、にっこり微笑み返した。
さっき、心に留めなかった違和感が、再び、雄紀の心の中に戻って来た。
しかし、再びかき消そうとした。
雄紀は、おじさんの方を見た。
おじさんは、眉間に集中しているかのような表情をしながら、みんなの後ろを歩いていた。
おじさんも何かを感じているようだった。
「・・あの・・。 」
雄紀は、おじさんに話しかけた。
「・・ああ・・。 」
おじさんは、前を向いたまま返事をした。
『やっぱり、何かが起きているんだ。 何かが、起きてしまったんだ。 』
雄紀は、心の中で呟いた。
雄紀は、おじさんと並んで、みんなの後ろを歩きながら、頭の中は激しく混乱していた。
何かが既に起きてしまったのは確かだった。
そして、何かが起きることも確かだった。
しかし、何が起きているのか、何が起きるのかには確信が持てないでいた。
もしかしたら、心が、それらを受け入れることを拒んでいるのかも知れない。
雄紀には、ヴィシュヌが、まるでブラックホールの様に周りの光を吸い込んでいるように見えた。
おじさんも同じものを見ているのだと確信があった。
『最初に、車の所で感じた違和感は何だったんだろう・・。 』
雄紀は必死に考えを巡らせた。
何をすることが一番最良なのか、それを見出す為に、必死に考えていた。




