第八十章 〜 ヴィッディーを待ちながら 〜
「私、駐車場の方に行ってます。 」
ラディカは、そう言うと、駐車場の方に歩き始めた。
「僕も、行きます。 もし、ヴィッディーが最初に行く場所が、小屋だとしても、家だとしても、駐車場は最初に通ります。 もし、ヴィッディーが駐車場を通り過ぎて、最初に家に車を停めるとしても、駐車場の道を通ります。 僕たちに気付くはずです。 」
「そうだね。 」
雄紀は、おじさんと、ラディカと、駐車場に移動した。
駐車場では、スーリャとヴィシュヌが、たわいもない話をしながら、ヴィッディーの到着を待っていた。
2人は、3人が歩いて来るのを不思議そうな顔をして、見ていた。
おじさんが、2人に話しかけた。
「ヴィッディーは、私たちが さっき通った道を向かっている。 後、10分程で到着するらしい。 だから、この道を最初に通るのは、間違いない。 と、言うことで、皆で、こちらで出迎えることにしまた。」
「そうですか・・。 じゃ、僕は、家でヴィッディーを迎える準備が途中なので、一旦戻ります。 お茶とか、食べ物とか。 車が見えたら呼んで下さい。 」
「分かりました。 ありがとうございます。 」
ヴィシュヌは、一旦、ヴィッディーの家に戻って行った。
「そろそろ、来ますね。 」
雄紀は、おじさんに言った。
4人とも、少し緊張しながら、車が来るであろう道の先を、見つめた。
車の音が聞こえて来た。
そして、その音がだんだん大きくなった。
みんなは、何も口にせず、音の方向を見つめた。
車が見えた!
雄紀たちが見つめている、道の並木の向こうから、車が現れた。
「いよいよですね。 」
スーリャが、呟いた。
おじさんが、ヴィシュヌに電話で連絡をした。
車は、だんだん近づいて来た。
やはり、その車には、ヴィッディーが乗っていた。
ヴィッディーは、何も知らない。
やっと、雄紀たちに気が付いた。
ヴィッディーは、不思議そうな顔をした。
そして、ヴィッディーは車のスピードを落として、4人の前で止った。
4人は、ヴィッディーの前に歩いて行った。
ヴィッディーは、車の窓を開けた。
そして、顔を出して皆に
「どうしたんですか!? どうしているんですか? 」
キョトンとした顔で、皆の顔を見回した。
「君を助けに来たんだ。 」
おじさんが、答えた。
「私を・・ですか? 」
ヴィッディーには、訳が分かっていない。
さらに、混乱している様だった。
雄紀と、おじさんは、経緯を説明した。
「そうなんですか!? すみません、わざわざ・・。 」
雄紀は、ヴィッディーに、聖水を降りかけた。
そして、念の為、ヴィッディーの車にも、聖水を降りかけた。
雄紀は、微かな違和感を感じた。
しかし、その違和感は、あまりにも微かであった。
よって、雄紀が、意識の表層に引っ張りあげられる程、中心には無かった。
それ故、深く考えなかった。
その時は、その違和感が何であるか、深く考えなかったことを後悔することになるとは、夢にも思わなかった。




