第六十八章 〜 ヴィシュヌ 〜
その町は、あまり大きい街ではなくこじんまりとした感じ感じがした。
遠距離用の道から外れる道の周りには、レストランや道の駅のようなお店が立ち並んでいた。
スーリャは、前の車に合わせて、少しスピードを緩めて、お店の前を車で通り過ぎて行った。
どこのお店も、駐車場は車でいっぱいの様であった。
「どうしますか?」
スーリャがバックミラー越しに、おじさんに話しかけた。
「それとも、テイクアウトして外で食べますか? この先に、公園があります。 」
「そうだね・・。 」
おじさんは、難しい顔をして何か考え事をしている様であった。
車が、一軒のお店の前を通りかかった。
そのお店は、土壁のピザが美味しそうな雰囲気の外観のレストランの様だ。
雄紀は、何となく何かを感じた。
運良く、駐車場を見る限り、混んでいない様子。
「ここにしませんか? 」
雄紀は、おじさんに言った。
「ん? ・・ここにしよう。 」
おじさんは、何かを 雄紀から感じたのか、雄紀の提案を受け入れた。
車は、そのお店の駐車場へと入って行った。
駐車場に車を停めて、車から出ると、他のお店よりも異様な程に駐車場の車の数が少ないことが分かった。
「・・ここ、大丈夫ですかね? 何だか、異様に客が少なくありませんか? 」
スーリャが、おじさんに話しかけた。
「どうなんだろ・・、ね? 」
ラディカが、雄紀に話しかけた。
「ん・・。 何か感じるんだ、このお店。 」
「・・・・。 」
おじさんは、だまって雄紀の方を見た。
4人は、お店の入り口に着た。
入り口のガラス越しに中を見ると、中にはお客さんが1人も見えない。
スーリャが、ドアの把手を引いた。
開かない。
「あれ? 閉まっているのかな? 」
お店の奥を見ると、誰か居る。
目が合った。
その人は、入り口の方に歩いて来た。
50歳くらいの男性だった。
どことなく、雰囲気が、ヴィッディーに似ている・・。
その男性は、ドアを開けた。
「すみません。 ドアの立て付けが悪くて・・。 今日は、特に開き難いので立て付けを直そうと思っていた所だったのですが・・・・。 」
雄紀は、何気なく、その男性の言葉を遮った。
「ヴィッディーと連絡が付かないんですか? 」
その男性は、目を見開いた。
「え!? あなたは、ヴィッディーを知っているんですか? 」
「はい。 」
「里帰りするって、昨日電話で話したのが最後で・・連絡が付かなくて・・。 何か、嫌な予感がするんで・・お店どころじゃなくて・・。 」
ラディカは、店主に話しかけた。
「あなたも、ヴィッディーのお知り合いなんですか? 」
「はい・・。 もし遅れました。 この店の店主で、ヴィッディーの兄のヴィシュヌです。 」




