第七十三章 〜 開示 〜
雄紀とおじさんは、眩しそうな顔で、一瞬 ヴィシュヌの瞳を見つめた。
おじさんは、雄紀の瞳をチラッと見た。
そして、テーブルの上を見つめながら、少し息を吸って、微かに頬を膨らませながら息を吐き切った。
雄紀は、おじさんの表情を確認してから、皆に右手を雄紀の方に出すように言った。
皆の中指に、サティアから貰った聖水を一滴づつ垂らした。
そして、額の真ん中、胴の下端、左肩、右肩に、その聖水を点ける様に言った。
そして、テーブルの上に、記憶の中の引き出しの何処からか出して来た、陣を聖水で描いた。
「おじさん、結界を張りました。 皆と、このテーブルとテーブルの周り限定ですが、安全だと思います。 」
おじさんは、少し驚いた表情をしたが、直ぐに元に戻った。
「分かった。 ありがとう、雄紀・・。 」
おじさんは、雄紀の瞳を見て、にっこりした後、ヴィシュヌを見て、スーリャ、そして、ラディカを見た。
「これから言う事は、君達には信じがたいことだと思う。 それに、君達が、このことを聞いてしまったら巻き込まれてしまう。 そして、聞いてしまったら、もう後戻りも出来なくなってしまう。 そうしたら、君達に多大な迷惑を掛けることになる。 さっき様に、君達の命にかかわって来ることになるかも知れない。 だから、今まで言わなかったんだ。 それでも聞きたいかい? 」
「所長、さっきも言った様に、僕たちは、もう既に巻き込まれているじゃないですか! 」
「ヴィッディーに関わることなんですよね! 早く言って下さい! 私にお手伝いをさせて下さい! 」
スーリャとラディカは、おじさんが話し終わるが否や、訴えた。
ヴィシュヌは、少し驚いたような表情を見せたが、直ぐにまじめな顔になった。
「・・さっきの人形と良い・・穏やかじゃないね。 何が起きているんですか? これも何かの縁だ。 本当は、大声を上げて、逃げ出したいけどね。 聞かなきゃいけない気がする・・。 」
おじさんは、3人の表情と瞳を1人1人確認してから、ゆっくりと話し始めた。
それは、雄紀の事、ソーハムの事、ヴィッディーのこと、サティアの事、おじさんとおばさんの事、媚薬の事、そして、これから起きようとしていること・・。
3人とも、黙って聞いていた。
おじさんが話し終わっても、3人とも、しばらく黙ったままだった。
突然、ラディカの瞳に涙が沸き上がって来て決壊した。
「・・行かなきゃ! 助けなきゃ! ヴィシュヌさん、お願い! 今、直ぐ行かなきゃ! 」
ラディカは、完全に平常心を失った。
おじさんと、スーリャが、ラディカをなだめた。
ヴィシュヌは、まだ少し混乱している様だった。
「・・ごめんね。 にわかには・・、どう受け取っていいのか・・、ヴィッディーは・・・・。 」
ヴィシュヌは、一旦、大きく息を吸って、思いっきり吐いて、言いかけていた言葉を続けた。
「早く、頭の中を整理しなきゃ・・。 」
雄紀は、瞳の端だけでにっこりして、ヴィシュヌに返事をした。




