第七十五章 〜 朝日の輝き 〜
・・どれくらい来ただろう・・。
外は、朝焼けを通り越して、朝に光に包まれていた。
水平線から顔を出した太陽から、ビームの様な光が放射線状に辺り一面に広がり、包んでいた。
マーラは、朝の光に弱い。
特に、太陽が出たばかりの時に、一瞬で辺り一面に広がる閃光は苦手だそうだ。
唯一、このひと時が、雄紀に取って心から安心できるひと時であった。
雄紀は、不意に、大あくびをした。
「疲れたんですか? 」
スーリャが、にこやかに 後ろから声をかけてきた。
「いや。 ちょっと、リラックスしてたんだ。 」
「眠れるようだったら、今の内に眠っておいた方が良いですよ。 」
「そうですね。 」
雄紀は、目を閉じた。
・・雄紀は、一瞬だけ夢を見た。
キラキラ、眩しいほどの輝きの中で、ソーハムとヴィッディーが話している。
それを、雄紀は、少し離れていたところで見ていた。
離れ過ぎていて、二人が何を話しているのかは分からなかった。
ただ、2人は、とてもにこやかに、楽しそうに、笑い合いながら話をしていた。
それをじっと見ている、雄紀も何だか、フワフワした様な、キラキラした気持ちになった。
しばらく、その煌めきの中に雄紀は身も心も任せた。
「もう直ぐ到着するらしい。 」
おじさんが、バックミラー越しに、皆に言った。
雄紀は、目を開けた。
どのくらい時間が経っただろう。
雄紀は、体中に、夢の中の煌めきが、まだ残っているのを感じた。
スーリャの隣に座っていた、じっと、景色が移り変わるのを 無表情で見ていた ラディカは何も言わずに、唇をキュッと結んだ。
「どのくらい、余裕がありそうですか? 」
雄紀は、シートとシートの間から、身を乗り出しながら、おじさんに聞いた。
「そうだね・・。 半日くらいかな? ・・何が起こるのかは、予想できないから。 とにかく、自分の身を守って。 それが、私たちの、ヴィッディーの一番の願いだ。 」
「分かってます。 」
雄紀は、口角でほほ笑みながら答えた。
前を走る、ヴィシュヌの車が、駐車ランプを3回光らせた、そして、右折サインへ変えた。
いよいよ、遠距離用道路を離れる。
「あ! 」
雄紀の頭の中に、何かが降りてきた。
それは、まるで ひらめきの様な、誰かが思考と記憶のヘルメットを被せたかの様な感覚だった。
もしくは、頭の中のチップに記憶と志向のデータを強制的にダウンロードし始めたような感覚だった。
「ヴィッディーは、2時間半後に、ここを通ります。 その時に・・何かが車に乗っています。 」
「え!? じゃ、ヴィッディーを襲う何かは、ヴィッディーの車に一緒に乗って来るってこと? 」
「いえ、 違います。 そうだとすれば、小さなボタン位の大きさで・・弱過ぎます。 多分、見張りの様なものです。 ヴィッディーの車に乗っているのは、明らかに“悪”です。 」
「それよりも、何か大きな存在のものが家の中に・・。 」




