第七十二章 〜 休憩 〜
雄紀は、ヴィッディーの電話に連絡を試みるも、相変わらず繋がらなかった。
外は、もう真っ暗になっていた。
真っ暗な、田舎の海岸線の道は、コールタールを流し込んだ様に真っ暗になる。
雄紀は、この海岸線の様に真っ暗な心の奥底に、真っ黒な冷たい水が、細い一本線状に落ちて来て、恐怖になっていく様な感覚を覚えた。
先導する、ヴィシュヌの車が“休憩したい”と合図を出した。
ラディカは、“OK”の合図を出した。
「ヴィシュヌさんが、“休憩しよう”と合図を出したので、“OK”の合図を出しました。 もう直ぐ、休憩エリアに入いると思われます。 」
「ありがとう。 」
おじさんが答えた。
しばらくは、そのままの道を進んでいたが、車は右に車線変更して、休憩エリアへと入って行った。
そこは、広い駐車場の割には、こぢんまりとしたレストランか、カフェが入っていそうな建物があるだけの休憩エリアだった。
この駐車場に車を停める人たちの殆どは、車の中で休憩を取るのであろう。
ヴィシュヌが車を駐車して、そのすぐ後ろの駐車スペースに、ラディカが駐車した。
皆、車の外に出た。
ヴィシュヌが、切り出した。
「どうします? 眠くなければ、このまま行きますか? このまま行けば、明るくなる頃にはヴィッディーの実家に浸けると思います。 」
「このまま行きましょう。 」
ラディカが答えた。
「運転を替わるよ。 僕は、さっき仮眠を取ったから大丈夫です。 ヴィシュヌさんは大丈夫ですか? 」
「私は、慣れてるから。 2日間くらいなら、寝ないで運転できるよ。 野菜にも拘っているから、遠くまで面白い、良い野菜を探しに行くんだ。 」
「でも、ここで、ちょっとだけ休憩しますか? ヴィシュヌさん、どうぞ目を休めて下さい。 」
おじさんが言った。
「それも、そうですね。 ここの、カフェはこだわりの紅茶があるんだそうです。 」
「良いですね。 」
雄紀は、にっこり微笑んだ。
「ウバが、お勧めらしいですよ。 」
ヴィシュヌさんが雄紀に言った。
「行きましょう。 」
雄紀が、おじさんに言った。
一行は、カフェに入った。
その、内装は、その建物の外側の様子とは全く違っていた。
そこは、ヴィクトリアン王朝の写真から出て来た様な部屋と調度品で揃えてあった。
「何にいたしましょう? 」
5人とも、ウバを頼んだ。
店員さんが、それぞれの分を、ティーポットに、ティーコゼをかけてカップと一緒に持って来てくれた。
まだ、入れていないのにいい香りがしてる。
うっとりする様な、紅茶の香りに雄紀は心が静まっていくのを感じた。
ヴィシュヌが、徐に口を開いた。
「あれは、どうしてですか? 何だったんですか? 」




